研究のタイプ: 疫学研究 (observational study)

[脳神経膠腫の発生率および側性の変化は携帯電話使用と相関する:イスラエルでの全国人口ベースの調査] epidem.

Changes in brain glioma incidence and laterality correlates with use of mobile phones - a nationwide population based study in Israel

掲載誌: Asian Pac J Cancer Prev 2012; 13 (11): 5857-5863

この研究は、イスラエルにおいて、携帯電話技術を広く使用してきた人口集団における脳神経膠腫(低悪性度および高悪性度)の発生率および腫瘍発生頭側の変化の経年的傾向を30年にわたり調査し、これらが携帯電話使用の拡大と時間的に相関するか否かを分析した。この調査は、1980年から2009年までに診断されたすべての脳神経膠腫を含み、これらを低悪性度と高悪性度の2グループに細分類した。発生率および発生頭側の変化について、経年的および周期的な時間傾向分析を行った。携帯電話の使用頭側は、成人のサンプル集団で質問票を用いて評価した。その結果、低悪性度神経膠腫(LGG)の発生率(対10万人)を携帯電話技術の導入拡大との時間的な相関で見ると、1980年から1994年までの5年刻みでは2.57、2.34、2.79であったが、1995年から2009年までの5年刻みでは1.72、1.82、1.57に減少した;高悪性度神経膠腫(HGG)の発生率は、1980年から2009年にかけて有意に上昇したが、携帯電話導入後の期間(1994 - 2009年)においては、男性では増加率が低下し(ただし有意ではない)、女性では増加率が有意に低下した;1995年以降、LGGとHGGの統合した場合にも、個別に見た場合にも、成人神経膠腫の左側腫瘍位置へのシフトが認められた;このようなシフトは、20〜49歳で診断された人においてより顕著であった、と報告している、

研究の目的(著者による)

本研究は、イスラエルの人口における30年間の脳の神経膠腫発生率の長期的傾向腫瘍側性の変化に着目している。

詳細情報

携帯電話を好んで使う側の頭部を、1000人の成人が回答したアンケートによって評価した。

影響評価項目/リスク推定のタイプ

リスク推定のタイプ: (標準化発生率比(SIR))

ばく露

ばく露評価

調査対象集団

調査規模

タイプ
合計 5,263
その他:

イスラエルの市民750万人

結論(著者による)

1994年には、イスラエルの人口の2%が携帯電話を所有しており、3年で29%、2000年には67%になった。2003年に普及率は100%に達し、2009年末までに人口750万人が960万個の携帯電話を使用し、普及率は128%になった。
携帯電話ご術の導入と相関した低グレードの神経膠腫発生率の低下が認められ、人口10万人あたりの標準化発生率は1980-1994年には2.57、2.34及び2.79だったのが、最近の3つの5年毎(1995-2009年)にはそれぞれ1.72、1.82及び1.57であった。高グレードの神経膠腫発生率は1980-2009年に有意に上昇したが、携帯電話の導入後の期間(1994-2009年)には、男性で低い有意ではない発生率の上昇、女性で低い有意な上昇が認められた。成人神経膠腫全体、ならびに低グレード及び高グレードの神経膠腫について別々に、1995年から左側の腫瘍部位へのシフトが認められた。このシフトは20-49歳で診断された人々でより顕著であった。

著者らは、携帯電話技術の導入と相関した30年間に低グレードの神経膠腫発生率の統計的に有意な低下、ならびに低グレードと高グレードの神経膠腫の両方での腫瘍側性の左側へのシフトが認められた、と結論付けた。

研究助成

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