この研究は、高リスク神経芽細胞腫の代表であるヒト神経芽細胞腫細胞株BE(2)Cの増殖と分化に対する正弦波の超低周波磁界(ELF-MF; 50 Hz、1 mT)ばく露の影響を評価した。この細胞株に、神経分化剤(オール・トランスレチノイン酸、ATRA)の存在下または非存在下で、24 - 72時間、ELF-MFばく露を与えた。擬似ばく露群との比較によって影響を評価した。その結果、レチノイン酸とELF-MFの組み合わせばく露群では、レチノイン酸またはELF-MFのいずれかの単独ばく露群に比べ、細胞増殖の低下およびG(0)/ G(1)期細胞の割合上昇が見られた;さらに、組み合わせばく露群では、より分化の進行した形態学的特徴(細胞における神経突起数の増加、神経突起長の増加)が見られ、それと一緒に、神経分化に関与するp21(WAF1 / CIP1)遺伝子およびcdk5遺伝子のmRNAレベルの有意な上昇が見られた;さらに、ニューロン分化とストレス応答の両方に関与するcyp19遺伝子の発現を評価すると、cyp19遺伝子発現は、ATRA処置によって増強され、ATRAと組み合わせたELF-MFばく露によってさらに有意に増強された;以上の知見は、ELF-MFばく露が神経芽細胞腫細胞に対するATRA効果を増強する可能性を示唆する、と報告している。
神経分化因子(オールトランスレチノイン酸、ATRA)あり/なしで、細胞を超低周波磁界に24-72時間ばく露した(ATRAで処理したBE(2)C細胞は、細胞増殖率及び神経突起伸長の減少を示す)。
可能性のある生物医学的応用を考慮して、神経分化に対する磁界の影響を調査した;細胞分化の誘導は腫瘍の治療の目的の一つである。これは、腫瘍があまり分化していないほど、転移の攻撃性がより高いためである。高リスクの神経芽腫の治療では、レチノイン酸がしばしば用いられる。これは、レチノイン酸には成長停止と分化を生じる能力があるためである。著者らは、ATRAに対してあまり応答しない神経芽腫の分化を、磁界ばく露が改善し得るという仮説を立てている。
ばく露 | パラメータ |
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ばく露1:
50 Hz
ばく露時間:
continuous for 24 hr to 72 hr
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cells were exposed i) to EMF only ii) to EMF + all-trans-retinoic acid
周波数 | 50 Hz |
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タイプ |
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波形 |
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ばく露時間 | continuous for 24 hr to 72 hr |
ばく露の発生源/構造 | |
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ばく露装置の詳細 | two pairs of Helmholtz coils in a 5% CO2 incubator at a constant temperature of 37°C; coils with a diamter of 25 cm and 2 x 20 turns double wrapped; 11 cm high exposure area with a diamter of 4 cm in the center of the coil system |
Sham exposure | A sham exposure was conducted. |
測定量 | 値 | 種別 | Method | Mass | 備考 |
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磁束密度 | 1 mT | - | 測定値 | - | - |
レチノイン酸処理(ATRA)とあわせて超低周波磁界にばく露した細胞は、磁界ばく露のみ、またはATRA投与のみの細胞と比較して、細胞増殖の低下と、G0期/G1期の細胞の比率の上昇を示した。更に、ATRA処理とあわせて磁界ばく露した細胞は、磁界ばく露のみ、またはATRA投与のみの細胞と比較して、神経突起伸長の数と長さの増加を示した。加えて、p21WAF1/CPP1及びcdk5遺伝子の発現の有意な増加が見られた。Cyp19遺伝子発現はATRA投与によって増加し、磁界ばく露とATRA処理の組合せでは更に増加した。
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