この研究は、架空送電線下の環境磁界(MF)の典型である楕円偏波(EP)60Hz MF(レザルタント(r)値が1〜500 μT)にばく露後の最初期遺伝子(細胞刺激(血清刺激など)に応答して速やかに発現が誘導される遺伝子群の総称。例えばc-fos、c-jun、c-mycなど)の発現を分析した。ヒト神経膠芽腫(T98G)細胞を用いて、転写レベルおよび翻訳レベルでの分析を行なった。細胞分裂周期をほぼ同調させたT98G細胞のG1期に、EP-MFs (1, 20, 100, 500 μTr) のばく露を、0.5、1、2、3時間与えた。その結果、転写および翻訳レベルにおいて、血清刺激後30分でのc-fosおよびc-jun、血清刺激後180分でのc-mycのそれぞれの発現比に有意差はなかった(P > 0.05)、と報告している。さらに追加実験として、直線偏波(垂直および水平)および/または円偏波のMF(500 μTr)ばく露の影響も同様に分析したが、転写レベルおよび転写後レベルのどちらにおいても、発現比に有意差はなかった(P > 0.05)。したがって、直線偏波または回転偏波の環境MFが最初期遺伝子の発現を増強するという証拠はなかった、と結論している。
周波数 | 60 Hz |
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タイプ |
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偏波 |
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ばく露時間 | 0.5; 1; 2; or 3 h |
Modulation type | CW |
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ばく露の発生源/構造 | |
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ばく露装置の詳細 | 4 coils per chamber, 2 horizontally and 2 vertically mounted, chambers surrounded by Mu metal box |
Sham exposure | A sham exposure was conducted. |
2時間までの楕円偏波磁界へのばく露は、最初期応答遺伝子及びハウスキーピング遺伝子の発現に統計的に有意な影響を及ぼさなかった。加えて、超低周波磁界はいずれの偏波の種類でも、最初期応答遺伝子及びハウスキーピング遺伝子の発現の基底レベルに統計的に有意な影響を及ぼさなかった。
異なる磁束密度の楕円偏波磁界にばく露した細胞とばく露しなかった細胞で、最初期遺伝子に有意差は認められなかった。
このデータは、ヒト神経芽腫細胞株の超低周波磁界へのばく露が、転写または翻訳レベルで最初期応答遺伝子の発現に影響を及ぼすという有意な証拠を提示していない。
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