この研究は、死亡した症例における携帯電話またはコードレス電話の使用と悪性脳腫瘍のリスクについて調査した。著者は、先の研究で死亡症例を除外するか、死亡症例を生存中の対照とマッチさせているので、死亡症例を死亡対照とマッチさせた研究を行う価値があると考えている。また、死亡症例やがんを持つ対照を用いる場合は、想起バイアスの影響は低下すると述べている。今回の研究は、著者の先の研究前に死亡した、1997年から2003年の間に脳腫瘍と診断された20歳から80歳の症例346人(親族に郵送した調査票への回答数;回答率74%)と、脳腫瘍以外のがんを死因とする対照343人(同74%)、その他の死因の対照276人(同60%)が回答した無線電話使用について分析した。その結果、携帯電話の10年以上使用者のオッズ比(OR)は 2.4(95%信頼区間:1.4-4.1)であった;携帯電話の生涯累積使用時間数とともにリスクは増大し、2,000時間以上のグループのOR は3.4(1.6-7.1)であった;コードレス電話については、使用との明確な関連は見られなかったが、累積使用時間が2,000時間以上のグループのOR は1.7(0.8-3.4)であった、と報告している。
本研究で分析した症例は、携帯電話使用についてのインタビューを受ける前に死亡していたため、Hardell他、2006 の論文では除外されていた。
症例及び対照のばく露は、近親者(配偶者、子ども、親、兄弟姉妹またはその他の親族)に宛てたアンケートによって評価した。
グループ | 説明 |
---|---|
参照集団 1 | 非ばく露 |
集団 2 | アナログ携帯電話使用 > 1から5年 |
集団 3 | アナログ携帯電話使用 > 5から10年 |
集団 4 | アナログ携帯電話使用 > 10年 |
集団 5 | アナログ携帯電話使用 > 1年(グループ2+3+4) |
集団 6 | ≤ 149時間のアナログ携帯電話使用 > 1から5年 |
集団 7 | ≤ 149時間のアナログ携帯電話使用 > 5から10年 |
集団 8 | ≤ 149時間のアナログ携帯電話使用 > 10年 |
集団 9 | ≤ 149時間のアナログ携帯電話使用 > 1年 |
集団 10 | > 149時間のアナログ携帯電話使用 > 1から5年 |
集団 11 | > 149時間のアナログ携帯電話使用 > 5から10年 |
集団 12 | > 149時間のアナログ携帯電話使用 > 10年 |
集団 13 | > 149時間のアナログ携帯電話使用 > 1年 |
集団 14 | デジタル携帯電話使用 > 1から5年 |
集団 15 | デジタル携帯電話使用 > 5から10年 |
集団 16 | デジタル携帯電話使用 > 10年 |
集団 17 | デジタル携帯電話使用 > 1年 |
集団 18 | ≤ 183時間のデジタル携帯電話使用 > 1から5年 |
集団 19 | ≤ 183時間のデジタル携帯電話使用 > 5から10年 |
集団 20 | ≤ 183時間のデジタル携帯電話使用 > 10年 |
集団 21 | ≤ 183時間のデジタル携帯電話使用 > 1年 |
集団 22 | > 183時間のデジタル携帯電話使用 > 1から5年 |
集団 23 | > 183時間のデジタル携帯電話使用 > 5から10年 |
集団 24 | > 183時間のデジタル携帯電話使用 > 10年 |
集団 25 | > 183時間のデジタル携帯電話使用 > 1年 |
集団 26 | 携帯電話(アナログ及びデジタル)使用 > 1から5年 |
集団 27 | 携帯電話使用 > 5から10年 |
集団 28 | 携帯電話使用 > 10年 |
集団 29 | 携帯電話使用 > 1年 |
集団 30 | ≤ 176時間の携帯電話使用 > 1から5年 |
集団 31 | ≤ 176時間の携帯電話使用 > 5から10年 |
集団 32 | ≤ 176時間の携帯電話使用 > 10年 |
集団 33 | ≤ 176時間の携帯電話使用 > 1年 |
集団 34 | > 176時間の携帯電話使用 > 1から5年 |
集団 35 | > 176時間の携帯電話使用 > 5から10年 |
集団 36 | > 176時間の携帯電話使用 > 10年 |
