研究のタイプ: 医学/生物学の研究 (experimental study)

[ニューロンへの分化中のPC12細胞に対する急性および慢性の低周波電磁界ばく露の影響] med./bio.

Effects of Acute and Chronic Low Frequency Electromagnetic Field Exposure on PC12 Cells during Neuronal Differentiation

掲載誌: Cell Physiol Biochem 2010; 26 (6): 947-958

この研究は、褐色細胞腫由来細胞株(PC12細胞)を神経細胞モデルとして用い、超低周波電磁界(ELF-EMFばく露インビトロでの神経突起形成に与える影響を調べた。短期ばく露(30分間)および長期ばく露(1 - 7日間)をそれぞれ、磁束密度0.1 mTおよび1.0 mTで実施した。増殖率と神経突起形成はそれぞれ、比色分析と形態素解析で測定した。単一細胞のビデオ顕微鏡法により、活性酸素種ROS)レベルと細胞内Ca2+変動をモニタした。その結果、1 - 7日間継続した磁界ばく露(0.1または1.0 mT)は、生物学的応答(増殖および神経突起形成)に有意な影響を与えるようには見えなかった;急性ばく露(30分間)中には、未分化PC12細胞でのROSレベル上昇、カタラーゼ活性低下が見られた;しかし、未分化PC12細胞でのカタラーゼ活性は、1.0 mTでの7日間ばく露後には増加に転じた;未分化細胞において、急性ばく露(0.1または1.0 mT)は自発的な細胞内Ca2+変動に影響を及ぼし、慢性ばく露後には細胞内Ca2+の基礎レベルが上昇を示した;さらに、急性ばく露脱分極剤に対する細胞応答に影響を及ぼしたが、基底膜電位は変化しなかった、と報告している。

研究目的(著者による)

神経細胞のモデルとして褐色細胞腫由来細胞株(PC12細胞)を用いて、異なる強度及び持続時間の超低周波電磁界への細胞のばく露中のイン・ビトロでの神経発生を調べること。

詳細情報

分化した(NGFインキュベーションにより取得)及び未分化細胞ばく露し、ばく露中(短期的影響)または長期ばく露後(数日)に分析した。

影響評価項目

ばく露

ばく露 パラメータ
ばく露1: 50 Hz
ばく露時間: continuous for 1 to 7 days
ばく露2: 50 Hz
ばく露時間: continuous for 30 min

ばく露1

主たる特性
周波数 50 Hz
タイプ
  • magnetic field
波形
  • sinusoidal
ばく露時間 continuous for 1 to 7 days
Additional information horizontally polarized
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
ばく露装置の詳細 cylindrical 340 mm long solenoid with a diameter of 113 mm mounted on a non-magnetic support base and placed inside an incubator; cells positioned in plastic dishes inside the solenoid
Sham exposure A sham exposure was conducted.
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
磁束密度 0.1 mT - - - +/- 2 %
磁束密度 1 mT - - - +/- 2 %

ばく露2

主たる特性
周波数 50 Hz
タイプ
  • magnetic field
波形
  • sinusoidal
ばく露時間 continuous for 30 min
Additional information horizontally polarized
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
ばく露装置の詳細 pair of Helmholtz coils with a radius of 445 mm each and a distance of 400 mmm placed perpendicular to the ground in the working zone of a confocal microscope on a non-magnetic carrier; dishes with cells located in the spherical exposure area with a radius of 10 mm in the centre of the microscope stage
Sham exposure A sham exposure was conducted.
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
磁束密度 0.1 mT - - - +/- 2 %
磁束密度 1 mT - - - +/- 2 %

Reference articles

ばく露を受けた生物:

方法 影響評価項目/測定パラメータ/方法

研究対象とした生物試料:
調査の時期:
  • ばく露中
  • ばく露後

研究の主なアウトカム(著者による)

長期間の超低周波電磁界ばく露は、PC12細胞の応答(増殖及び神経突起生成)に有意に影響しないようであった。

但し、急性ばく露(30分間)中、未分化のPC12細胞では、活性酸素種のrベルが上昇し(1mT)、カタラーゼ酵素活性が低下した(0.1及び1mT)。対照的に、1mTの慢性ばく露(7日間)後にはカタラーゼ酵素活性の上昇が見られた。急性ばく露(0.1及び1mT)は、未分化細胞での自発的な細胞内Ca2+の変動を減少させた。細胞内Ca2+の基底濃度は急性ばく露(30分間)中に変化しなかったが、未分化細胞では慢性ばく露(7日間)後に増加した。加えて、急性ばく露脱分極剤(塩化カリウム及びタプシガルギンカルシウムを含まない培地中で)に対する未分化細胞の細胞応答に影響したが、基底膜電位は変化しなかった。

著者らは、活性酸素種及びCa2+が、超低周波電磁界による生体系への影響についての細胞の「原動機」となり得る、という仮説を支持している。

研究の種別:

研究助成

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