この研究は、スイス全国コホートと小児がん研究グループ(the Swiss National Cohort and the Swiss Paediatric Oncology Group)が実施したもので、スイス小児がん登録(SCCR:診断時16歳未満のがんの患者の登録率は95%)とスイス全国コホートに基づき、放送用アンテナからの無線周波電磁界(RF-EMFs)へのばく露と小児がんの関連を調べた。このコホートは、全国の住宅・住民に関するデータベースであり、1990、2000年の人口調査(強制調査のためカバー率は98.6%)を基に出生、死亡、移民などの全国データセットとリンケージができる。国際小児がん分類に基づき、全ての小児がん、特に白血病、急性リンパ性白血病、中枢神経系(CNS)腫瘍を対象とした。ばく露評価には、放送塔と住宅との距離と電界強度のモデル計算値を利用した。その結果、2000年12月から2008年12月までの時間事象分析では、コホート人員12837354人、コホートとの確率的リンケージがとれたがんの症例997(白血病283、CNS腫瘍258、その他のがん456)を分析した;ばく露群(>0.2 V/m)の調整ハザード比(参照群は<0.05 V/m)は、全がんで1.03(95% 信頼区間:0.74-1.43)、小児白血病で0.55(同:0.26-1.19)、CNS腫瘍で1.68(同:0.98-2.91)であった;1985年から2008年までの発症密度コホート分析(コホートとのリンケージを要しない分析であるため、SCCRから、この期間に発生した4246症例が分析できた)では、全がん、小児白血病の結果は前述の分析と同様であったが、CNS腫瘍では1.03(同:0.73-1.46)であった、と報告している。
データ分析のため、事象までの時間分析、及び発生率密度コホート分析の2つの戦略を適用した。事象までの時間分析では、16歳以下で、2000年の国勢調査日にスイスに住んでいた子どもを含めた。リスクにある時期は、国勢調査日から始まり、診断日、死亡日、転居日、16歳の誕生日、または2008年12月31日のうちの最初のものまでである。発生率密度コホート分析では、SCCRとスイス国家コホートとのリンケージは必要なかった。1985年1月から2008年12月までに診断され、診断時にスイスに住んでいた、SCCR登録済みの全ての患者を、このコホートに含めた。
グループ | 説明 |
---|---|
参照集団 1 | 放送用送信装置からの無線周波電磁界へのばく露: < 0.05 V/m |
集団 2 | 放送用送信装置からの無線周波電磁界へのばく露: 0.05 - 0.2 V/m |
集団 3 | 放送用送信装置からの無線周波電磁界へのばく露: > 0.2 V/m |
タイプ | 値 |
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合計 | 1,332,944 |
適格者 | 1,287,354 |
7,627,646人‐年
子ども全員のうち11%が0.05-0.2V/mの予測された無線周波電磁界にばく露され、4%が0.2V/m超にばく露された。研究サンプル全体から、51%がモデル化地域内に住んでいた。
997人のがん症例に基づく、事象までの時間分析における参照カテゴリー( < 0.05V/m)に対する最も高いばく露カテゴリー( > 0.2V/m)での調整後のハザード比は、全ての種類のがんについて1.03(CI 0.74-1.43)、小児白血病について0.55(CI 0.26-1.19)、小児の中枢神経系腫瘍について1.68(CI 0.98-2.91)であった。4246人のがん症例に基づく発生率密度分析の結果は、全ての種類のがん及び白血病について同様だったが、中枢神経系腫瘍のリスクは示されなかった(発生率比1.03、CI 0.73-1.46)。
著者らは、本研究の結果は放送設備からの予測された無線周波電磁界へのばく露と小児白血病のリスクとの関連を示唆しなかった、と結論付けた。中枢神経系腫瘍についての結果はより一貫性がなかったが、最も包括的な分析では関連は示唆されなかった。
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