この研究は、ヒト細胞に対する時間変動磁界(MF)の潜在的な遺伝毒性効果を調べた。ヒト初代培養線維芽細胞および子宮頸がん細胞に、60Hz MFばく露を連続的に与えた。ばく露プロトコルは、最大14 mT、最小2 mTの MFの30分間連続ばく露、または7 mTのMFの0 - 120分間連続ばく露とした。結果、どちらのばく露プロトコルにおいても、またどちらの細胞でも、細胞生存率に有意な変化は観察されなかった;ただし、DNA二本鎖切断(DSB)が検出された;これらの細胞においてアポトーシスはなく、DNA損傷チェックポイント経路は活性化された;MFばく露は、細胞内活性酸素種(ROS)産生を誘発しなかった;このことは、DNADSBがROSによって直接引き起こされたものではないことを示唆する;そこで、MFばく露により細胞にもたらされるローレンツ力および渦電流を数値シミュレーションすると、30分間のばく露後にDNADSBが主に発生した中央領域は、MFが最も強い場所であったこと、90分間のばく露後にDNADSBの量が急速に増加した領域は、渦電流とローレンツ力が強い外側の領域であったことが示された、と報告している。
ばく露の直後または24時間後に細胞を調べた。紫外線C波(UVC)(アポトーシス及びDNA二本鎖切断について)ならびにTBHP(tert-ブチルヒドロペルオキシド;活性酸素種の誘導について)で陽性対照を実施した。
著者らは、DNA二本鎖切断の位置及び時間依存性を、磁界の数値シミュレーションと比較した。これらの実験でのローレンツ力及びエディ電流を数値計算し、それぞれの因子が二本鎖切断に及ぼす影響力を調査した。
周波数 | 60 Hz |
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タイプ |
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ばく露時間 | continuous for 30 min |
7mTの60Hz磁界へのヒト線維芽細胞及び子宮頸がん細胞の0-120分間の連続ばく露では、細胞の生存能力に有意な変化は認められなかった。2つの細胞株の生存能力にも、0-14mTで30分間の磁界ばく露による変化はなかった。
但し、7mTかそれ以上の強度で30または60分間ばく露したどちらの細胞株にも、DNA二本鎖切断が検出された(ガンマ-H2AX焦点形成及び/またはガンマ-H2AX発現、ならびにコメット解析で示された)。これらの細胞では、プログラムされた細胞死なしに(アポトーシス;カスパーゼ-3の発現に変化がないこと、切断されたカスパーゼ-3、及びPARPで示された)、DNA損傷チェックポイント経路が活性化された(ホスフォ-ATM及びp-Chk2のタンパク質発現で示された)。
これらの細胞株の60Hz磁界ばく露は、細胞内での活性酸素種産出を生じなかった。このことは、観察されたDNA二本鎖切断が活性酸素種によって直接生じたものではないことを示唆している。
DNA二本鎖切断は主に、30分間のばく露後に、磁界が最も強い培養プレートの中央部で生じた。但し、90分後には、エディ電流及びローレンツ力が強い外側の領域での二本鎖切断の量が急増した。
結論として、このデータは、2-14mTの60Hz磁界へのばく露は数十分間という短いばく露後であっても、ヒト非がん及びがん細胞のどちらにも潜在的な遺伝毒性を有する、ということを示唆している。
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