背景:携帯電話使用の急増が、この技術から生じる無線周波電磁界に関連した健康リスクの可能性についての懸念を生じている。手法:13カ国で共通のプロトコルを用いて、神経膠腫の症例2708人及び髄膜腫の症例2409人、ならびにマッチングした対照について、インタビューに基づく症例対照研究を実施した。結果:携帯電話の定常的に使用したことがある者に関しては、神経膠腫[OR 0.81;95%信頼区間(CI)0.70-0.94]及び髄膜腫[OR 0.79;95%CI 0.68-0.91]についてのオッズ比(OR)の低下が見られた。これは参加の偏りまたはその他の手法上の限界を反映したものであろう。最初の携帯電話使用から10 年以上後のOR 上昇は観察されなかった(神経膠腫:OR 0.98、95%CI 0.76-1.26;髄膜腫:OR 0.83、95%CI 0.61-1.14)。生涯の通話件数の10 段階区分全て、及び累積通話時間の10 段階区分のうち9 つについて、OR は1.0 未満であった。想起された累積通話時間の10 段階区分の10 番目(1640 時間以上)については、神経膠腫のOR が1.40(95%CI 1.03-1.89)、髄膜腫のOR が1.15(95%CI 0.81-1.62)であった;但し、このグループにおける使用の報告にはありそうもない(implausible)値があった。神経膠腫についてのOR は、脳の他の部位よりも側頭葉で高い傾向があったが、側頭葉の周囲に特定した(around the lobe-specific)CI の推定値は幅が広かった。腫瘍と同じ側の頭部で携帯電話を通常使用すると報告した被験者では、反対側で使用する被験者よりも、神経膠腫についてのOR が高い傾向があった。結論:全体として、携帯電話使用に関する神経膠腫または髄膜腫のリスク上昇は観察されなかった。最も高いばく露レベルで神経膠腫のリスク上昇が示唆されたが、偏り及び誤差が因果関係の解釈を妨げている。携帯電話の長期間の過度使用(heavy use)による影響の可能性については、更なる調査が必要である。
インターフォン研究は、携帯電話から発せられる無線周波エネルギーを最も多く吸収する組織における4種類の腫瘍(神経膠腫、髄膜腫、聴神経鞘腫、耳下腺腫瘍)に焦点を当て、13か国(オーストラリア、カナダ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、イスラエル、イタリア、日本、ニュージーランド、ノルウェー、スウェーデン、英国)で実施される症例対照研究の国際的なセットとして開始された。本論文では、脳腫瘍(神経膠腫及び髄膜腫)のリスクについての分析結果を示す。
潜在的なバイアスの発生源を検出するため、感度解析を実施した。
携帯電話の定常的使用は、少なくとも6か月間にわたって少なくとも週1回と定義した。
グループ | 説明 |
---|---|
参照集団 1 | 過去 ≥ 1年に携帯電話使用なし、または非定常的に使用 |
集団 2 | 過去 ≥ 1年に携帯電話を定常的に使用 |
参照集団 3 | 定常的使用経験なし |
集団 4 | 最初の使用からの期間: 1-1.9年 |
集団 5 | 最初の使用からの期間: 2-4年 |
集団 6 | 最初の使用からの期間: 5-9年 |
集団 7 | 最初の使用からの期間: ≥ 10年 |
参照集団 8 | 定常的使用経験なし |
集団 9 | 累積通話時間: < 5時間 |
集団 10 | 累積通話時間: 5-12.9時間 |
集団 11 | 累積通話時間: 13-30.9時間 |
集団 12 | 累積通話時間: 31-60.9時間 |
集団 13 | 累積通話時間: 61-114.9時間 |
集団 14 | 累積通話時間: 115-199.9時間 |
集団 15 | 累積通話時間: 200-359.9時間 |
集団 16 | 累積通話時間: 360-734.9時間 |
集団 17 | 累積通話時間: 735-1639.9時間 |
集団 18 | 累積通話時間: ≥ 1640時間 |
参照集団 19 | 定常的使用経験なし |
集団 20 | 累積通話件数: < 150 |
集団 21 | 累積通話件数: 150-349 |
集団 22 | 累積通話件数: 350-749 |
集団 23 | 累積通話件数: 750-1399 |
