携帯電話からの電磁界のエネルギー吸収量は、発生源からの距離に強く依存する。この研究の目的は、神経膠腫が、無線周波(RF)ばく露を最も強く受けた脳の領域に優勢的に発生するか否かを評価することである。症例-症例分析と症例-鏡像分析の2つのアプローチを用いた。症例-症例分析では、ばく露レベルを変えて腫瘍の位置を比較した。症例-鏡像分析では、仮定的な参照位置を神経膠腫毎に割り当て、真の位置と鏡像の位置から送受話器までの距離を比較した。欧州7ヶ国(2000-2004)から集められた神経膠腫で、放射線画像に基づき3次元グリッド内に腫瘍中央点が決定された888症例を分析に含めた。症例-症例分析には条件なしロジスティック回帰法、症例-鏡像分析には条件付きロジスティック回帰法を用いた。症例-症例分析では、規則的使用経験なし群および反対側使用群において、腫瘍はばく露源に最も近い位置に存在したが、統計学的に有意ではなかった。症例-鏡像分析では、ばく露源からの平均距離は症例群と鏡像群で同様であった。今回の結果は、携帯電話使用者における神経膠腫が、携帯電話からの無線周波電磁界が最も高くなる脳の部位に優勢的に位置することを示唆していない。
分析はインターフォン研究における欧州の7つの研究センター(デンマーク、フィンランド、ドイツ、イタリア、ノルウェー、スウェーデン、イングランド南東部)からのデータに基づいて実施した。
2種類の分析を用いて、携帯電話使用に関連した神経膠腫の脳内の解剖学的分布を評価した。この分析における主なばく露指標は、神経膠腫の中点から携帯電話端末の推定位置までの推定最短距離とした。症例症例分析は、この距離に ≤ 5cm と > 5cmを用いて、ばく露症例と非ばく露症例との比較に基づいて実施した。症例鏡像分析では、症例の実際の部位と、仮想的な(鏡像の)部位(同じ脳半球の反対側にある鏡像として各症例に割り当てたもの)を対比した。
携帯電話の定常的使用は、少なくとも6か月間に少なくとも週1回と定義した。
グループ | 説明 |
---|---|
参照集団 1 | 定常的使用の経験なし |
集団 2 | 定常的使用 |
集団 3 | 累積使用時間: 0.001 - 46時間 |
集団 4 | 累積使用時間: 47 - 399時間 |
集団 5 | 累積使用時間: > 399時間 |
集団 6 | 使用期間: 1.5 - 4年 |
集団 7 | 使用期間: 5 - 9年 |
集団 8 | 使用期間: ≥ 10年 |
集団 9 | 側性:同側 |
集団 10 | 側性:反対側 |
集団 11 | 鏡像:同側 |
集団 12 | 鏡像:反対側 |
タイプ | 値 |
---|---|
適格者 | 912 |
症例症例分析では、神経膠腫は携帯電話の非定常的ユーザー及び反対側ユーザーにおいてばく露の発生源の最も近くにあったが、統計的に有意ではなかった。症例鏡像分析では、ばく露源と神経膠腫の部位との平均間隔は症例と鏡像で同程度であった。
著者らは、これらの結果は、携帯電話からの無線周波の界が最も高い脳の部分に、携帯電話ユーザーの神経膠腫が優先的にあるということを示唆していない、と結論付けている。
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