研究のタイプ: 疫学研究 (observational study)

[住居から高圧電力線までの距離と神経変性疾患のリスク:デンマークの人口ベースの症例対照研究] epidem.

Residential Distance to High-voltage Power Lines and Risk of Neurodegenerative Diseases: a Danish Population-based Case-Control Study

掲載誌: Am J Epidemiol 2013; 177 (9): 970-978

この研究は、高圧電力線までの住居の距離と神経変性疾患(特にアルツハイマー病)のリスクを調査した。デンマークの全国民において、1994-2010年に神経変性疾患診断された全ての患者を含めた登録ベースの症例対照研究を実施し、診断前の5-20年間送電線の近くに居住していたことのハザード比を、条件付きロジスティック回帰分析により計算した。その結果、送電線近くの居住者において、老人性痴呆、パーキンソン氏病、多発性硬化症、運動神経疾患の発症リスクは上昇しなかった;送電線から50m以内に長年の居住している人において、アルツハイマー病リスクは上昇しなかった(ハザード比=1.04、95%信頼区間:0.69-1.56);送電線から50m以内の居住年数による量反応関係も見られなかった;ただし、75歳までに診断された人において、リスク上昇の弱い示唆があった、と報告している。

研究の目的(著者による)

住居から高圧電力線までの距離と神経変性疾患、特にアルツハイマー病との間にあるかも知れない関連を調査するため、デンマークにおいて症例対照研究を実施した。

影響評価項目/リスク推定のタイプ

リスク推定のタイプ: (ハザード比)

ばく露

ばく露評価

ばく露集団

グループ 説明
参照集団 1 住居から132-400kV電力線までの距離: ≥ 600 m
集団 2 住居から132-400kV電力線までの距離: 200 - < 600 m
集団 3 住居から132-400kV電力線までの距離: 50 - < 200 m
集団 4 住居から132-400kV電力線までの距離: 0 - < 50 m

調査対象集団

症例集団

対照集団

統計学的分析方法: (調整: )

結論(著者による)

診断の5-20年前に電力線の近傍に住んでいた人々では、認知症パーキンソン病多発性硬化症、運動神経疾患を発症するリスクは上昇していなかった。アルツハイマー病リスクは、かつての電力線の50m以内での居住について上昇していなかった(ハザード比1.04、CI 0.69-1.56)。電力線の50m以内での居住年数による量‐反応関係は認められなかったが、75歳までに診断された人々についてはリスク上昇の弱い兆候があった。
著者らは、神経変性疾患電力線の近傍での居住との関連についての支持はほとんどない、と結論付けた。

研究助成

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