研究のタイプ: 疫学研究 (observational study)

[小児がんと60Hz磁界へのばく露についての症例対照研究] epidem.

Case-control study of childhood cancer and exposure to 60-Hz magnetic fields

掲載誌: Am J Epidemiol 1988; 128 (1): 21-38

この研究は、居住環境磁界ばく露小児がんの発生との関連を評価する目的で実施された症例対照研究である。適格な症例は、1976-1983年間に、あらゆる形態のがん診断された、コロラド州デンバーの5つの標準統計地域に住む0 - 14歳の全居住者356人である。対照は、症例における年齢、性別、電話交換地域の分布と類似するように、無作為電話法によって抽出された。ばく露は、電力の高使用時、低使用時の2つの条件下での家庭内の電界および磁界の測定値、ならびに長期磁界レベルの代用尺度であるワイヤコード(電線規格分類)によって特徴付けられた。その結果、電力の低使用時の磁界測定値が、がん発生率と中程度の関連を示した;カットオフスコアを2.0ミリガウスとした場合、全がんオッズ比は1.4(95%信頼区間(CI)= 0.6〜2.9)、その他のオッズ比は、白血病OR = 1.9)、リンパ腫OR = 2.2) 、および軟組織肉腫OR = 3.3)である。電力の高使用条件下での磁界OR = 1.0)も電界OR = 0.9)も、全がんに関連しなかった。より強い磁界を伴うワイヤコードが、対照の住宅に比べて症例の住宅でよく見られた。この研究の限界は、非参加(特に電磁界測定に関して)、症例と対照の差別的転居率、非差別的なばく露の誤分類(長期磁界ばく露歴に関する不完全な代用尺度の使用から推測される)であると考察している。

研究の目的(著者による)

磁界への居住環境ばく露小児がんの発症との関連を調査するため、米国において症例対照研究を実施した。

詳細情報

電界及び磁界ばく露は、診断前に子どもが住んでいた住居での測定、及びワイヤ・コードによって評価した。

影響評価項目/リスク推定のタイプ

リスク推定のタイプ: (オッズ比(OR))

ばく露

ばく露評価

ばく露集団

グループ 説明
参照集団 1 磁界、低電力使用条件:0 - < 0.65 mG
集団 2 磁界、低電力使用条件:0.65 - < 1.0 mG
集団 3 磁界、低電力使用条件:1.0 - < 2.5 mG
集団 4 磁界、低電力使用条件:≥ 2.5 mG
参照集団 5 磁界、高電力使用条件:0 - < 0.65 mG
集団 6 磁界、高電力使用条件:0.65 - < 1.0 mG
集団 7 磁界、高電力使用条件:1.0 - < 2.5 mG
集団 8 磁界、高電力使用条件:≥ 2.5 mG
参照集団 9 電界、高電力使用条件:0 - < 6.0 V/m
集団 10 電界、高電力使用条件:6.0 - < 9.0 V/m
集団 11 電界、高電力使用条件:9.0 - < 14.0 V/m
集団 12 電界、高電力使用条件:≥ 14.0 V/m
集団 13 磁界、低電力使用条件:< 2.0 mG
集団 14 磁界、低電力使用条件:≥ 2.0 mG
集団 15 磁界、高電力使用条件:< 2.0 mG
集団 16 磁界、高電力使用条件:≥ 2.0 mG
集団 17 電界、高電力使用条件:< 12.0 V/m
集団 18 電界、高電力使用条件:≥ 12.0 V/m
参照集団 19 診断時のワイヤ・コード:埋設
集団 20 診断時のワイヤ・コード:非常に低い
集団 21 診断時のワイヤ・コード:低い
集団 22 診断時のワイヤ・コード:高い
集団 23 診断時のワイヤ・コード:非常に高い
参照集団 24 診断の2年前のワイヤ・コード:埋設
集団 25 診断の2年前のワイヤ・コード:非常に低い
集団 26 診断の2年前のワイヤ・コード:低い
集団 27 診断の2年前のワイヤ・コード:高い
集団 28 診断の2年前のワイヤ・コード:非常に高い
参照集団 29 ワイヤ・コード:埋設、非常に低い、低い
集団 30 ワイヤ・コード:高い、非常に高い

調査対象集団

症例集団

対照集団

調査規模

症例 対照
適格者 356 278
参加者 252 222
参加率 71 % 80 %
統計学的分析方法:

結論(著者による)

症例128人及び対照207人の住居で電界及び磁界の測定を実施し、症例319人及び対照259人についてワイヤコードを取得した。
小児がんと低電力条件下での磁界測定値との中程度の関連が認められたが、高電力条件下での磁界測定値との関連は認められなかった。電界小児がんと関連していなかった。「高い」及び「非常に高い」ワイヤ・コードについて、全てのタイプのがんリスク上昇が認められた。

研究助成

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