この研究は、イタリアのボローニャにあるラマツィーニ研究所(Ramazzini Institute)が2002年に開始した電力周波電磁界の発がん影響に関する実験研究プロジェクトからの最初の報告である。プロジェクトでは、Sprague-Dawleyラットに出生前から自然死までの期間、さまざまな強度レベルの正弦波50 Hz磁界(S – 50 Hz MF)へのばく露を与え、発がん作用の可能性を評価した。またその影響と他の因子との関連も調べた。以下の内容で構成された。1)S-50HzMFの発がん作用を定性的-定量的に評価する実験(この目的のため、電流の強度および連続性/不連続性に関して異なるばく露条件で実験する)、2)S-50HzMFの生殖能力および胚/胎児毒性への影響を評価する実験、3)S-50Hz MFと他の電磁界(ガンマ線)との同時発がん作用を評価する実験、4)S-50Hz MFと発がん性化学物質(ホルムアルデヒドやアフラトキシンB1など)との同時発がん性を評価する実験、5)総合して、分子生物学的分析により、発がんの基礎である病因性メカニズムの候補を吟味する。プロジェクト全体では、親ラット2100匹とその子孫7133匹を用いた。この論文では、胎児期から死亡までの期間にわたるS-50Hz MFばく露、および6週齢での1回のガンマ線照射(10 rad)を受けた雌ラットにおける乳腺への発がん影響についての最初の報告をしている。
Ramazzini Institute(イタリア)は2002年、出生前から自然死までさまざまな強度レベルの50Hz磁界にばく露したラットにおける電力周波数磁界の潜在的発がん作用、またはその他の因子との関連を評価するための実験研究プロジェクトを立ち上げた。
今回の報告では、この大規模プロジェクトのデザイン、ならびに、雌ラットの乳腺に対する50Hz磁界及び低線量ガンマ線の発がん作用に関する最初の結果を示す(EMF-Portalでは共発がん作用に関する実験データのみを示す)。
この大規模実験全体には、親ラット2100匹と仔ラット7133匹が含まれた。
今回の実験では、ラット2181匹(雄1086匹、雌1095匹)を5群でばく露した:1000µTばく露+ガンマ線(6週齢;n=222)、2) 20µTばく露+ガンマ線(n=212)、3) 1000µTばく露のみ(n=523)、4) ガンマ線のみ(n=223)、5) 対照群(n=1001)。ばく露は胎児期(妊娠12日目)から開始し、離乳後に親ラットを屠殺した。仔のばく露は自然死まで続けた。
rats were treated in five groups: i) 1000 µT EMF exposure + 10 rads gamma radiation at the age of 6 weeks ii) 20 µT EMF exposure + 10 rads gamma radiation at the age of 6 weeks iii) 1000 µT EMF exposure iv) 10 rads gamma radiation at the age of 6 weeks v) control group (sham exposure)
周波数 | 50 Hz |
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タイプ |
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波形 |
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偏波 |
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ばく露時間 | continuous for 19 h/day from day 12 of fetal life (pregnancy) until spontaneous death of offspring |
ばく露の発生源/構造 | |
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ばく露装置の詳細 | toroidal shaped exposure device consisting of 24 coils, each made of three turns of insulated copper cable wound on an aluminum superstructure composed of two insulated parts; wooden support structure for allocation of the rat cages placed inside the exposure system; 5 rats per 41 cm x 25 cm x 15 cm polycarbonate cage with a cover of non-magnetic metal; 500 rats per exposure system |
Sham exposure | A sham exposure was conducted. |
磁界とガンマ線への共ばく露は、ガンマ線単独照射群、1000µT磁界単独ばく露群、または対照群と比較して、乳腺塊の発生率を高め、そのような病変の開始を加速した。触診した乳腺塊は必ずしも乳腺病変と確認されたわけではなく、小さな病変は見逃されたかも知れない。
剖検データが示すように、「1000µT磁界+ガンマ線」にばく露した雌に、他の群と比較して統計的に有意ではない線維線腫の発生率の上昇が認められた。加えて、「1000µT磁界+ガンマ線」ばく露は、乳腺がんの発生率の有意な上昇を生じた。
著者らは、これらのデータは、胎児期から生涯にわたる電力周波数50Hz磁界ばく露は、よく知られた発がん因子(ガンマ線)と共ばく露した場合、雌ラットに悪性腫瘍(乳がん)の有意なリスク上昇を生じる、ということを初めて示すものである、と結論付けている。
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