研究のタイプ: 医学/生物学の研究 (experimental study)

[超低周波磁界にばく露したCD1マウスにおける脳のDNA損傷及び70-kDa熱ショックタンパク質発現] med./bio.

Brain DNA damage and 70-kDa heat shock protein expression in CD1 mice exposed to extremely low frequency magnetic fields

掲載誌: Int J Radiat Biol 2010; 86 (8): 701-710

この研究は、マウス実験で、超低周波磁界(ELF-MF)へのばく露が脳組織のDNAに損傷を引き起こし、70 kDaの熱ショックタンパク質hsp70)の発現誘導するか否かを調べた。CD1マウスにMF(50 Hz、1 mT)ばく露を、15時間/日で、1日間または7日間与えた。ばく露終了時または24時間後に屠殺し、脳組織を摘出して、大脳皮質-線条体海馬小脳の各組織の一次DNA損傷とhsp70遺伝子発現を評価した。無ばく露群および擬似ばく露群を対照に用いた。食物摂取、体重増加、および運動活動も評価した。その結果、ばく露終了時に屠殺されたばく露群のマウスのすべての脳領域で、一次DNA損傷が対照に比べ増加した;コメットアッセイで評価したDNA損傷は、7日間ばく露終了の24時間後に屠殺されたマウスでは修復されたように見えた;1日間または7日間のどちらのばく露群でも、hsp70の発現代謝および行動の変化は誘発されなかった;総括すると、マウスにELF-MFばく露を与えると、ストレス反応は誘発されず、可逆的な脳DNA損傷誘発することが示された、と報告している。

研究目的(著者による)

1mT(50Hz)磁界への1または7日間のばく露が、若いマウスの脳におけるDNA損傷を生じ得るかどうか、及び/または熱ショック応答のような内因性の細胞保護システムを活性化させるかどうかを調べること。

詳細情報

マウスを無作為に3群に分けた:(1) ばく露群(n=38);(2) 偽ばく露群(n=36);(3) ケージ対照群(n=25)。ばく露マウスを更に3つのサブグループに分けた:(1) 1日ばく露し、ばく露の直後に屠殺(n=10);(2) 7日間ばく露し、ばく露終了時に屠殺(n=19);(3) 7日間ばく露し、ばく露の24時間後に屠殺(n=9)。偽ばく露群も同様に3つのサブグループに分けた(それぞれn=10、17、9)。

DNA損傷についての陽性対照をエックス線(6Gy)で実施した。熱ショックタンパク質発現についての陽性対照は、マウスを43℃に維持して実施した(直腸温度が42℃に達するまで)。

影響評価項目

ばく露

ばく露 パラメータ
ばく露1: 50 Hz
ばく露時間: continuous for 1 day or 7 days (15 h per day)

ばく露1

主たる特性
周波数 50 Hz
タイプ
  • magnetic field
ばく露時間 continuous for 1 day or 7 days (15 h per day)
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
  • pair of rectangular coils (distance 14 cm) arranged horizontally in a Helmotz-like configuration
チャンバの詳細 during exposure mice were housed in a plastic cage placed in the center of exposure device
ばく露装置の詳細 each coil 6 cm wide (internal dimensions 43.5 x 40.5 cm; external dimensions of 44.5 x 41.5 cm) with 200 turns of insulated copper wire (diameter 1.6 mm);
Sham exposure A sham exposure was conducted.
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
磁束密度 1 mT effective value 測定値および計算値 - -

ばく露を受けた生物:

方法 影響評価項目/測定パラメータ/方法

研究対象とした生物試料:
研究対象とした臓器系:
調査の時期:
  • ばく露中
  • ばく露後

研究の主なアウトカム(著者による)

データは、対照群と比較して、ばく露終了直後に屠殺したばく露マウス(15時間または7日間)の全ての脳領域でのDNA損傷の増加を示した。7日間ばく露の24時間後に屠殺したマウスでは、DNA損傷は修復されたようであった。

短期(15時間)または長期(7日間)の磁界ばく露はいずれも、Hsp70発現代謝及び行動に変化を生じなかった。

結論として、この結果は、イン・ビボでの超低周波磁界ばく露は脳に可逆的なDNA損傷を生じるが、ストレス応答は生じないことを示している。

研究の種別:

研究助成

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