この研究は、オランダの前向きコホートで、予め調査対象として選択したがん(肺がん、乳がん、脳腫瘍、血液リンパ系の増殖性悪性腫瘍)と超低周波磁界(ELF-MF)への職業ばく露の関連を調べた。120852人(1986年のベースライン時に55-69歳の男女)のコホートを設定し、17.3年間、選択したがんの発症をフォローアップした。ベースライン時に、自記式質問票により、職業履歴と交絡因子(性別、年齢、喫煙、飲酒、教育レベル等)に関する情報を収集した。職業的なELF-MFばく露は、職種-ばく露マトリクスを利用して割り当てた。なお、ベースライン以降の17.3年間の就労については調査していない(コホート中、男性の66%、女性の82%はベースライン時に退職、男性の32%、女性の10%は就労中であった)。症例コホート的アプローチにより、ばく露とがん発症率との関連を表すハザード比(HR)を、性別層化したコックス回帰法で計算した。検討した3つのばく露指標は、(1)ELF-MFの高ばく露職種または低ばく露職種への就労経験あり、(2)ばく露期間、(3)累積的ばく露であり、いずれも「ばく露職種への就労経験なし」を参照群とした。その結果、男女とも、肺がん、乳がん、脳腫瘍とそれらの全てのサブタイプの発症率に、どのばく露指標も関連しなかった;男性の血液リンパ系の増殖性悪性腫瘍では、高ばく露職種就労経験者群で、急性骨髄性白血病(AML:HR=2.15: 95%信頼区間1.06-4.35)と濾胞性リンパ腫(FL:HR=2.78: 95%信頼区間1.00-5.77)が有意に関連した;累積的ばく露は、男性のFL発症率と有意に関連したが、AMLでは関連が見られなかった、と報告している。
症例‐コホート研究のアプローチに従い、無作為抽出したサブコホート(n=5000)を抜き出した。
以下の3つの尺度に従い、超低周波磁界への職業ばく露を分析した:1) 最大でバックグラウンドの、低いまたは高いELF磁界への職業ばく露のある職業に従事したことがある、2) バックグラウンド以上のELF磁界へのばく露の年数、3) 累積ばく露。
グループ | 説明 |
---|---|
参照集団 1 | これまでのばく露:バックグラウンド |
集団 2 | これまでのばく露:低 |
集団 3 | これまでのばく露:高 |
集団 4 | ばく露期間の年数 |
参照集団 5 | 累積ばく露:バックグラウンド |
集団 6 | 累積ばく露:第1三分位 |
集団 7 | 累積ばく露:第2三分位 |
集団 8 | 累積ばく露:第3三分位 |
タイプ | 値 |
---|---|
合計 | 120,852 |
症例とサブコホートの両方について、男性の約8%、女性の1%が、高いELF磁界に職業ばく露される職業に従事したことがあった。
男性及び女性における乳がん、脳のがん及び肺がん、あるいは調査したどのサブタイプについても、リスク上昇は認められなかった。男性の血液‐リンパ増殖性悪性腫瘍のうち、高いELF磁界へのこれまでのばく露は、急性骨像性白血病(HR 2.15、CI 1.06-4.35)及び濾胞性リンパ腫(HR 2.78、CI 1.00-5.77)と有意に関連していた。ELF磁界への累積ばく露(グループ8)は、男性における濾胞性リンパ腫との有意な正の関連を示したが、急性骨髄性白血病との関連は示さなかった。
著者らは、ELF磁界への職業ばく露に伴う男性の急性骨髄性白血病及び濾胞性リンパ腫についてのリスク上昇の若干の兆候を見出した、と結論付けた。
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