【目的】携帯電話による無線周波(RF)電磁界と脳腫瘍の関連を調べること。【方法】インターフォン研究の一部であるオーストラリア、カナダ、フランス、イスラエル、ニュージーランドの脳腫瘍症例で、神経放射線科医によりその腫瘍部位が決定されたものを分析した。対照群は、年齢、性別、地域でマッチングされ、それぞれのマッチされた症例が持つ「腫瘍部位」が割り当てられた。分析には、神経膠腫の症例群553名と髄膜腫の症例群676名、それぞれの対照群1762名と1911名が含まれた。RF量は、複数のRFばく露決定因子を考慮に入れて、腫瘍の中心(推定)で吸収された比エネルギーの総累積値(TCSE; J/kg)として見積もられた。【結果】規則的な携帯電話使用者のオッズ比(ORs)は、神経膠腫が0.93(95%信頼区間:0.73-1.18)、髄膜腫が0.80(同:0.66-0.96) であった。神経膠腫のORsは、TCSEの第1五分位で1を下回ったが、最高五分位では1を上回り、1.35(同:0.96-1.90)であった。診断前7年以上のTCSEの上昇に伴いORは上昇した(傾向性の検定のp値0.01;最高五分位でのORは1.91、95%信頼区間:1.05-3.47)。補足的な分析として、脳の最高ばく露領域に生じた神経膠腫44名、および髄膜腫135名を、その他の部位に生じた神経膠腫群および髄膜腫群と比較した結果、10年以上の携帯電話使用者における脳の最高ばく露領域の腫瘍のORs上昇(神経膠腫のORは2.80:95%信頼区間:1.13-6.94)が見られた。髄膜腫のパターンも同様であったがORsは低く、多くが1を下回った。【結論】高いRFばく露があった長期の携帯電話使用者において、神経膠腫のリスク上昇が示唆された。髄膜腫のリスクにも同様の上昇があったが、神経膠腫より非常に小さく見えた。これらの結果には不確かさがあるので、因果的な解釈を下す前に今回の結果の再現性を確認する必要がある。
この分析は、インターフォン研究の5か国(オーストラリア、カナダ、フランス、イスラエル、ニュージーランド)からのデータに基づく。症例対照分析に加えて、補足的な症例症例分析を実施した。これは、最もばく露される脳の部位での神経膠腫の症例44人と髄膜腫の症例135人を、脳のその他の部位の神経膠腫及び髄膜腫と比較したものである。
ばく露は、腫瘍の推定上の中心に吸収された比エネルギーの累積合計値(TCSE;J/kg)として推定した。複数のばく露の決定因子(例:周波数帯域、通信システム、携帯電話使用の量と期間)を考慮して量を推定するため、アルゴリズムを開発した(詳細は Cardis他、2011 参照)。
グループ | 説明 |
---|---|
参照集団 1 | 非定常的ユーザー |
集団 2 | 定常的ユーザー |
参照集団 3 | ハンズフリー装置なしでの累積通話時間:非定常的ユーザー |
集団 4 | ハンズフリー装置なしでの累積通話時間: < 13時間 |
集団 5 | ハンズフリー装置なしでの累積通話時間: 13.0 - 60.9時間 |
集団 6 | ハンズフリー装置なしでの累積通話時間: 61.0 - 199.9時間 |
集団 7 | ハンズフリー装置なしでの累積通話時間: 200 - 734.9時間 |
集団 8 | ハンズフリー装置なしでの累積通話時間: ≥ 735時間 |
参照集団 9 | 比エネルギーの累積合計値:非定常的ユーザー |
集団 10 | 比エネルギーの累積合計値: < 76.7 J/kg |
集団 11 | 比エネルギーの累積合計値: 76.7 - < 284.1 J/kg |
集団 12 | 比エネルギーの累積合計値: 284.1 - < 987.9 J/kg |
集団 13 | 比エネルギーの累積合計値: 987.9 - < 3123.9 J/kg |
集団 14 | 比エネルギーの累積合計値: ≥ 3123.9 J/kg |
参照集団 15 | 診断前の期間 < 3年、比エネルギーの累積合計値:非定常的ユーザー |
集団 16 | 診断前の期間 < 3年、比エネルギーの累積合計値: < 76.7 J/kg |
集団 17 | 診断前の期間 < 3年、比エネルギーの累積合計値: 76.7 - < 284.1 J/kg |
