研究のタイプ: 医学/生物学の研究 (experimental study)

[ヒトがん細胞株の増殖に対する50Hz磁界及びオールトランスレチノールの影響力] med./bio.

Influence of a 50 Hz magnetic field and of all-transretinol on the proliferation of human cancer cell lines

掲載誌: Int J Oncol 2012; 40 (5): 1405-1413

この研究は、神経芽細胞腫(NB69)と肝細胞癌(HepG2)の2つの増殖中のヒト細胞株を用いた実験で、100 μT、50 Hz磁界MF)の単独ばく露または0.5 μMのオールトランスレチノール(ROL:全トランス型レチノイン酸:腫瘍抑制療法に用いられる薬剤)との組合せばく露(42時間、3時間オン/3時間オフの断続的ばく露)に対する細胞の反応を調べた。実験は反復実施され、細胞サンプルは、MF+/ ROL+、MF+/ ROL-、MF- / ROL+、またはMF- / ROL-のいずれかに割り当てられた。増殖反応は、細胞カウント(トリパンブルー排除)、BrdU取り込み、および総タンパク質とDNA含有量の分光光度分析により測定された。その結果、別々に投与された場合、MFとROLのどちらも、両方の細胞株において、細胞増殖を有意に増強させることが示された;NB69では、MFとROLの同時投与により、DNA含有量の増加を伴って、細胞増殖への相加効果が誘発された;対照的にHepG2では、ROLによって誘発される細胞増殖およびタンパク質含有量の増加は、MFへの同時ばく露によって部分的に阻害された;知見を総括して、2つの因子(低レベルのMFおよびROL)は、2種のアッセイされたヒト細胞株において増殖応答を誘導すること、ただし、ROLとMFの同時ばく露に対する応答には2つの細胞種の間で有意差が見られた、と報告している。

研究目的(著者による)

弱い磁界への42時間の間欠ばく露単独、またはオールトランスレチノール(オンコスタチン治療に適用されるレチノイド)との組合せに対する、2つの増殖中のヒトがん細胞株神経芽腫及び肝細胞がん)の反応を調べること。

詳細情報

以下の処理の組合せのいずれかを細胞サンプルに与えた:1) 磁界ばく露及びオールトランスレチノール処理(0.5µg/ml)、2) 磁界ばく露単独、3) オールトランスレチノール処理単独、4) 処理なし。

本研究は欧州連合が資金助成したREFLEXプロジェクトの一部である。

影響評価項目

ばく露

ばく露 パラメータ
ばく露1: 50 Hz
ばく露時間: 3 h on/3 h off during 42 h

General information

The cells were treated in the following groups: i) control group ii) 0.5 µg/ml all-trans-retinol treatment iii) exposure to EMF iv) all-trans-retinol treatment + exposure to EMF

ばく露1

主たる特性
周波数 50 Hz
タイプ
  • magnetic field
波形
  • sinusoidal
偏波
  • linear
ばく露時間 3 h on/3 h off during 42 h
Additional information vertically polarized
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
ばく露装置の詳細 two pairs of Helmholtz coils with a coil diameter of 20 cm and 1000 turns of enameled copper wire, aligned coaxially 10 cm apart; cell culture dishes placed inside the coil system; each coil pair installed separately in the center of a magnetically shielded chamber (co-netic alloy), placed inside an incubator
Sham exposure A sham exposure was conducted.
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
磁束密度 100 µT - 測定値 - -

Reference articles

ばく露を受けた生物:

方法 影響評価項目/測定パラメータ/方法

研究対象とした生物試料:
調査の時期:
  • ばく露後

研究の主なアウトカム(著者による)

このデータは、2つの処理(磁界及びオールトランスレチノール)を個別に与えた場合、どちらの細胞株でも細胞増殖を有意に強めることを示した。NB69細胞では、同時ばく露共ばく露)は、DNA量の増加に関連する細胞増殖の更なる増加を生じた。対照的に、Hep G2細胞では、オールトランスレチノール誘導した細胞増殖及びタンパク質量の増加は、磁界への同時ばく露によって部分的にブロックされた。

結論として、これらのデータは、両方の因子(磁界及びオールトランスレチノール)は2つのヒト細胞株増殖反応を生じることを示した。但し、共ばく露に対するこの2つの細胞の反応には有意差が認められた。このことは、根底にあるメカニズムは細胞型に特異的であることを示している。

研究の種別:

研究助成

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