研究のタイプ: 医学/生物学の研究 (experimental study)

[3つの細胞株におけるELF電磁界ばく露後のHSP72の発現] med./bio.

Expression of HSP72 after ELF-EMF exposure in three cell lines

掲載誌: Bioelectromagnetics 2007; 28 (7): 509-518

μTからmTまでの帯域の流速密度をもつ磁界は、様々な細胞内で、熱ショック因子HSP72mRNA、いわゆる熱ショックタンパク質を生じさせることができるという報告がされてきた。本研究において、我々は、流速密度2μTから4mT、周波数50Hzの電磁界を15分~30分ばく露した後、3つの細胞株(HL-60、H9c2、ジラルディ心臓細胞)の中のHSP72mRNA転写レベルにおける変化と、2つの細胞株(HL-60、ジラルディ心臓細胞)の中の細胞内HSP72タンパク質含有量における変化を調査した。この処理あるいはモダリティはHSP72タンパク質レベルに対して如何なる重要な効果も示さなかったが、HSP72mRNAは検査されたすべての細胞株におけるパラメーターの組合せの一つと共に、少なくともある程度は誘発された。明らかに、HSP72mRNAの転写転換は、ある種の細胞において必ずしも連結されていない。このことは、増加したmRNAレベルが増加したHSP72タンパク質レベルと関連がない場合、HSP72mRNAレベルに対する電磁界の影響は、DNAの下流への影響は表れないという結論へ導く。

研究目的(著者による)

各種の細胞株に対して適用した異なる電磁界ばく露の影響を、熱ショックタンパク質mRNAの発現だけでなく、タンパク質レベルについても着目して調べること。

詳細情報

本研究で用いた分析手法を検証するため、熱ストレス(39-45℃、30分間)後のHL-60細胞におけるHSP72のmRNA誘導及びHSP72タンパク質レベルを判定した。

影響評価項目

ばく露

ばく露 パラメータ
ばく露1: 50 Hz
ばく露時間: 15 - 30 min
ばく露2: 50 Hz
ばく露時間: 30 min

ばく露1

主たる特性
周波数 50 Hz
タイプ
  • magnetic field
ばく露時間 15 - 30 min
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
ばく露装置の詳細 pair of Helmholtz-coils with a diameter of 140 mm, 70 mm apart; each coil with 112 turns of 0.5 mm copper wire; petri dishes placed in the center of the coils, shielded with a 2 mm thick sheet of styro foam; homogenous vertical magnetic field (< 5 %) within a cylindrical volume with a diameter of 30 mm and a height of 40 mm determined from the center of the coils
Sham exposure A sham exposure was conducted.
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
磁束密度 0.01 mT minimum 測定値 - -
磁束密度 4 mT maximum 測定値 - -

ばく露2

主たる特性
周波数 50 Hz
タイプ
  • magnetic field
ばく露時間 30 min
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
  • E1と同じ装置
Sham exposure A sham exposure was conducted.
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
磁束密度 10 µT effective value 測定値 - -
磁束密度 2 µT effective value 測定値 - 2 - 10 µT

ばく露を受けた生物:

方法 影響評価項目/測定パラメータ/方法

研究対象とした生物試料:
調査の時期:
  • ばく露後

研究の主なアウトカム(著者による)

データは、これらの細胞株ではミリテスラ範囲の15分間の磁界ばく露後にHSP72のmRNAが増加し、非常に似通った動態が見られることを示した。
これら3つの細胞株の全てで対応するmRNAが影響されたという事実があるにもかかわらず、タンパク質レベルでは、磁界ばく露後のHSP72タンパク質産出の増加の証拠はなかった。HL-60細胞のみで、1-2時間後のHSP72のレベル上昇の僅かな傾向があった。
これらの結果は、HSP72遺伝子転写の活性化はタンパク質合成に依存しないことを示している。先行研究には、タンパク質ベースでさえも電磁界ばく露によるHSP70の誘導性を示したものもあれば、示さなかったものもあるので、Hsp70の誘導プロセスでも同様の役割を担っているかも知れない他の要因を更に調査する必要がありそうである。

研究の種別:

研究助成

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