【目的】1990年代初期にデジタル携帯電話が導入されて以降今まで、英国及び他の国々での携帯電話使用は急激に増大している。携帯電話のRF電磁界ばく露が脳腫瘍のリスクを上昇させるか否かの論争は継続中である。しかしながら、導入以来20年が経つことおよび広範な使用を考えれば、関連があるとすればこれまでにそれとわかる脳腫瘍の発生率上昇が起きているはずである。調査の目的はこの点を検証することである。【方法】イングランドで1998-2007の間に脳腫瘍と新規に診断された発生率の傾向を調べた。【結果】全ての脳腫瘍についての性別または年齢群別の発生率に時間的傾向は見られなかった。部位別には、側頭葉での発生率上昇が男性(新規症例数0.04/年)、女性(同0.02/年)ともに見られ、一方、頭頂葉(同-0.03/年)、大脳(同-0.02/年)、小脳(同-0.01/年)での発生率減少が男性においてのみ見られた。1985-2003の間の携帯電話の使用増加は、イングランドでの1998-2007の間の脳腫瘍発生率に注目すべき変化を起こしていなかった。【結論】観察された側頭葉での発生率増加が携帯電話使用により引き起こされたと仮定すると、それによって上乗せされた症例の数は、観察期間において10万人当たり1例未満であろう。以上のデータは、携帯電話からのRF電磁界ばく露を低減するために国民規模の介入の手段としてプレコーショナリ原則を施行する差し迫った必要性を示していない。
全体として、どちらの性別、またはどの年齢グループにも、脳のがんの発生率に時間的傾向はなかった。側頭葉のがんについては男性(新たな症例0.04人/年)及び女性(新たな症例0.02人/年)の発生率に系統的な上昇が認められたが、頭頂葉(新たな症例-0.03人/年)、大脳(新たな症例-0.02人/年)、小脳(新たな症例-0.01人/年)については男性にのみ発生率の低下が認められた。
著者らは、携帯電話の広範な使用の増加は、イングランドにおける1998-2007年の脳のがんの発生率の顕著な上昇につながっていない、と結論付けた。観察された側頭葉における発生率の上昇は、仮に携帯電話使用が原因だとすると、10年間で10万人あたり1人未満の新たな症例が生じることになる。著者らはこのデータを、人口規模の介入策によって携帯電話へのばく露を低減するためにプレコーショナリ原則を実施する差し迫った必要性を示していない、と解釈した。
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