この研究は、送電線に起因する住宅での磁界ばく露と神経変性疾患による死亡率との関連を分析したスイスの人口集団での縦断調査である。2000年から2005年の期間をカバーするスイス国立コホート(死亡率および国勢調査のデータとリンクしている)の470万人を対象に分析を行った。コックス比例ハザードモデルを用いて、220〜380 kVの送電線の近くでの居住と神経変性疾患による死亡リスクの関連を、広範な潜在的交絡因子を調整して分析した。調整ハザード比は、220〜380 kVの送電線から600 m以遠の居住者群を参照群として計算した。その結果、全般的には、220〜380 kVの送電線から50 m以内に居住者群でのアルツハイマー病の調整ハザード比は、1.24(95 %信頼区間(CI):0.80、1.92)であった;送電線のすぐ近くでの居住年数とアルツハイマー病に関して量反応関係が示された;すなわち、50 m以内に少なくとも5年居住群の調整ハザード比は1.51(95%CI:0.91、2.51)、少なくとも10年居住群では1.78(95 %CI:1.07、2.96)に増加し、少なくとも15年居住群では2.00(95 %CI:1.21、3.33)に増加した;この傾向は老人性痴呆でも同様であった;筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、または多発性硬化症のリスク上昇の証拠はなかった、と報告している。
グループ | 説明 |
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参照集団 1 | 住居から220 - 380 kV電力線までの距離:≥ 600 m |
集団 2 | 住居から220 - 380 kV電力線までの距離:200 < 600 m |
集団 3 | 住居から220 - 380 kV電力線までの距離:50 < 200 m |
集団 4 | 住居から220 - 380 kV電力線までの距離:0 < 50 m |
タイプ | 値 |
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合計 | 7,290,000 |
適格者 | 4,650,000 |
フォローアップ:2282万人‐年
スイスの人口の9.2%が、220または380kVの電力線から600m以内に住んでいる。本研究期間中、全ての原因による282378人の死亡が登録された。電力線から50m以内に住む人々についてのアルツハイマー病のハザード比は1.24(CI 0.80-1.92)であった。50m以遠では、リスク上昇の証拠はほとんどなかった。電力線から50m以内での居住年数に関連した量‐反応関係が認められた:電力線の近傍で15年間居住している人々についてのハザード比は2.00(CI 1.21-3.33)であった。老年性認知症については、同じパターンが認められたが、関連の傾向はより弱かった。パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症及び多発性硬化症については、リスク上昇は認められなかった。
著者らは、この結果は電力線の磁界とアルツハイマー病及び老年性認知症のリスクとの間に関連があるかも知れないことを示している、と結論付けた。
サンプルサイズは大きいものの、既知の生物学的メカニズムがないことから、この知見は慎重に解釈すべきである。
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