研究のタイプ: 疫学研究 (observational study)

[AMラジオ放送タワー近傍の居住地とがん死亡についての生態学的研究:韓国における予備的観察] epidem.

Ecological study on residences in the vicinity of AM radio broadcasting towers and cancer death: preliminary observations in Korea

掲載誌: Int Arch Occup Environ Health 2004; 77 (6): 387-394

【目的】韓国における、AMラジオ放送タワーからのRFばく露が公衆の健康に与える影響を評価すること。【方法】100kWのタワー周辺4地点、250kW周辺2地点、500kW周辺3地点、1500kW周辺1地点の計10地域(Si、Ku、Kun単位)をばく露地域とした。対照地域としてそれぞれのばく露地域ごとにマッチした4地域を選択し、計40地域とした。対照地域はばく露地域と同様の人口で、同じ県あるいは近隣県に属し、放送タワーがないか2km以上離れている地域である。世界人口を基準に年齢別人口の調整を行った各地域の死亡率を、ばく露地域と対照地域で比較した、直接標準化死亡率比MRRを計算した。【結果】全がんMRRは1.29(95%CI:1.12-1.49)で、ばく露地域で有意に高かった。全対象者でのMRRが有意に高いばく露地域が100kWで2地点、250kWで1地点、500kWで1地点、男性でのMRRが有意に高いばく露地域が100kWで1地点、250kWで1地点、500kWで1地点(訳者注:抄録の記載に誤りがあったため、本文を参照した)あったが、電力強度による増加の傾向はなかった。白血病MRRは1.70(95%CI:0.84-3.45)でばく露地域で高かった。年齢層別では、0-14歳でMRR=2.29(95%CI:1.05-5.98)、15-29歳でMRR=2.44(95%CI:1.07-5.24)であった。【結論】AMラジオ放送タワー周辺地域で、全がん死亡率および若年層での白血病死亡率がやや高いことを観察した。これらの知見は、AMラジオ放送タワーからのRFばく露がんの間の因果関係を証明するものではないものの、この問題に関する分析的研究が韓国でさらに必要であることを示唆する。

研究の目的(著者による)

ラジオ送信装置の近傍に住む人口におけるがん死亡率を評価するため、韓国において生態学的研究を実施した。

詳細情報

ばく露地域と非ばく露地域における死亡率を比較した。ラジオ送信装置へのばく露は、送信電力が少なくとも100kWのAMラジオ送信装置から2㎞以内と定義した。100kW超のAMラジオ送信装置がある10のばく露地域、及び40の非ばく露地域について、がん死亡率を計算した。

影響評価項目/リスク推定のタイプ

リスク推定のタイプ: (標準化死亡率比(SMR))

ばく露

ばく露評価

ばく露集団

グループ 説明
参照集団 1 住居からラジオ送信装置までの距離: < 2 km
集団 2 住居からラジオ送信装置までの距離: ≥ 2 km

調査対象集団

調査規模

タイプ
合計 1,234,123

結論(著者による)

がん全体についての死亡率は、ばく露群で10万人あたり113.07、対照群で10万人あたり87.32であった。送信電力が100kW超のAMラジオ送信装置から2km以内に住む人口における全がん死亡率は、2㎞以遠に住む人口よりも1.29倍高かった(CI 1.12-1.49)。ばく露群の人口では若年成人白血病死亡率が有意に高かった:0-14歳の年齢グループで2.29倍(CI 1.05-5.98)、15-29歳の年齢グループで2.44倍(CI 1.07-5.24)であった。

著者らは、AMラジオ送信局に近い地域では、がん全体、及び若年グループでの白血病について、より高い死亡率が認められたと結論付けた。但し、これらの知見は因果関係を証明するものではない。

研究の限界(著者による)

ばく露は個人についてではなく、定義された地域の居住地について評価された。

研究助成

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