この研究は、乳がん治療に用いられるタモキシフェンの有効性に電磁界が影響を与えるメカニズムを調べる目的で、50 Hz、1.2 μTの磁界ばく露を受けた乳がん細胞におけるエストロゲン受容体の補因子の遺伝子発現を、擬似ばく露を受けた細胞のものと比較した。遺伝子アレイ法で分析した結果、いくつかの補因子の異なる発現が示された。そこで、コアクチベーター(SRC-1、AIB1)、コリプレッサー(N-Cor、SMRT)の発現をRT-PCRで定量した結果、ばく露細胞において、2つのコアクチベーターの発現は増加し、2つのコリプレッサーの発現は減少したことが示された。以上から、50 Hz磁界ばく露を受けた乳がん細胞では、コアクチベーターとコリプレッサーの遺伝子発現が逆方向の変化を起こし、タモキシフェンに対する感受性を低下させる可能性が示唆された、と報告している。
先行研究(publication 1254、publication 5621 参照)では、電磁界にばく露した乳がん細胞における選択的エストロゲン受容体調節因子のタモキシフェンの効率低下が認められた。タモキシフェンは乳がん細胞のエストロゲン受容体と結合し、増殖を防ぐので、エストロゲン受容体陽性の乳がんの治療に適用される。エストロゲン受容体は補助因子によって改変され、これらの補助因子(活性化補助因子:AIB1、SRC-1、補助抑制因子:N-Cor、SMRT)の遺伝子発現を解明すべきである。
ばく露 | パラメータ |
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ばく露1:
50 Hz
ばく露時間:
continuous for 24 h up to 96 h
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周波数 | 50 Hz |
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タイプ |
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波形 |
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ばく露時間 | continuous for 24 h up to 96 h |
ばく露の発生源/構造 | |
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ばく露装置の詳細 | 75 cm long copper tube with a diameter of 30 cm, closed at both ends by a copper plate, copper wire wound round the tube and connected to a signal generator, for stabilization of magnetic field small sensor coil in the center of the tube |
Sham exposure | A sham exposure was conducted. |
測定量 | 値 | 種別 | Method | Mass | 備考 |
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磁束密度 | 1.2 µT | - | - | - | - |
どちらの活性化補助因子の遺伝子発現も、ばく露した乳がん細胞でより強まったが、2つの補助抑制因子の遺伝子発現は低下した。RNA分析はタンパク質分析で確認した。
観察されたエストロゲン受容体活性化補助因子の発現の上昇、及びエストロゲン受容体補助抑制因子の発現の低下は、電磁界ばく露の際のタモキシフェンの効能の低減を説明し得る。
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