ここでは、60Hzの磁界(0.3-1.2Gで3-72時間)へのばく露が、ヒトの星状細胞腫細胞の増殖を引き起こすかどうかを調べた。トリチウムチミジン取込み反応とフローサイトメトリーで測定したところ、60Hzの磁界(MF))は、星状細胞腫細胞の増殖における時間と量依存性を示す増加を引き起こし、2つのアゴニスト(ムスカリンアゴニストカルバコールとホルボールエステルPMA)の相乗効果を起こした。しかし、磁界は、非形質転換細胞のような、ラット皮質星状細胞のDNA合成には影響しなかった。また、磁界によって引き起こされた加熱を測定するため、温度も媒質中で記録した。1.2Gの磁界と擬似ばく露の両方が、媒質中で0.7℃の温度上昇を引き起こした。しかし、擬似ばく露で引き起こされたトリチウムチミジン取込みは、磁界によるものに比べあまり引き起こされなかった。特異的プロテインキナーゼC(PKC)抑制剤であるGF109203XとPKCの減少は、基本的な磁界の効果とアゴニストにより制御されるトリチウムチミジン取り込み反応を阻害した。これらのデータは、磁界がヒトの星状細胞腫の増殖に関与し、2つのアゴニストの相乗効果をもたらすことを示唆する。これらの結果は、磁界ばくばく露と脳腫瘍の疫学的関連についての生物学的基礎を提供するかもしれない。
加えて、温度、化学作用薬(カルバコール、テトラデカノイルホルボールアセテート(TPA)はDNA合成を誘導する)、及びプロテインキナーゼC阻害剤(GF 109203X)の役割を調査した。
実験を三重に実施し、少なくとも3回反復した。
周波数 | 60 Hz |
---|---|
タイプ |
|
波形 |
|
ばく露時間 | 3 - 72 h |
磁界は、ヒト星状細胞腫の細胞増殖において時間依存性及びばく露量依存性の増加を生じ、またカルバコール及びTPAの作用を増強した。但し、磁界は正常なラットの皮質星状細胞のDNA合成には影響しなかった。
磁界ばく露(1.2G)及び偽ばく露培地には、0.7℃の温度上昇が認められたが、磁界ばく露による 3H-チミジンの取り込みは、偽ばく露によって生じたものよりも有意に高かった。
プロテインキナーゼC阻害剤、及びプロテインキナーゼCの人為的な下方制御は、磁界の 3H-チミジン取り込みへの影響を阻害した。
この結果は、磁界は恐らくプロテインキナーゼCの関与により、ヒト星状細胞腫の細胞増殖を増加させ、カルバコール及びTPAの増殖支援作用を増強する、ということを示すものである。
このウェブサイトはクッキー(Cookies)を使って、最善のブラウジングエクスペリエンスを提供しています。あなたがこのウェブサイトを継続して使用することで、私たちがクッキーを使用することを許可することになります。