この研究は、電力周波磁界(MF)に対する乳房組織の応答におけるラット系統の違いを観察した以前の報告を踏まえ、MF感受性フィッシャー344(F344)ラットとMF非感受性ルイスラットを比較し、MFの影響に関与する候補遺伝子の解明を試みた。メスのF344ラットとルイスラットにMF(50 Hz、100 µT)の2週間ばく露を与え、乳腺組織の全ゲノムマイクロアレイ分析を実施した。その結果、MFばく露を受けたF344ラットにおいて、アルファアミラーゼ遺伝子発現の大きな低下、炭酸脱水酵素6とラクトペルオキシダーゼの遺伝子発現の低下(両方ともpH調節に関連する)、腫瘍抑制因子であるシスタチンE / Mの遺伝子発現の上昇が観察されたが、ルイスラットにおいては観察されなかった;これらの知見はから、MFばく露を受けたF344ラットの乳房組織では遺伝子発現変化が見られたが、ルイスラットでは見られなかったことから、このような発現変化がF344ラットのMF感受性に関与している可能性がある、と報告している。
磁界の影響に関連する候補の遺伝子を明らかにするため、磁界に敏感なFischer 344ラットと、磁界に敏感でないLewisラットにおける遺伝子発現を比較した(磁界ばく露に対する異なる系統の感受性の違いの説明は、先行研究に示されている:Fedrowitz 及び Löscher、2008 ならびに Fedrowitz 及び Löscher、2005)。
ばく露 | パラメータ |
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ばく露1:
50 Hz
ばく露時間:
continuous for 7 days/week during 2 weeks
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周波数 | 50 Hz |
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タイプ |
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偏波 |
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ばく露時間 | continuous for 7 days/week during 2 weeks |
ばく露の発生源/構造 | |
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ばく露装置の詳細 | rats were exposed in their cages (5 rats per cage) located in the exposure chambers to a horizontally polarized magnetic field |
Sham exposure | A sham exposure was conducted. |
測定量 | 値 | 種別 | Method | Mass | 備考 |
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磁束密度 | 100 µT | effective value | 測定値 | - | - |
乳腺組織における遺伝子発現の分析では、全体で31100個のプローブセットのうち僅か23個のトランスクリプトしか磁界ばく露後に変化しなかったことが示された。Lewisラットの乳腺組織では、9個の遺伝子が上方制御されたが、ばく露群のFischer 344ラットでは8個の遺伝子発現が上方制御、6個が下方制御された。
ばく露群のFischer 344ラットには、アルファ‐アミラーゼの遺伝子発現の顕著な減少、カルボニックアンヒドラーゼ6及びラクトペルオキシダーゼ(共にpH制御に関連)の下方制御、ならびにシスタチンE/M(腫瘍抑制因子)の遺伝子発現の上方制御が見られたが、Lewisラットには見られなかった。
結論として、磁界にばく露したFischer 344ラットの乳腺組織では遺伝子発現の変化が見られたが、Lewisラットには見られなかったことから、この遺伝子はFischer 344ラットの磁界感受性に関与しているかも知れない。磁界の影響を調査する上で、アルファ-アミラーゼが見込みのあるターゲットかも知れない。
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