集団 24 | 累積通話件数: 1400-2549 |
集団 25 | 累積通話件数: 2550-4149 |
集団 26 | 累積通話件数: 4150-6799 |
集団 27 | 累積通話件数: 6800-12799 |
集団 28 | 累積通話件数: 12800-26999 |
集団 29 | 累積通話件数: ≥ 27000 |
参照集団 30 | 過去 ≥ 1年に同側での携帯電話使用なし |
集団 31 | 過去 ≥ 1年に同側での携帯電話使用あり |
参照集団 32 | 非定常的ユーザー |
集団 33 | 同側使用、最初の使用からの期間: 1-1.9年 |
集団 34 | 同側使用、最初の使用からの期間: 2-4年 |
集団 35 | 同側使用、最初の使用からの期間: 5-9年 |
集団 36 | 同側使用、最初の使用からの期間: ≥ 10年 |
参照集団 37 | 非定常的ユーザー |
集団 38 | 同側使用、累積通話時間: < 5時間 |
集団 39 | 同側使用、累積通話時間: 5-114.9時間 |
集団 40 | 同側使用、累積通話時間: 115-359.9時間 |
集団 41 | 同側使用、累積通話時間: 360-1639.9時間 |
集団 42 | 同側使用、累積通話時間: ≥ 1640時間 |
参照集団 43 | 非定常的ユーザー |
集団 44 | 同側使用、累積通話件数: ≥ 150 |
集団 45 | 同側使用、累積通話件数: 150-2549 |
集団 46 | 同側使用、累積通話件数: 2550-6799 |
集団 47 | 同側使用、累積通話件数: 6800-26999 |
集団 48 | 同側使用、累積通話件数: ≥ 27000 |
参照集団 49 | 非定常的ユーザー |
集団 50 | 反対側使用、最初の使用からの期間: 1-1.9年 |
集団 51 | 反対側使用、最初の使用からの期間: 2-4年 |
集団 52 | 反対使用、最初の使用からの期間: 5-9年 |
集団 53 | 反対側使用、最初の使用からの期間: ≥ 10年 |
参照集団 54 | 非定常的ユーザー |
集団 55 | 反対側使用、累積通話時間: < 5時間 |
集団 56 | 反対側使用、累積通話時間: 5-114.9時間 |
集団 57 | 反対側使用、累積通話時間: 115-359.9時間 |
集団 58 | 反対側使用、累積通話時間: 360-1639.9時間 |
集団 59 | 反対側使用、累積通話時間: ≥ 1640時間 |
参照集団 60 | 非定常的ユーザー |
集団 61 | 反対側使用、累積通話件数: ≥ 150 |
集団 62 | 反対側使用、累積通話件数: 150-2549 |
集団 63 | 反対側使用、累積通話件数: 2550-6799 |
集団 64 | 反対側使用、累積通話件数: 6800-26999 |
集団 65 | 反対側使用、累積通話件数: ≥ 27000 |
症例 | 対照 | |
---|---|---|
適格者 | 7,416 | 14,354 |
参加者 | 5,190 | 7,658 |
評価可能 | 5,117 | 5,634 |
神経膠腫(OR 0.81;CI 0.70-0.94)及び髄膜腫(OR 0.79;CI 0.68-0.91)について、定常的な携帯電話ユーザーに関連したリスク低下が認められた。これは恐らく参加バイアスまたはその他の手法上の制約を反映したものであろう。最も高いばく露群(累積通話時間 ≥ 1640時間)において、神経膠腫(OR 1.40;CI 1.03-1.89)及び髄膜腫(OR 1.15;CI 0.81-1.62)のリスク上昇が認められた;但し、この群にはありそうにない数値の報告があった(例:5時間/日を超える携帯電話使用)。神経膠腫についてのリスクは、脳の他の葉よりも側頭葉で高く、腫瘍の同側の頭部で携帯電話を通常使用した(同側使用)と報告した被験者で反対側使用よりも高い傾向があった。
著者らは、全体としては携帯電話使用に関連した神経膠腫及び髄膜腫のリスク上昇は認められなかった、と結論付けた。最も高いばく露レベルでの神経膠腫のリスク上昇及び髄膜腫のやや低いリスク上昇の示唆があった。
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