集団 18 | 診断前の期間 < 3年、比エネルギーの累積合計値: 284.1 - < 987.9 J/kg |
集団 19 | 診断前の期間 < 3年、比エネルギーの累積合計値: 987.9 - < 3123.9 J/kg |
集団 20 | 診断前の期間 < 3年、比エネルギーの累積合計値: ≥ 3123.9 J/kg |
参照集団 21 | 診断前の期間 3 - 6年、比エネルギーの累積合計値:非定常的ユーザー |
集団 22 | 診断前の期間 3 - 6年、比エネルギーの累積合計値: < 76.7 J/kg |
集団 23 | 診断前の期間 3 - 6年、比エネルギーの累積合計値: 76.7 - < 284.1 J/kg |
集団 24 | 診断前の期間 3 - 6年、比エネルギーの累積合計値: 284.1 - < 987.9 J/kg |
集団 25 | 診断前の期間 3 - 6年、比エネルギーの累積合計値: 987.9 - < 3123.9 J/kg |
集団 26 | 診断前の期間 3 - 6年、比エネルギーの累積合計値: ≥ 3123.9 J/kg |
参照集団 27 | 診断前の期間 ≥ 7年、比エネルギーの累積合計値:非定常的ユーザー |
集団 28 | 診断前の期間 ≥ 7年、比エネルギーの累積合計値: < 76.7 J/kg |
集団 29 | 診断前の期間 ≥ 7年、比エネルギーの累積合計値: 76.7 - < 284.1 J/kg |
集団 30 | 診断前の期間 ≥ 7年、比エネルギーの累積合計値: 284.1 - < 987.9 J/kg |
集団 31 | 診断前の期間 ≥ 7年、比エネルギーの累積合計値: 987.9 - < 3123.9 J/kg |
集団 32 | 診断前の期間 ≥ 7年、比エネルギーの累積合計値: ≥ 3123.9 J/kg |
参照集団 33 | 使用開始からの期間:非定常的ユーザー |
集団 34 | 使用開始からの期間: 1 - 4年 |
集団 35 | 使用開始からの期間: 5 - 9年 |
集団 36 | 使用開始からの期間: ≥ 10年 |
参照集団 37 | ハンズフリー装置なしでの累積通話時間:非定常的ユーザー |
集団 38 | ハンズフリー装置なしでの累積通話時間: < 39時間 |
集団 39 | ハンズフリー装置なしでの累積通話時間: 39 - 219時間 |
集団 40 | ハンズフリー装置なしでの累積通話時間: 220 - 519時間 |
集団 41 | ハンズフリー装置なしでの累積通話時間: 520 - 1146時間 |
集団 42 | ハンズフリー装置なしでの累積通話時間: ≥ 1147時間 |
症例 | 対照 | |
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適格者 | 2,511 | 4,383 |
参加者 | 1,724 | 2,565 |
評価可能 | 1,229 | 1,911 |
全体として、定常的な携帯電話ユーザーであったことと、神経膠腫(OR 0.92;CI 0.75-1.13)及び髄膜腫(OR 0.80;CI 0.66-0.96)のリスク低下との関連が認められた。最も高いばく露群では、神経膠腫のリスク上昇が認められた(OR 1.35;CI 0.96-1.90)。オッズ比は、比エネルギーの累積合計値の増加と、診断前の時期が7年以上で上昇した(最も高いばく露群でOR 1.91;CI 1.05-3.47)。補足的な症例症例分析は、携帯電話を10年以上使用していた人々で、最もばく露される脳の部分における腫瘍についてのリスク上昇を示した(神経膠腫についてOR 2.80;CI 1.13-6.94)。髄膜腫についての結果も同様であったが、リスク推定値はより低く、多くは1.0より低かった。
著者らは、無線周波ばく露が高い長期的な携帯電話ユーザーに神経膠腫のリスク上昇の示唆があり、髄膜腫については同様だが見かけ上は遥かに低いリスク上昇があった、と結論付けた。これらの結果の不確かさは、因果的な解釈を下す前に再現される必要がある。
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