この研究は、著者らの先行研究(50 Hz磁界(MF; μTレベル)が、雌SDラットのDMBA乳がんモデルにおける乳腺腫瘍の発症および増殖を増強すること、またMFばく露はSDラットの乳腺上皮の増殖活性が高めることを報告)を背景に、MFばく露(100 μT、2週間)が乳腺の細胞増殖に与える影響を8系統のラットで比較した。乳房組織および隣接する皮膚における上皮細胞の増殖を、増殖中の細胞をブロモデオキシウリジン(BrdU)で標識することにより測定した。その結果、先行研究で使用したMFに敏感なSD亜系統(SD1)以外では、フィッシャー344ラットが、MFばく露が乳腺上皮におけるBrdU標識を有意に増強させる唯一の系統であった;フィッシャー344ラットにおけるBrdU標識のMFによる増加は、DMBA処置後に見られた増加と同様であった;フィッシャー344ラットの乳腺組織の全量分析において、MFばく露により、終末芽、すなわち乳がんの発生部位の数が増加したことが示された;フィッシャー344ラットを、MF非感受性のSD近交系ラットと比較することは、MFばく露の発がんまたは腫瘍促進の効果感受性の根底にある遺伝的要因の評価に有用かもしれない、と報告している。
乳腺における細胞増殖、DMBAで誘導した乳がんに対する感受性、ならびにDMBAモデルにおける乳がんの発生及び進行に対する磁界の影響に関して、8つの異なる非近交系及び近交系の系統及び亜系統のラットを比較すること。更に、遺伝的研究(磁界感受性の要因である遺伝子を同定するための戻し交配等)に適した、磁界に敏感な近交系ラットを同定すること。
著者らは、Sprague-Dawleyラットの亜系統間の遺伝的差異が、乳がんの発生についての異なる研究グループ/研究室での結果の違いに関係していると示唆している(publication 4796 参照)。Sprague-DawleyラットSD1とは対照的に、Sprague-DawleyラットSD2では磁界ばく露後の細胞増殖の強化及び乳がんの発生の増加は認められていない(publication 13697)。
ばく露 | パラメータ |
---|---|
ばく露1:
50 Hz
ばく露時間:
continuously for 2 weeks
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周波数 | 50 Hz |
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タイプ |
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波形 |
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ばく露時間 | continuously for 2 weeks |
測定量 | 値 | 種別 | Method | Mass | 備考 |
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磁束密度 | 100 µT | effective value | 測定値 | - | - |
著者らが先行実験(「関連論文」を参照)で用いた磁界に敏感なSprague-Dawleyラットの亜系統SD1に加えて、細胞増殖の顕著な増加を示す乳腺上皮でのBrdUラべリングの磁界ばく露による有意な増強が認められた唯一の系統は、Fischer 344ラットのみであった。Fischer 344ラットにおけるBrdUラべリングの磁界による増加は、DMBA適用後に見られるものと同様であった。
更に、Fischer 344ラットの乳腺組織の分析では、磁界ばく露は末端芽、即ち乳がんの起点の数を増加させることがわかった。
磁界に敏感でない近交系ラット系統と比較することで、Fischer 344ラットは、磁界の共発がんまたは腫瘍促進作用に対する感受性の根底にある遺伝的要因の評価に用いることができるかも知れない。
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