この研究は、脳腫瘍と携帯電話使用に関する日本における症例対照研究である。腫瘍内のSARの推定には、腫瘍の位置と頭蓋内無線周波電磁界分布との空間的関係を考慮した新しい手法を用いた。個人インタビューを実施した対象は、症例322(神経膠腫88、髄膜腫132、下垂体腺腫102)および対照683(症例と個人マッチングして選出)であった。その結果、全対象者においてSAR最大値は0.1W/kgであり、熱作用が起きるレベルよりはるかに低かった;携帯電話の規則的使用者での調整済みオッズ比は、神経膠腫1.22(95%信頼区間0.63-2.37)、髄膜腫0.70(0.42-1.16)であった;脳内のSAR最大値をばく露指標とした場合もオッズ比の上昇はなく、量反応関係も見られなかった;高ばく露群で神経膠腫のオッズ比の有意でない上昇が見られたのは想起バイアスが影響したかも知れない、と報告している。
携帯電話の定常的使用は、診断の1年前に6か月間にわたって少なくとも週1回使用と定義した。ばく露は、インターフォン研究のプロトコルに従い、アンケートを用いて評価した。更に、腫瘍の内部での比吸収率(SAR)の推定のため、腫瘍の部位と頭蓋内の無線周波の分布との空間的関連を考慮した頭部モデルに基づく新たなアプローチを用いた(Nagaoka他、2004)。SARから導出した3つのばく露尺度(平均最大SAR、累積最大SAR‐年、累積最大SAR‐時間)を計算し、四分位に分類した。
グループ | 説明 |
---|---|
参照集団 1 | 携帯電話使用:非ユーザー |
集団 2 | 携帯電話使用:定常的ユーザー |
参照集団 3 | 累積使用年数:非ユーザー |
集団 4 | 累積使用年数:最も短い |
集団 5 | 累積使用年数:中‐低 |
集団 6 | 累積使用年数:中‐高 |
集団 7 | 累積使用年数:最も長い |
参照集団 8 | 累積通話時間:非ユーザー |
集団 9 | 累積通話時間:最も短い |
集団 10 | 累積通話時間:中‐低 |
集団 11 | 累積通話時間:中‐高 |
集団 12 | 累積通話時間:最も長い |
参照集団 13 | 使用した携帯電話の種類:非ユーザー |
集団 14 | 使用した携帯電話の種類:アナログ及びデジタル |
集団 15 | 使用した携帯電話の種類:デジタル |
参照集団 16 | 腫瘍の側性と携帯電話使用の側性:なし、または反対側使用 |
集団 17 | 腫瘍の側性と携帯電話使用の側性:同側 |
参照集団 18 | 腫瘍の側性と携帯電話使用の側性:なし、または同側使用 |
集団 19 | 腫瘍の側性と携帯電話使用の側性:反対側 |
参照集団 20 | 平均最大SAR:非ばく露 |
集団 21 | 平均最大SAR:最も低い |
集団 22 | 平均最大SAR:中‐低 |
集団 23 | 平均最大SAR:中‐高 |
集団 24 | 平均最大SAR:最も高い |
参照集団 25 | 平均最大SAR:非ばく露 |
集団 26 | 平均最大SAR:< 0.001 W/kg |
集団 27 | 平均最大SAR:0.001 - 0.01 W/kg |
集団 28 | 平均最大SAR:≥ 0.01 W/kg |
参照集団 29 | 累積最大SAR‐年:非ばく露 |
集団 30 | 累積最大SAR‐年:最も低い |
集団 31 | 累積最大SAR‐年:中‐低 |
集団 32 | 累積最大SAR‐年:中‐高 |
集団 33 | 累積最大SAR‐年:最も高い |
参照集団 34 | 累積最大SAR‐年:非ばく露 |
集団 35 | 累積最大SAR‐年:< 0.001 W/kg |
集団 36 | 累積最大SAR‐年:0.001 - 0.01 W/kg |
集団 37 | 累積最大SAR‐年:0.01 - 0.1 W/kg |
集団 38 | 累積最大SAR‐年:≥ 0.1 W/kg |
参照集団 39 | 累積最大SAR‐時間:非ばく露 |
集団 40 | 累積最大SAR‐時間:最も低い |
集団 41 | 累積最大SAR‐時間:中‐低 |
集団 42 | 累積最大SAR‐時間:中‐高 |
集団 43 | 累積最大SAR‐時間:最も高い |
参照集団 44 | 累積最大SAR‐時間:非ばく露 |
集団 45 | 累積最大SAR‐時間:< 0.1 W/kg |
集団 46 | 累積最大SAR‐時間:0.1 - 1 W/kg |
集団 47 | 累積最大SAR‐時間:1 - 10 W/kg |
集団 48 | 累積最大SAR‐時間:≥ 10 W/kg |
症例 | 対照 | |
---|---|---|
適格者 | 455 | 1,122 |
参加者 | 322 | 683 |
携帯電話ユーザーにおける神経膠腫、髄膜腫及び下垂体線腫の全体的なリスクの一貫した上昇は認められなかった。累積使用期間、または累積通話時間に関連したリスクの上昇傾向は認められなかった。SARから導出したばく露尺度についての結果も、神経膠腫または髄膜腫についてのリスク上昇を示さなかった。
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