研究のタイプ: 医学/生物学の研究 (experimental study)

[Wistarラットの肝臓、心臓、腎臓及び血漿における抗酸化系に対する急性電磁界ばく露及び移動拘束の影響:予備的報告] med./bio.

Effects of acute electromagnetic field exposure and movement restraint on antioxidant system in liver, heart, kidney and plasma of Wistar rats: A preliminary report

掲載誌: Int J Radiat Biol 2010; 86 (12): 1088-1094

この研究は、超低周波電磁界(ELF-EMF)への急性(2時間)ばく露、あるいは運動抑制、および両方の組み合わせが、ラットの抗酸化システム(血漿肝臓腎臓心臓)に与える早期影響を評価した。24匹の成獣の雄ウィスターラット拘束と非拘束の2群に分けた。拘束群は、120分間アクリルチューブに閉じ込められた。両群のラットの半数は、この120分間、ELF-EMF(60 Hz、2.4 mT)ばく露を与えられた。非拘束・無ばく露群を対照群とした。これらの処置終了直後に、各組織における還元グルタチオンGSH)、カタラーゼ(CAT)、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、およびチオバルビツール酸反応性物質(TBARS)を測定した。その結果、GSH濃度は、心臓では、対照群に比べ、他の群で有意に低く、拘束群の肝臓ではさらに大きく低下した;SOD活性は、非拘束群に比べ、拘束・ELF-EMFばく露群の血漿で低かった;CAT活性およびTBARSレベルに有意な変化はなかった;総括すると、2時間の60 Hz EMFばく露は、血漿中のSOD活性と心臓腎臓のGSH含有量を減少させるかもしれないが、脂質過酸化誘発しなかったこと、運動抑制による酸化ストレスは、EMFによるものよりも強いことが示された、と報告している。

研究目的(著者による)

ラット血漿肝臓腎臓及び心臓における抗酸化系に対する、超低周波電磁界への急性(2時間)のばく露移動拘束心理学的及び身体的ストレスを生じさせるため)ならびに両者の組合せの早期影響を評価すること。

詳細情報

細胞を少量のストレスに先にばく露すると、同じストレスまたは異なるストレス(例:熱、化学物質、短時間の虚血または電磁界ばく露)から防御することができる。著者らは、超低周波電磁界への短時間のばく露が抗酸化系、特に肝臓腎臓及び心臓のような酸化代謝が高い組織に、適応変化を生じ得るという仮説を検証した。この事前の条件付け酸化ストレスに対する防御作用につながり得る。

ラット24匹を拘束及び非拘束の2群に分けた。拘束群は、アクリル製のチューブに120分間閉じ込め、各群の半数(n=6)を拘束中に超低周波電磁界ばく露した。

影響評価項目

ばく露

ばく露 パラメータ
ばく露1: 60 Hz
ばく露時間: continuous for 2 hr

General information

animals were divided into four groups: i) in movement restrained ii) in movement restrained + exposure to EMF iii) in movement unrestrained + exposure to EMF iv) control - no restrainment + no exposure

ばく露1

主たる特性
周波数 60 Hz
タイプ
  • magnetic field
波形
  • sinusoidal
ばく露時間 continuous for 2 hr
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
ばく露装置の詳細 rats were restrained by confinement into a 18 cm long acrylic cylinder with an inner diameter of 7 cm; unrestained rats were placed in 47 cm x 25 cm x 21 cm acrylic cages; pair of circular Helmholtz coils with an inner diameter of 30 cm, consisting of 350 turns of 18-gauge copper wire, separated by 15 cm; coils lying on the upper and lower cage surfaces
Sham exposure A sham exposure was conducted.
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
磁束密度 2.4 mT - 測定値 - -

Reference articles

ばく露を受けた生物:

方法 影響評価項目/測定パラメータ/方法

研究対象とした生物試料:
研究対象とした臓器系:
調査の時期:
  • ばく露後

研究の主なアウトカム(著者による)

全ての実験群で、対照群(非ばく露・非拘束)と比較して、心臓グルタチオン濃度が有意に低かった:更に、この低下は両方の拘束群の肝臓で最大であった。全ての拘束群及び磁界ばく露群で、非拘束・非ばく露対照群と比較して、血漿スーパーオキシドジスムターゼ酵素活性が低かった。全ての実験群で、対照群と比較して、カタラーゼ酵素活性及びチオバルビツール酸反応性物質のレベルには有意差はなかった。

著者らは、2時間の60Hzばく露フリーラジカル代謝を即座に変化させるかも知れず、血漿中のスーパーオキシドジスムターゼ活性ならびに心臓及び腎臓でのグルタチオン量を低下させるが、脂質の過酸化はすぐには生じない、と結論付けている。移動拘束による酸化ストレスは、電磁界ばく露によって生じるものよりも強かった。

研究の種別:

研究助成

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