この研究は、CERENATと称する、2004-2006年間に、フランスの4地域で実施したマルチセンター症例対照研究である。面接での詳細な質問票調査で携帯電話使用に関するデータを収集した。分析対象は、神経膠腫253人、髄膜腫194人、各地域の選挙人名簿から各症例とマッチングをとって選出された対照892人である。条件付きロジスティック回帰分析を行い、調整済みORsおよび95%信頼区間(CIs)を推定した。その結果、規則的使用者群を非使用者群と比較した場合、脳腫瘍との関連は何も見られなかった(神経膠腫:OR=1.24; 95% CI 0.86-1.77、髄膜腫:OR=0.90; 95% CI 0.61-1.34 );一方、生涯にわたる累積通話時間の最高10分位群(≧896 時間)では、統計的に有意な関連が見られ(神経膠腫:OR=2.89; 95% CI 1.41-5.93、髄膜腫:OR=2.57; 95% CI 1.02-6.44)、累積通話回数の最高10分位群(通話回数 ≧18 360回)では、神経膠腫で有意な関連が見られた(OR=2.10, 95% CI 1.03-4.31)、と報告している。
CERENATは2004年に開始され、フランスの成人の原発性中枢神経系(CNS)腫瘍の発生における環境及び職業的要因の役割を調査するためにデザインされた、多拠点の人口ベースの症例対照研究である。
携帯電話の定常的使用は、6か月以上にわたって週1回以上使用と定義した。
グループ | 説明 |
---|---|
参照集団 1 | 定常的な携帯電話使用:なし |
集団 2 | 定常的な携帯電話使用:あり |
集団 3 | 最初の使用からの期間:定常的使用なし |
集団 4 | 最初の使用からの期間: 1-4年 |
集団 5 | 最初の使用からの期間: 5-10年 |
集団 6 | 最初の使用からの期間: ≥10年 |
参照集団 7 | 平均通話時間:定常的使用なし |
集団 8 | 平均通話時間: < 2時間/月 |
集団 9 | 平均通話時間: 2-4時間/月 |
集団 10 | 平均通話時間: 5-15時間/月 |
集団 11 | 平均通話時間: ≥ 15時間/月 |
参照集団 12 | 累積通話時間:定常的使用なし |
集団 13 | 累積通話時間: < 43時間 |
集団 14 | 累積通話時間: 43-112時間 |
集団 15 | 累積通話時間: 113-338時間 |
集団 16 | 累積通話時間: 339-895時間 |
集団 17 | 累積通話時間: ≥ 896時間 |
参照集団 18 | 累積通話件数:定常的使用なし |
集団 19 | 累積通話件数: < 660 |
集団 20 | 累積通話件数: 660-2219 |
集団 21 | 累積通話件数: 2200-7349 |
集団 22 | 累積通話件数: 7350-18359 |
集団 23 | 累積通話件数: ≥ 18360 |
症例 | 対照 | |
---|---|---|
参加者 | 596 | 1,192 |
参加率 | 73 % | 45 % |
評価可能 | 447 | 892 |
定常的な携帯電話ユーザーと非ユーザーとの比較では、脳腫瘍と携帯電話使用との関連は認められなかった(神経膠腫:OR 1.24、CI 0.86-1.77;髄膜腫:OR 0.90、CI 0.61-1.34)。但し、最もヘビーなユーザーでは、生涯の累積使用時間(神経膠腫:≥ 896時間でOR 2.89、CI 1.41-5.93;髄膜腫:OR 2.57、CI 1.02-6.44)、また神経膠腫については通話件数(≥ 18,360、OR 2.10、CI 1.03-4.31)を考慮した場合、最もヘビーなユーザーで正の関連が統計的に有意であった。携帯電話のヘビーユーザー(≥ 896時間)では、神経膠腫(OR 2.89、CI 1.41-5.93)、側頭部の腫瘍(OR 3.94、CI 0.81-19.08)、業務使用(OR 3.27、CI 1.45-7.35)及び都市部での使用(OR 8.20、CI 1.37-49.07)についてのリスク上昇が認められた。
著者らは、本研究の結果は携帯電話のヘビーユーズと脳腫瘍との正の関連に関する先行研究の知見を支持している、と結論付けている。
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