研究のタイプ: 医学/生物学の研究 (experimental study)

[楕円偏波磁界はヒト神経膠芽腫細胞の最初期応答遺伝子の発現レベルを変化させない] med./bio.

Elliptically polarized magnetic fields do not alter immediate early response genes expression levels in human glioblastoma cells

掲載誌: Bioelectromagnetics 2002; 23 (2): 89-96

この研究は、架空送電線下の環境磁界MF)の典型である楕円偏波(EP)60Hz MF(レザルタント(r)値が1〜500 μT)にばく露後の最初期遺伝子細胞刺激血清刺激など)に応答して速やかに発現誘導される遺伝子群の総称。例えばc-fos、c-jun、c-mycなど)の発現を分析した。ヒト神経膠芽腫(T98G)細胞を用いて、転写レベルおよび翻訳レベルでの分析を行なった。細胞分裂周期をほぼ同調させたT98G細胞のG1期に、EP-MFs (1, 20, 100, 500 μTr) のばく露を、0.5、1、2、3時間与えた。その結果、転写および翻訳レベルにおいて、血清刺激後30分でのc-fosおよびc-jun、血清刺激後180分でのc-mycのそれぞれの発現比に有意差はなかった(P > 0.05)、と報告している。さらに追加実験として、直線偏波(垂直および水平)および/または円偏波のMF(500 μTr)ばく露の影響も同様に分析したが、転写レベルおよび転写後レベルのどちらにおいても、発現比に有意差はなかった(P > 0.05)。したがって、直線偏波または回転偏波の環境MFが最初期遺伝子発現を増強するという証拠はなかった、と結論している。

研究目的(著者による)

ヒト神経膠芽腫細胞の最初期遺伝子発現に対する、異なる偏波の磁界の影響をイン・ビトロで調査すること。

詳細情報

4種類の偏波(垂直、水平、回転、楕円)の超低周波磁界を用いて、異なる磁束密度細胞ばく露した。
陽性対照にはTPA処理細胞を用いた。

影響評価項目

ばく露

ばく露 パラメータ
ばく露1: 60 Hz
Modulation type: CW
ばく露時間: 0.5; 1; 2; or 3 h
ばく露2: 60 Hz
Modulation type: CW
ばく露時間: 0.5; 1; 2; or 3 h
circular polarization
ばく露3: 60 Hz
Modulation type: CW
ばく露時間: 0.5; 1; 2; or 3 h
linear polarisation

ばく露1

主たる特性
周波数 60 Hz
タイプ
  • magnetic field
偏波
  • elliptical
ばく露時間 0.5; 1; 2; or 3 h
Modulation
Modulation type CW
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
ばく露装置の詳細 4 coils per chamber, 2 horizontally and 2 vertically mounted, chambers surrounded by Mu metal box
Sham exposure A sham exposure was conducted.
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
磁束密度 500 µT maximum 測定値 - -
磁束密度 1 µT minimum 測定値 - -
磁束密度 20 µT - 測定値 - -
磁束密度 100 µT - 測定値 - -

ばく露2

主たる特性
周波数 60 Hz
タイプ
  • magnetic field
偏波
  • circular
ばく露時間 0.5; 1; 2; or 3 h
Additional information circular polarization
Modulation
Modulation type CW
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
Sham exposure A sham exposure was conducted.
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
磁束密度 500 µT - 測定値 - -

ばく露3

主たる特性
周波数 60 Hz
タイプ
  • magnetic field
偏波
  • linear
ばく露時間 0.5; 1; 2; or 3 h
Additional information linear polarisation
Modulation
Modulation type CW
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
Sham exposure A sham exposure was conducted.
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
磁束密度 500 µT - 測定値 - -

ばく露を受けた生物:

方法 影響評価項目/測定パラメータ/方法

研究対象とした生物試料:
調査の時期:
  • ばく露後

研究の主なアウトカム(著者による)

2時間までの楕円偏波磁界へのばく露は、最初期応答遺伝子及びハウスキーピング遺伝子発現に統計的に有意な影響を及ぼさなかった。加えて、超低周波磁界はいずれの偏波の種類でも、最初期応答遺伝子及びハウスキーピング遺伝子発現の基底レベルに統計的に有意な影響を及ぼさなかった。
異なる磁束密度の楕円偏波磁界ばく露した細胞ばく露しなかった細胞で、最初期遺伝子に有意差は認められなかった。
このデータは、ヒト神経芽腫細胞株超低周波磁界へのばく露が、転写または翻訳レベルで最初期応答遺伝子発現に影響を及ぼすという有意な証拠を提示していない。

研究の種別:

研究助成

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