この研究は、70-kDa熱ショックタンパク質(HSP70)発現への電磁界(EMF)の影響に関する報告の矛盾を検証するために、いくつかの細胞での誘導性HSP70の蓄積に対する低周波EMF(50 Hz、680 μT)の影響を調べた。その結果、試験したいくつかの細胞タイプでは、EMFの24時間ばく露により、HSP70タンパク質のレベル上昇がみられた;内皮細胞では、EMFにより、熱ショック転写因子1(HSF1)のわずかで一過性の活性化のみが起きたが、HSP70 mRNAのレベルもHSP70の合成も有意に変化したようには見えなかた;したがって、HSP70プロモーターが関与するトランスフェクション実験において、遺伝子転写が影響を受けなかったことが示された;また、EMFばく露を受けた細胞の抽出液におけるプロテアソーム活性が著しく低下した;これらの知見から、EMFばく露を受けた内皮細胞では、HSP70遺伝子の転写および翻訳は影響を受けないことが示されたが、EMF単独で、誘導性HSP70タンパク質の蓄積促進が起き、熱ショックと組み合わせ場合には熱誘導性HSP70 mRNAの蓄積と翻訳が強化されることが示された、と報告している。
内皮細胞で、HSP70遺伝子発現プロセスの幾つかのステップ(即ち、熱ショック転写因子1(HSF1)の活性化、遺伝子転写、mRNA蓄積及びHSP70新合成)に対する電磁界の影響、ならびに熱ショック(44℃で30分間)と電磁界への複合ばく露の影響も分析した。内皮細胞に電気穿孔法によって(phsplacZ 及びpEGFP-C1ベクターで)遺伝子導入し、導入した遺伝子のHSP70プロモータ活性をベータ‐ガラクトシダーゼアッセイで評価した。
HSP70は長寿命のタンパク質であり、また細胞質タンパク質はたいていユビキチン/プロテアソーム経路を通じて劣化するので、その潜在的安定性を細胞抽出物中のプロテアソーム活性によって間接的に測定した。
周波数 | 50 Hz |
---|---|
タイプ |
|
波形 |
|
ばく露時間 | 20 min, 1 h, 2 h, 4 h, 8 h, 16 h, 18 h, 24 h, 48 h |
ばく露の発生源/構造 | |
---|---|
ばく露装置の詳細 | Four petri dishes were exposed simultaneously by inserting them in the solenoid. The solenoid and the sample holder resulted in a 38 cm high x 10 cm wide plexiglass chamber. The whole setup was placed in an incubator maintained at 37°C. Control samples were not exposed to MF and were incubated in the same incubator in a position where the environmental magnetic field was minimum (2 µT). |
Additional information | In some experiments, cells were exposed to heat stress for 20 or 30 min at 44°C in a water bath. |
幾つかの細胞タイプ(内皮細胞及びリンパ腫/白血病細胞)は、50Hz、680µTの電磁界への24時間ばく露の際に、HSP70タンパク質のレベルの増加を示した。
内皮細胞では、電磁界単独ではHSF1の極僅かで一過性の活性化しか生じなかった;但し、HSP70のmRNAのレベル、HSP70の合成のいずれにも、有意な変化は認められなかった。
HSP70プロモータに関する遺伝子導入実験では、遺伝子転写は影響されなかった。ばく露した細胞抽出物にはプロテアソーム活性の顕著な減少も見られた。
熱ショックで誘導したHSP70のmRNA及びタンパク質のレベルは、電磁界のような付随する弱いストレス要因によって上昇した。
結論として、このデータは、電磁界にばく露した内皮細胞では、HSP70遺伝子転写及び翻訳は影響されなかった;但し、電磁界は単独で、恐らくHSP70タンパク質の安定性を高めることにより、その蓄積を促進した。また、電磁界を熱ショックと一緒に適用した場合、熱によるHSP70のmRNAの蓄積及び翻訳を強めた。
このウェブサイトはクッキー(Cookies)を使って、最善のブラウジングエクスペリエンスを提供しています。あなたがこのウェブサイトを継続して使用することで、私たちがクッキーを使用することを許可することになります。