研究のタイプ: 疫学研究 (observational study)

[睡眠の質に対する日常の無線周波電磁界ばく露の影響‐横断的研究] epidem.

Effects of everyday radiofrequency electromagnetic-field exposure on sleep quality: a cross-sectional study

掲載誌: Radiat Res 2010; 174 (3): 347-356

この研究は、日常環境中の種々の無線周波電磁界RF EMF)発生源へのばく露と、一般的な公衆衛生上の懸念である睡眠の質に関する断面調査である。スイスのバーゼル地方から無作為に選んだ1,375名の人口標本集団において、睡眠障害と日中の眠気(自己申告)、個人別の環境RF EMF遠方界へのばく露(有効性確認済みの予測モデル)、コードレス電話携帯電話の使用(自己申告および事前6ヵ月分の携帯電話事業者のデータ)の関連について、交絡因子を調整した多変量回帰モデルで分析した。その結果、RF EMF遠方界ばく露睡眠障害または日中の過度の眠気との関連性は観察されなかった(ばく露の上位10%カテゴリーでの睡眠障害リスク推定値は1.11(95%信頼区間:0.50-2.44)、日中の過度の眠気では0.58(0.31-1.05)であった);携帯電話の使用も、あるいはコードレス電話の使用も、いずれも睡眠の質の低下とは関連しなかった、などの知見を報告している。

研究の目的(著者による)

日常環境中の各種の発生源の無線周波電磁界へのばく露睡眠の質との関連を調査するため、スイスにおいて横断的研究を実施した。

詳細情報

被験者ばく露は予測モデル(Frei他、2009)で評価した。自己申告のコードレス電話及び携帯電話使用、ならびに直前の6か月間の事業者のデータを分析に盛り込んだ。異なるばく露尺度を3つのカテゴリーに分類した:ばく露中央値(50thパーセンタイル)未満の参加者を参照群、最もばく露された上位10%(> 90thパーセンタイル)、前二者の中間(50th‐90thパーセンタイル)の群。

加えて、感度解析及び非回答者分析を実施した。

影響評価項目/リスク推定のタイプ

リスク推定のタイプ: (オッズ比(OR))

ばく露

ばく露評価

ばく露集団

グループ 説明
参照集団 1 日常生活での遠方界ばく露: < 0.18 V/m( < 50thパーセンタイル)
集団 2 日常生活での遠方界ばく露: 0.18 - 0.21 V/m(50th - 90thパーセンタイル)
集団 3 日常生活での遠方界ばく露: > 0.21 V/m( > 90thパーセンタイル)
参照集団 4 夜間の遠方界ばく露: < 0.02 V/m( < 50thパーセンタイル)
集団 5 夜間の遠方界ばく露: 0.02 - 0.09 V/m(50th - 90thパーセンタイル)
集団 6 夜間の遠方界ばく露: > 0.09 V/m( >90thパーセンタイル)
参照集団 7 固定送信装置を通じた遠方界ばく露: < 0.04 V/m( < 50thパーセンタイル)
集団 8 固定送信装置を通じた遠方界ばく露: 0.04 - 0.12 V/m( 50th - 90thパーセンタイル)
集団 9 固定送信装置を通じた遠方界ばく露: > 0.12 V/m( > 90thパーセンタイル)
参照集団 10 自己申告の携帯電話使用による身体近傍のばく露: < 50thパーセンタイル
集団 11 自己申告の携帯電話使用による身体近傍のばく露: 50th - 90thパーセンタイル
集団 12 自己申告の携帯電話使用による身体近傍のばく露: > 90thパーセンタイル
参照集団 13 携帯電話使用(事業者のデータ)による身体近傍のばく露: < 50thパーセンタイル
集団 14 携帯電話使用(事業者のデータ)による身体近傍のばく露: 50th - 90thパーセンタイル
集団 15 携帯電話使用(事業者のデータ)による身体近傍のばく露: > 90thパーセンタイル
参照集団 16 自己申告のコードレス電話使用による身体近傍のばく露: < 50thパーセンタイル
集団 17 自己申告のコードレス電話使用による身体近傍のばく露: 50th - 90thパーセンタイル
集団 18 自己申告のコードレス電話使用による身体近傍のばく露: > 90thパーセンタイル

調査対象集団

調査規模

タイプ
合計 4,000
適格者 3,763
参加者 1,375
参加率 37 %
統計学的分析方法: (調整: )

結論(著者による)

被験者の78%は、無線周波電磁界ばく露による健康への悪影響を生じる人々がいるということを信じていて、18.2%は自身の健康への悪影響をばく露のせいにし、8.1%は自身が電磁過敏であると報告した。
日中の過剰な眠気の有病率は29.5%であった。問題のある睡眠障害は9.8%の参加者が報告した。日中の眠気及び睡眠障害と各種のばく露の代用尺度との統計的に有意な関連は認められなかった。
著者らは、この結果は日常環境における無線周波電磁界の各種のばく露源による主観的な睡眠の質の悪化を示さなかった、と結論付けた。

研究助成

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