研究のタイプ: 疫学研究 (observational study)

[携帯電話使用と腫瘍のリスク:メタ分析] epidem.

Mobile phone use and risk of tumors: a meta-analysis

掲載誌: J Clin Oncol 2009; 27 (33): 5565-5572

【目的】症例対照研究は、携帯電話使用と腫瘍リスクとの関連について一致した知見を報告していない。これらの関連をメタ分析により調査する。【方法】MEDLINE (PubMed), EMBASE, the Cochrane Libraryを2008年8月に調査した。事前に定めたクライテリアに基づき、2名の評価者が別々に、論文をレビューし、選定した。【結果】クライテリアを満たした論文465のうち、症例対照研究23をメタ分析に含めた。全体で参加者は37916人(症例12344、対照25572)であった。ランダム効果に基づくメタ分析の結果、オッズ比の参照群を携帯電話使用経験なし、または稀に使用する人とした場合、使用者全体での悪性および良性腫瘍に関するオッズ比は0.98(95%信頼区間:0.89-1.07)であった。しかし、ブラインド調査を行った8研究を対象にランダム効果メタ分析を行った結果、ポジティブな関連(有害な影響)が見られ、ブラインド調査を行わなかった15研究を対象に固定効果メタ分析を行った結果、ネガティブな関連(防護的影響)が見られた。10年以上の携帯電話使用について報告している13研究では、腫瘍リスクとの関連が見られた(オッズ比1.18、95%信頼区間:1.04-1.34)。【結論】バイアスが低いと思われる症例対照研究を選んでメタ分析した結果、携帯電話使用と腫瘍リスク上昇が関連する可能性を示す証拠があった。高レベルの証拠の提出が期待される前向きコーホート研究が必要である。

研究の目的(著者による)

携帯電話の使用と悪性及び良性腫瘍リスクとの関連を、症例対照研究メタ分析で調査した。

詳細情報

以下の23報の研究を盛り込んだ:Hardell他、1999Muscat他、2000Inskip他、2001Stang他、2001Auvinen他、2002Hardell他、2002Warren他、2003Hardell他、2004Hardell他、2005Hardell他、2005Schoemaker他、2005Hardell他、2006Linet他、2006Lönn他、2006Schüz他、2006Takebayashi他、2006Hardell他、2007Hours他、2007Lahkola他、2007Lahkola他、2008Sadetzki他、2008、及び Takebayashi他、2008
メタ分析における症例対照研究の質について、Newcastle-Ottawaスケールに基づき、研究の手法上の質を評価した。

影響評価項目/リスク推定のタイプ

リスク推定のタイプ: (オッズ比(OR))

ばく露

ばく露評価

ばく露集団

グループ 説明
参照集団 1 携帯電話を全く、またはほとんど使用せず
集団 2 携帯電話使用
集団 3 10年以上の携帯電話使用

調査対象集団

調査規模

タイプ
合計 12,344
統計学的分析方法:

結論(著者による)

23報の研究の分析では、全体的な携帯電話使用と悪性及び良性脳腫瘍リスクとの関連は認められなかった(OR 0.98、CI 0.89-1.07)。但し、インタビューにおいて症例と対照の状態に盲検法を用いた8報の研究(主にHardellグループの研究)では有意な正の関連が認められ(OR 1.17、CI 1.02-1.36)、盲検法を用いなかった15報の研究(主にインターフォン研究)では有意な負の関連が認められた(OR 0.85、CI 0.80-0.91)。長期使用についてのデータがある13報の研究の分析では、10年以上の携帯電話使用と腫瘍リスクとの有意な関連が認められた(OR 1.18、CI 1.04-1.34)。
著者らは、携帯電話使用と腫瘍リスク上昇とを結び付ける可能性のある証拠がある、と結論付けた。この知見を確認するには、前向きコホート研究が必要である。

研究の限界(著者による)

症例対照研究の結果には、想起バイアス及び選択バイアスがあり得る。

研究助成

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