この研究は、170 kV(50 Hz)の高圧電力線が生成する超低周波電磁界(ELF-EMF)が精巣上体の精子の特性、生化学的パラメータ、テストステロンレベル、および精巣の組織病理学的パラメータに与える影響を調べた。28匹の成獣の雄ラットを4群(各n =7)に分け、3つのばく露群は、170 kV(50 Hz)の高圧電力線から7.5m離れた小屋に置かれ、それぞれは1、2、3か月間、ELF-EMF(48.21±1.58 mG)への24時間連続ばく露を受けた。対照群は実験室の磁界のない環境に置かれた。その結果、異なるばく露期間に応じて、生殖器の重量、精巣の寸法、精巣上体の精子濃度および精子の運動性の有意ではない減少、異常精子の出現率の有意でない増加が観察された;血漿および精巣のカタラーゼ活性の有意な上昇が、ばく露時間依存的に観察されたが、グルタチオンおよびマロンジアルデヒドのレベルに関しては有意差がなかった;精巣生検におけるJohnsenのスコアに照らして、1、2、3か月ばく露群および対照群の平均スコアはそれぞれ、9.24±0.08、8.02±0.12、6.98±0.11、および9.88±0.07であった;精巣の組織病理学的検査において、精子形成の減速および生殖細胞の変性がばく露時間の順にしたがって生じることが示された、と報告している。
ばく露 | パラメータ |
---|---|
ばく露1:
50 Hz
ばく露時間:
continuous for 24 h/day for 1, 2 or 3 months
|
周波数 | 50 Hz |
---|---|
タイプ |
|
ばく露時間 | continuous for 24 h/day for 1, 2 or 3 months |
ばく露の発生源/構造 |
|
---|---|
ばく露装置の詳細 | rats held in 33 cm x 13 cm x 15 cm Perspex cages placed in a 2 m x 2 m x 1.85 m experimental cottage with a horizontal distance of 10 m from the transformer station and a vertical distance of 7.5 m from the power lines |
Sham exposure | A sham exposure was conducted. |
測定量 | 値 | 種別 | Method | Mass | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
磁束密度 | 4.821 µT | mean | 測定値 | - | ± 0.158 µT; exposure environment |
電界強度 | 1.66 kV/m | mean | 測定値および計算値 | - | ± 0.01 kV/m; exposure environment |
磁束密度 | 0.048 µT | average over time | 計算値 | - | ± 0.005 µT; in the control environment |
電界強度 | 0.75 kV/m | average over time | 測定値および計算値 | - | ± 0.05 kV/m; in the control environment |
ばく露ラットと対照群のラットでは、臓器重量及び大きさ、ならびに精子濃度、精子の運動性及び異常な精子の比率に関する有意差は認められなかった。
ばく露ラットの血漿及び精巣では、対照群と比較して、テストステロンのレベル及びカタラーゼの酵素活性が有意に低下したが、グルタチオン及びマロンジアルデヒドのレベルには有意差は見られなかった。
対照群とばく露群では、組織病理学的検査(即ち、Johnsonの生検スコア及び胚芽細胞の厚さ)に有意差が見られた。加えて、組織病理学的検査では、ばく露時間に関連した精子形成の減速及び生殖細胞の変性が明らかになった。全てのグループでBaxのタンパク質発現が認められたが、最も強い発現は2か月ばく露群であり、Bcl-2のタンパク質発現は全体的に弱く、最も強い発現は2か月ばく露群であった。
著者らは、170kV電力線から生じる50Hz電界及び磁界は、ラットの精巣におけるテストステロンのレベルに影響を及ぼし、組織病理学的変化を生じ得るが、精子の特徴は変化させない、と結論付けている。
このウェブサイトはクッキー(Cookies)を使って、最善のブラウジングエクスペリエンスを提供しています。あなたがこのウェブサイトを継続して使用することで、私たちがクッキーを使用することを許可することになります。