(2016年4月時点の英文ウェブページの和訳です)
認知は、知覚と認識に関連する脳の情報処理の全てのメカニズムを含みます。認知スキルには、例えば、注意、識別、学習能力、抽象化能力、創造、計画、方向感覚、実行制御などが含まれます。精神運動
機能は、運動機能および動的行動に影響を及ぼす心理的なプロセス(例えば、感情、集中、個人の性格特性)です。記憶機能は、入ってくる情報を蓄積、整理、検索する神経系の能力を説明します。記憶の
増強能力は、神経の可塑性の一つの指標であり、学習過程の基盤です。ヒトの脳は、全ての認知、精神運動および記憶の機能を担っています。脳活動への無線周波電磁界ばく露の影響(EEG/脳の活動の章をご参照下さい)と同様に、通話中の携帯電話の頭部との近接性のために無線周波電磁界ばく露が認知機能に影響するかどうかについて議論がなされています。その文脈に
おいて、脳活動および脳機能は密接に関係し合い、どちらの問題に関する研究もお互いを補完し合います。
記憶、認知、精神運動の機能に対する電磁界の影響を評価するために、研究はヒトおよび動物で実施されています。そのような研究では、注意および集中のテスト、認知的情報処理速度のテスト、学習およ
び記憶のテストが行われます。
国際レベルでは、世界保健機関(WHO)が最近の短い声明(ファクトシート№193, 2014)において、認知機能に関する研究に関して
無線周波電磁界による有害な健康影響の証拠が十分とは認めませんでした。国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP, 2009, p.257)もまた、研究要約において、認知>遂行能力に対して一貫性のある何らかの影響を認めていません。よって、多数のヒト被験者または動物を用いた研究は全体として影響を何も示していません。もし何かあるとしても、どのような影響であっ
てもその程度は小さく、またばく露は遂行能力を低下させるより、むしろ向上させるようです。
欧州レベルでは、欧州連合の新興・新規同定された健康リスクについての科学委員会(SCENIHR, 2015, p.127)が同様に、認知機能に対する確固たる影響がないこと
を認めています。SCENIHRにならえば、ある影響が見出された場合でも、それは多数のパラメータの内の少数について観察されるのみで、またそのような結果は研究間で一貫していません。
スイス連邦環境省(FOEN, 2014, p.37)は、認知遂行能力に対して無線周波電磁界の健康上重要な影響はないことを認めています。しかしながら、FOENは、これは短期的な影響についてのみ言えることであり、もしかしたら脳活動への微弱な影響(このような影響をFOENは十分に証拠があると見なしています(EEG/脳の活動を参照のこと))が既に病弱である人に健康上重要な影響を引き起こすかも知れないと示唆しています。
ドイツ放射線防護委員会(SSK, 2011, p.25以降)もやはり、認知機能への影響に関する一貫した影響は何もないことを認めています。しかしながらSSKは、さらなる
研究が必要であることに言及しています。今後の研究では、結果をバイアスさせる可能性がある要因、カフェインやアルコールを含む飲料の摂取、被験者の動機、テストのシークエンスや所要時間、それか
ら一日のうちの時間に特に注意を払うのが望ましいでしょう。例えば、Sauter et al. (2011)は、多重検定の補正後に、ばく露ではなく一日のうちの時間だけが認知
テストの結果に影響力を持っていたことを証明しました
総括すれば、認知機能への無線周波電磁界の影響に関する証拠は十分ではない、と国際および国内の専門家委員会は見なしているとの結論が導かれます。無線周波電磁界の影響に関するWHOからの新たな詳>細にわたる見解は2016年に公表予定です(ファクトシート№193, 2014)。
認知、精神運動および記憶の機能に関する詳細情報および全ての実験研究の概観は、EMFポータルの携帯電話研究の概観でご覧になれます。
このウェブサイトはクッキー(Cookies)を使って、最善のブラウジングエクスペリエンスを提供しています。あなたがこのウェブサイトを継続して使用することで、私たちがクッキーを使用することを許可することになります。