集団 37 | > 176時間の携帯電話使用 > 1年 |
集団 38 | コードレス電話使用 > 1から5年 |
集団 39 | コードレス電話使用 > 5から10年 |
集団 40 | コードレス電話使用 > 10年 |
集団 41 | コードレス電話使用 > 1年 |
集団 42 | ≤ 548時間のコードレス電話使用 > 1から5年 |
集団 43 | ≤ 548時間のコードレス電話使用 > 5から10年 |
集団 44 | ≤ 548時間のコードレス電話使用 > 10年 |
集団 45 | ≤ 548時間のコードレス電話使用 > 1年 |
集団 46 | > 548時間のコードレス電話使用 > 1から5年 |
集団 47 | > 548時間のコードレス電話使用 > 5から10年 |
集団 48 | > 548時間のコードレス電話使用 > 10年 |
集団 49 | > 548時間のコードレス電話使用 > 1年 |
集団 50 | 携帯電話+コードレス電話使用 > 1から5年 |
集団 51 | 携帯電話+コードレス電話使用 > 5から10年 |
集団 52 | 携帯電話+コードレス電話使用 > 10年 |
集団 53 | 携帯電話+コードレス電話使用 > 1年 |
集団 54 | ≤ 410時間の携帯電話+コードレス電話使用 > 1から5年 |
集団 55 | ≤ 410時間の携帯電話+コードレス電話使用 > 5から10年 |
集団 56 | ≤ 410時間の携帯電話+コードレス電話使用 > 10年 |
集団 57 | ≤ 410時間の携帯電話+コードレス電話使用 > 1年 |
集団 58 | > 410時間の携帯電話+コードレス電話使用 > 1から5年 |
集団 59 | > 410時間の携帯電話+コードレス電話使用 > 5から10年 |
集団 60 | > 410時間の携帯電話+コードレス電話使用 > 10年 |
集団 61 | > 410時間の携帯電話+コードレス電話使用 > 1年 |
集団 62 | アナログ携帯電話、生涯の累積使用:1 - 1000時間 |
集団 63 | アナログ携帯電話、生涯の累積使用:1001 - 2000時間 |
集団 64 | アナログ携帯電話、生涯の累積使用: > 2000時間 |
集団 65 | デジタル携帯電話、生涯の累積使用:1 - 1000時間 |
集団 66 | デジタル携帯電話、生涯の累積使用:1001 - 2000時間 |
集団 67 | デジタル携帯電話、生涯の累積使用: > 2000時間 |
集団 68 | 携帯電話、生涯の累積使用:1 - 1000時間 |
集団 69 | 携帯電話、生涯の累積使用:1001 - 2000時間 |
集団 70 | 携帯電話、生涯の累積使用: > 2000時間 |
集団 71 | コードレス電話、生涯の累積使用:1 - 1000時間 |
集団 72 | コードレス電話、生涯の累積使用:1001 - 2000時間 |
集団 73 | コードレス電話、生涯の累積使用: > 2000時間 |
集団 74 | 携帯電話+コードレス電話、生涯の累積使用:1 - 1000時間 |
集団 75 | 携帯電話+コードレス電話、生涯の累積使用:1001 - 2000時間 |
集団 76 | 携帯電話+コードレス電話、生涯の累積使用: > 2000時間 |
症例 | 対照 | |
---|---|---|
参加者 | 346 | 619 |
参加率 | 75 % | 67 % |
死亡した携帯電話ユーザーに、統計的に有意な悪性脳腫瘍のリスク上昇が認められた(グループ4のアナログ携帯電話のみ、グループ28のアナログ及びデジタル携帯電話、グループ16のデジタル携帯電話(症例2人のみ、対照なし、ORの計算不能)、携帯電話使用が176時間超、潜伏期間が10年超のグループ(グループ36)で最も高かった)。コードレス電話については統計的に有意なリスク上昇は認められなかった(グループ38-49)。
著者らは、本調査は携帯電話使用と悪性脳腫瘍との関連についての先行研究の結果を確認した、と結論付けた。
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