【背景】子供および若年者は成人に比べ、携帯電話ばく露による健康影響の可能性に対してより脆弱であるかも知れないという仮説が提出されている。この研究では、子供および若年者における携帯電話使用が脳腫瘍のリスクと関連するか否かを調査した。【方法】CEFALOは、ノルウェー、デンマーク、スウェーデン、スイスで実施されたマルチ研究センター方式の症例対照研究であり、2004年から2008年の間に脳腫瘍と診断された7-19 歳の子供および若年者を全て含めた。脳腫瘍症例群352人(参加率83%)と対照群646人(参加率71%)およびその両親に個人別にインタビューした。対照群の各対象者は住民登録から無作為抽出され、年齢、性別、地理的区域でマッチされた。携帯電話使用について質問し、利用できる場合は携帯電話事業者の記録を分析に含めた。脳腫瘍のリスクのオッズ比(ORs)とその95%信頼区間(CIs)を条件付きロジスティック回帰モデルを用いて計算した。【結果】携帯電話の規則的使用者が非使用者に比べ、統計学的有意性をもって脳腫瘍と診断されることが多いらしいことは示されなかった(OR = 1.36;95% CI = 0.92-2.02)。携帯電話を少なくとも5年前に使用開始した子供のリスクは、規則的に使用したことがない子供に比べて高くなかった(OR = 1.26;95% CI = 0.70-2.28)。携帯電話事業者のデータが利用できた調査参加者のサブセットにおいて、脳腫瘍のリスクは携帯電話加入開始時以降の経過時間に関連したが、使用量には関連しなかった。最も高いばく露量を受ける脳の部位において、脳腫瘍のリスク上昇は観察されなかった。【結論】携帯電話の使用量の観点からも、脳腫瘍の部位によっても、ばく露-反応関係は見られなかったことは、因果関係への反証である。主に想起に基づいた後ろ向き研究をさらに行うことが明確化に役立つとは思わない。また、少なくとも大多数の患者についてCT画像、形態学および側性など完全な診断データを収集することを含め、発症率の時間的傾向を監視するため、人口ベースのがん登録と綿密に連携することを推奨する。大半の国において子供および若年者の携帯電話使用はごく普通のことになっているので、たとえ小さなリスク上昇でもあれば、将来の発症率の時間的傾向に現れてくるであろう。
定常的使用は、携帯電話を少なくとも週1回、6か月以上にわたって使用と定義した。
グループ | 説明 |
---|---|
参照集団 1 | 定常的でない携帯電話ユーザー |
集団 2 | 定常的な携帯電話ユーザー |
参照集団 3 | 最初の使用からの期間:定常的でないユーザー |
集団 4 | 最初の使用からの期間: ≤ 3.3年 |
集団 5 | 最初の使用からの期間: 3.3 - 5.0年 |
集団 6 | 最初の使用からの期間: > 5.0年 |
参照集団 7 | 累積加入期間:定常的使用経験なし |
集団 8 | 累積加入期間: ≤ 2.7年 |
集団 9 | 累積加入期間: 2.8-4.0年 |
集団 10 | 累積加入期間: > 4.0年 |
参照集団 11 | 累積通話時間:定常的使用経験なし |
集団 12 | 累積通話時間: ≤ 35時間 |
集団 13 | 累積通話時間: 36-144時間 |
集団 14 | 累積通話時間: > 144時間 |
参照集団 15 | 累積通話件数:定常的使用経験なし |
集団 16 | 累積通話件数: ≤ 936 |
集団 17 | 累積通話件数: 937-2638 |
集団 18 | 累積通話件数: > 2638 |
参照集団 19 | 頭部の近くでのベイビーモニターの使用経験:なし |
集団 20 | 頭部の近くでのベイビーモニターの使用経験:あり |
参照集団 21 | コードレス電話の使用経験:なし |
集団 22 | コードレス電話の使用経験:あり |
参照集団 23 | コードレス電話での累積通話時間:使用経験なし |
集団 24 | コードレス電話での累積通話時間: ≤ 23時間 |
集団 25 | コードレス電話での累積通話時間: 24-70時間 |
集団 26 | コードレス電話での累積通話時間: > 70時間 |
集団 27 | コードレス電話での累積通話時間: データ欠落 |
参照集団 28 | コードレス電話での累積通話件数:使用経験なし |
集団 29 | コードレス電話での累積通話件数: ≤ 235 |
集団 30 | コードレス電話での累積通話件数: 236-704 |
集団 31 | コードレス電話での累積通話件数: > 704 |
集団 32 | コードレス電話での累積通話件数: データ欠落 |
症例 | 対照 | |
---|---|---|
適格者 | 423 | 909 |
参加者 | 352 | 646 |
参加率 | 83 % | 71 % |
症例194人(55%)及び対照329人(51%)が携帯電話を定常的に使用していた。
携帯電話の定常的ユーザーは非ユーザーと比較して、脳腫瘍と診断される可能性が統計的に有意に高くなかった(OR 1.36;CI 0.92-2.02)。携帯電話使用を5年以上前に開始した子どもには、定常的に使用したことがない子供と比較して、リスク上昇はなかった(OR 1.26;CI 0.70-2.28)。事業者の記録データが利用可能だった参加者の小さなサブセットでは、脳腫瘍のリスクは携帯電話加入開始からの経過期間と関連していたが、使用量とは関連していなかった。最も高いばく露量を受ける脳の部位についての脳腫瘍のリスク上昇は認められなかった。この結果は、脳腫瘍のリスクと頭部の近くでのベイビーモニターの使用ならびに子どものコードレス電話使用との関連を示さなかった。
著者らは、携帯電話の使用量または脳腫瘍の局在性の両方についてばく露‐反応関係がないことは、因果関係に対する反論である、と結論付けている。
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