この研究は、著者らの先行研究(Thun-Battersby et al., Cancer Res, 59: 3627-3633, 1999)の知見(低磁束密度(100 μT)の50 Hz磁界(MF)は、メスのSprague Dawleyラットの7,12-ジメチルベンズ(a)アントラセン(DMBA)誘発乳がんモデルで乳がんの発症と成長を促進した)に基づき提案された仮説「そのような磁界の影響には、乳房上皮の増殖増加が関係する」を、増殖マーカーを用いて検証した。メスSDラットに、100 μTのMFを、2週間、ばく露または擬似ばく露した。乳房組織および隣接する皮膚の上皮細胞の増殖を、ブロモデオキシウリジン(BrdUrd)標識法および核増殖関連タンパク質Ki-67標識法を用いて調べた。さらに、松果体中および乳房組織中のメラトニンレベルを、MFのばく露または擬似ばく露の後に測定した。また、MFばく露の影響との比較のために、腫瘍プロモータである12-O-テトラデカノイルホルボール-13-アセテート(TPA)を用いた追加実験も実施した。その結果、MFばく露は、乳腺上皮のBrdUrdおよびKi-67標識を有意に増強した;これは細胞増殖の著しい増加を示すものである;最も顕著な影響は、頭蓋、胸部(または頸部)乳房複合体で見られた;メラトニン仮説とは対照的に、松果体または乳腺のメラトニン濃度にMFばく露の影響はなかった;TPAの局所投与は、皮膚の上皮細胞、特に毛包においてBrdUrdおよびKi-67標識を増加させたが、乳房組織では増加させなかった;以上のデータは、MFばく露が乳房上皮の増殖を増加させることを実証しており、先行研究で示されたMFばく露の発がん性または腫瘍促進効果を説明する仮説が有望なことを示唆した、と報告している。
ラットの乳腺上皮での細胞増殖に対する50Hz/100µTの磁界ばく露の影響を調べること。更に、松果腺及び乳房組織でのメラトニンレベルに生じる可能性のある変化を調べた。磁界ばく露の影響との比較のため、テトラデカノイルホルボールアセテート(TPA)処理による追加実験を用いた。
ばく露 | パラメータ |
---|---|
ばく露1:
50 Hz
ばく露時間:
24 h/day, 7 days/week, for 2 weeks
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磁界ばく露は松果腺及び乳房組織でのメラトニンレベルを変化させなかった。但し、乳房組織での細胞増殖は磁界ばく露によって有意に高められた(本研究で用いた標識技術で示された)。乳房組織のブロモデオキシウリジン及びKi-67標識はTPA処理によって影響されなかったが、皮膚の上皮細胞、特に毛包では増加した。
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