この研究は、著者を含む米国国立がん研究所/小児がんグループによる小児急性リンパ芽球性白血病(1989-993年)の症例対照研究の報告(Linet MS, Hatch EE, Kleinennan RA, et al. Residential exposure to magnetic fields and acute lymphoblastic leukemia in children. N Engl J Med 1997;337:l-7.)についての追加分析である。先の報告は、ワイヤーコードが“高電圧”である住宅での居住と疾患リスクとの関連を示さなかった。そこで、この研究では、送電線付近のリスクをさらに調査するために、住宅から40 m以内に存在する送電線および三相一次配電線までの距離を分析し、距離および複数送電線の強度からなるばく露指標を作成した(症例対照ペアは408組)。その結果、 距離指標および今回作成したばく露指標のどちらもが家庭内磁界測定値とは関連したものの、どちらの指標も、小児急性リンパ芽球性白血病のリスクとは関連しなかった、と報告している。
米国における高圧電力線と小児白血病のリスクとの関連を調査した症例対照研究(publication 1894)を再分析した。本研究では、小児白血病のリスクの更なる予測を同定できる方法があるかどうかを見つけるため、ワイヤ・コードの複数の要素を個別に調査した。
先行研究の子どもが参照期間(診断前の5年間)の少なくとも70%について一つの住居に住んでいて、その住居で磁界測定が実施されていた場合、彼らを本研究に含めた。磁界ばく露は、住居から高圧電力線までの距離の測定、及び、住居から40m以内の全ての送電線及び三相配電線についての距離と相対負荷に基づくばく露尺度の計算によって評価した。
グループ | 説明 |
---|---|
参照集団 1 | 最も近い電力線までの距離:> 40 m、磁界の中央値:0.091 µT |
集団 2 | 最も近い電力線までの距離:24 - 40 m、磁界の中央値:0.089 µT |
集団 3 | 最も近い電力線までの距離:15 - 23 m、磁界の中央値:0.152 µT |
集団 4 | 最も近い電力線までの距離:0 - 14 m、磁界の中央値:0.207 µT |
参照集団 5 | 最も近い送電線までの距離:> 40 m、磁界の中央値:0.103 µT |
集団 6 | 最も近い送電線までの距離:24 - 40 m、磁界の中央値:0.067 µT |
集団 7 | 最も近い送電線までの距離:15 - 23 m、磁界の中央値:0.130 µT |
集団 8 | 最も近い送電線までの距離:0 - 14 m、磁界の中央値:0.279 µT |
参照集団 9 | 最も近い配電線までの距離:> 40 m、磁界の中央値:0.092 µT |
集団 10 | 最も近い配電線までの距離:24 - 40 m、磁界の中央値:0.089 µT |
集団 11 | 最も近い配電線までの距離:15 - 23 m、磁界の中央値:0.160 µT |
集団 12 | 最も近い配電線までの距離:0 - 14 m、磁界の中央値:0.208 µT |
症例 | 対照 | |
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適格者 | 851 | 825 |
評価可能 | 408 | 408 |
816人の子どものうち601人が、送電線または三相一次配電線から40m以上に住んでいた。
住居の40m以内の最も近い高圧電力線からの距離、または、全ての電力線の寄与を考慮したばく露尺度のどちらも、小児の急性リンパ芽球性白血病との関連は認められなかった。住居の平均磁界レベルは電力線までの距離の低下に伴い上昇した。
著者らは、高圧電力線の近くに住む子供は急性リンパ芽球性白血病のリスクが高いという証拠は認められなかったと結論付けている。
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