この研究は、SD異系交配ラットのさまざまな亜系統において、50 Hz磁界(MF;強度はμTレベル)の乳腺の細胞増殖への影響および7,12-ジメチルベンズ(a)アントラセン(DMBA)誘発性乳がんへの感受性、それからDMBAモデルにおける乳がんの発症および増殖へのMFの影響を比較した。背景としては、著者らが、DMBAモデルにおける乳がんの発生および増殖へのMF影響(S. Thun-Battersby et al. 1999; Cancer Res 59)および、SDラットの乳腺上皮の増殖活性のMFばく露による上昇(M. Fedrowitz et al. 2002; Cancer Res 62)を報告したのに対し、米国のBattelleの研究者は、同様の研究においてSDラットのDMBAモデルで、MFばく露の発がん性または腫瘍促進効果の証拠を見い出されなかったと報告した(LE Anderson et al. 1999; Carcinogenesis 20)。このような相違の原因は、米国の研究が用いたラットが、著者らの用いたラットよりもDMBA感受性が高かったためと著者らは考えた。そこで、著者らがこれまでのすべての研究で用いたSD亜系統(SD1と称する)はMF感受性が高いとみなし、同じブリーダーから得た別の亜系統(SD2と称する)と比較を行った。その結果、SD1ラットとは対照的に、SD2ラットでのMFばく露後の細胞増殖の増強は確認されなかった;MFばく露はSD1ラットでの乳腺腫瘍の発症と増殖を有意に増加させたが、SD2ラットでは増加させなかった;これらのデータは、遺伝的背景がMFばく露の影響において極めて重要な役割を果たすことを示している、と報告している。
乳腺における細胞増殖に対する磁界の影響、DMBAで誘導した乳がんに対する感受性、DMBAモデルにおける乳がんの発生と成長に対する磁界の影響に関して、Sprague-Dawleyラットの異なる亜系統を比較すること。
著者らは、Sprague-Dawleyラットの亜系統間の遺伝的差異が、乳がん発生についての異なるグループ/研究室での結果の違いに関与している、と示唆している(publication 4796 参照)。Sprague-Dawleyラットの亜系統SD1は磁界に対して敏感であると見なされており、他の亜系統との比較に用いられている。
DMBA実験のラットは、磁界ばく露または偽ばく露の初日に最初のDMBA投与(1匹当たり5mg)を受けた。ラットは4回の毎週用量でDMBAを20mg投与された。
周波数 | 50 Hz |
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タイプ |
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ばく露時間 | repeated daily exposure, 24 h/day, 7 days a week for 18 weeks |
Additional information | horizontally polarized magnetic field |
ばく露の発生源/構造 |
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チャンバの詳細 | Three exposure chambers with room for four cages were used for exposure. Three identical but non-energized exposure chambers were located at the other side of the same room for sham exposure. |
Additional information | Both exposed and sham control rats were administered with 4 weekly doses of 5 mg/rat DMBA (7,12-dimethylbenz(a)anthracene) in sesame oil. |
測定量 | 値 | 種別 | Method | Mass | 備考 |
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磁束密度 | 100 µT | effective value | 測定値 | - | - |
周波数 | 50 Hz |
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タイプ |
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ばく露時間 | repeated daily exposure, 24 h/day, 7 days a week for 2 weeks |
Additional information | horizontally polarized magnetic field |
ばく露の発生源/構造 |
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Additional information | In the morning of the last day of exposure, all the rats received an 50 mg/kg i.p injection of BrdUrd (bromodeoxyuridine). |
測定量 | 値 | 種別 | Method | Mass | 備考 |
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磁束密度 | 100 µT | effective value | 測定値 | - | - |
SD1ラットとは対照的に、SD2ラットには磁界ばく露後の細胞増殖の強化は認められなかった。磁界ばく露はSD1では腫瘍の発生及び成長を有意に増加させたが、SD2ではさせなかった。
これらの知見は、磁界ばく露の影響において遺伝的バックグラウンドが重要な役割を担っていることを示している。異なる系統または亜系統のラットは、磁界ばく露の共発がん作用または腫瘍プロモーション作用に対する感受性の根底にある、遺伝的要因の評価に役立つかも知れない。
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