この研究は、超低周波電磁界(ELF-EMF)がヒト細胞のDNAの完全性に影響を与えるか否かについて検討した。コメットアッセイを用いた証拠を示して、影響があることを報告した先行研究があるが、その結果については、2つの主な理由(再現性の欠如、およびEMFがどのようにDNAに損傷を与える可能性があるかについてのもっともらしい科学的根拠の欠如)から激しく議論された。本研究は、先の実験の複製から始めて、ELF-EMFが誘発するDNAへの作用の存在を探索した。その結果、ヒト初代線維芽細胞に、磁束密度1mTの50Hz EMFの断続ばく露(しかし連続的にではなく)を与えた場合、コメットアッセイでDNA断片化がわずかではあるが有意に増加することを確認した;さらに、コメットアッセイで示されたEMFに誘発された応答は、細胞増殖に依存することを示した;このことは、DNA自体ではなくDNA複製プロセスが影響を受ける可能性があることを示唆する;一貫して、コメット効果は、ばく露を受けた培養物において活発に複製される細胞の数の減少、それに伴うアポトーシス細胞の増加と相関したが、Fpg-コメットテストを組み合わせても酸化的DNA塩基損傷の顕著な寄与の証拠は得られなかった;したがって、ELF-EMFが誘発した作用に関するコメットアッセイでの証拠は、特定の条件下で再現可能であるが、それはDNA損傷の生成ではなく、S期プロセスの軽微な障害とアポトーシスのトリガーが時折作用することで説明される、と報告している。
本研究の狙いは、50Hz超低周波電磁界にばく露したヒト初代線維芽細胞におけるDNA鎖切断の増加をほのめかした、Ivancsits他による先行研究(Ivancsits et al. 2002, Ivancsits他、2003)を再現することであった。本研究の狙いは、これらの観察結果の再現性を検証し、ELF電磁界によって生じたDNA影響の由来と性質を探求することであった(同一の実験条件及び手順を採用した)。
ばく露 | パラメータ |
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ばく露1:
50 Hz
ばく露時間:
5 min on - 10 min off - for 15 hr
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ばく露2:
50 Hz
ばく露時間:
continuous for 15 hr
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周波数 | 50 Hz |
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タイプ |
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ばく露時間 | 5 min on - 10 min off - for 15 hr |
Additional information | with frequency components up to 1 kHz |
ばく露の発生源/構造 | |
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ばく露装置の詳細 | four-coil system consisting of bifilar coils placed in a µ-metal box inside an incubator |
Sham exposure | A sham exposure was conducted. |
周波数 | 50 Hz |
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タイプ |
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ばく露時間 | continuous for 15 hr |
Additional information | with frequency components up to 1 kHz |
ばく露の発生源/構造 |
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Sham exposure | A sham exposure was conducted. |
このデータは、ヒト初代線維芽細胞の50Hz電磁界(磁束密度1mT)への間欠的な(連続的ではない)ばく露が、僅かだが有意なDNA断片化の増加を生じることを、コメットアッセイで確認した。著者らは、これが電界ではなく磁界によって生じるという最初の証拠を示している(この目的のため、ペトリ皿の中央と周縁部の細胞を比較した)。更に、著者らは、コメットアッセイでの電磁界による応答は細胞増殖に依存することを示し、DNAそのものではなく、DNA複製プロセスが影響されるのかも知れない、ということを示唆している。コメットアッセイでの影響は一貫して、活発に複製している細胞の減少と相関しており、ばく露した細胞培地でのアポトーシス細胞の増加を伴ったが、Fpg-コメットアッセイの組合せでは、酸化的DNA塩基損傷の特筆すべき寄与についての証拠を示すことができなかった。
ゆえに、コメットアッセイでのELF磁界の影響は、特定条件下で再現可能で、これはDNA損傷の発生によってではなく、細胞周期のS期のプロセスのマイナーな攪乱と偶発的なアポトーシス誘導によって説明できる。最後に、コメットアッセイでのELF電磁界による影響の再現性の問題は、このS期依存性で説明できるかも知れない(細胞集団におけるS期の細胞の割合は、培養条件と用いた細胞株によって決定され、これらのパラメータは実験室間で異なるかも知れない)。
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