研究のタイプ: 疫学研究 (observational study)

[携帯電話とがん--デンマークにおける全国コホート研究] epidem.

Cellular telephones and cancer--a nationwide cohort study in Denmark

掲載誌: J Natl Cancer Inst 2001; 93 (3): 203-207

この研究は、デンマークにおいて、1982年から1995年までの全ての携帯電話使用者を対象に実施されたがん発症率の後ろ向きコホート調査である。デンマークの2つのオペレータ会社の加入者リストから420,095人の携帯電話使用者が同定された。がん発生率は、デンマークがん登録簿とのリンケージによって決定された。統計処理にはすべて両側検定を用いた。その結果、全体で3391のがんが観察され、期待値は3825であったので、標準化罹患比(SIR)は0.89(95%信頼区間[CI] = 0.86 - 0.92)となり、有意な低下を示した;このリスク低下の大部分は、は、肺がんやその他の喫煙関連がんの低下によった;脳または神経系SIR = 0.95、95%CI = 0.81〜1.12)、唾液腺SIR = 0.72、95%CI = 0.29〜1.49)、白血病SIR = 0.97、95%CI = 0.78〜1.12)など関心が持たれているがんでも、リスク過剰は観察されなかった;これらのがんリスクは、携帯電話の使用期間、最初の契約からの経過時間、最初の契約時の年齢、携帯電話の種類(アナログまたはデジタル)によっても変わらなかった;脳腫瘍および神経系腫瘍については、いずれのサブタイプまたは解剖学的位置についても統計的に有意なSIRは示されなかった、と報告している。

研究の目的(著者による)

デンマークにおいて、1982年から1995年までの全ての携帯電話加入者についての全国規模の後ろ向きコホート研究を実施した。

詳細情報

デンマークの二つの事業者の加入者リストから携帯電話ユーザーを同定した。ユーザーのがん発症率はデンマークがん登録とのリンケージにより決定した。

影響評価項目/リスク推定のタイプ

リスク推定のタイプ: (標準化発生率比(SIR))

ばく露

ばく露評価

ばく露集団

グループ 説明
集団 1 全加入者数
集団 2 携帯電話サービスへの最初の加入からの期間:< 1年
集団 3 携帯電話サービスへの最初の加入からの期間:1-4年
集団 4 携帯電話サービスへの最初の加入からの期間:≥ 5年
集団 5 エントリー時の年齢:0-49歳
集団 6 エントリー時の年齢:50-65歳
集団 7 エントリー時の年齢:≥ 65歳
集団 8 使用した携帯電話システム:アナログ
集団 9 使用した携帯電話システム:アナログ及びデジタル
集団 10 使用した携帯電話システム:デジタル
集団 11 デジタルの加入期間:< 1年
集団 12 デジタルの加入期間:1-2年
集団 13 デジタルの加入期間:≥ 3年

調査対象集団

調査規模

タイプ
合計 723,421
適格者 420,095
その他:

フォローアップ1,128,493人‐年

統計学的分析方法:

結論(著者による)

結果は、がん全体、脳腫瘍白血病、または a priori の関心部位である唾液腺腫瘍についてのリスク上昇を示さなかった。潜伏期間、最初の加入時の年齢、アナログまたはデジタル携帯電話の使用、及び加入期間に伴う、がん発症率と携帯電話加入との関連は認められなかった。

研究の限界(著者による)

携帯電話の加入期間が5年超のコホートメンバーは僅か5.1%であったので、長期的なユーザーについての結論は導けない。

研究助成

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