研究のタイプ: 疫学研究 (observational study)

[グレートブリテン島におけるラジオ及びTV送信装置の近傍でのがん発生率I:サットン・コールドフィールドの送信装置] epidem.

Cancer incidence near radio and television transmitters in Great Britain. I. Sutton Coldfield transmitter

掲載誌: Am J Epidemiol 1997; 145 (1): 1-9

西ミッドランド州Sutton ColdfieldのTVおよびFMラジオ送信機周辺での、未確認の白血病リンパ腫クラスターの報告(訳者注:1992年3月30日付けガーディアン紙の報道記事を指す。記事によれば、Birmingham 市の一般開業医が収集した2600人のがん症例の中に、男性5人・女性2人(18-66歳)の白血病およびリンパ腫の生存症例がSutton Coldfield 送信機から400-1500mの距離に住んでいることが確認された。一人を除いた全員は、14-25年間その地域に住んでおり、残りの1人は2年間住んでいた。新規の白血病またはリンパ腫の一万人年当たりの期待数は2.5であることを理由にクラスターの可能性を指摘したもの。調査方法は明確でなく、一般紙以外にはその後の発表はない[論文付録より]。)を調査するために、1974-1986年のがん発生率の小地域調査を実施した。診断時点住所の郵便番号が付された全国がん登録データベース、1981年国勢調査からの人口及び社会経済データを用いた。選択したがんは、造血系リンパ・脳・皮膚・目・肺・結腸直腸・胃・前立腺・膀胱のがん、男性・女性の乳がんである。がん発生期待数は、調査地域の社会経済的指標の層化による間接的標準化により計算した。調査地域は送信機周辺の半径10kmの円と定義し、その円内で送信機からの距離による10区域を定義し、距離によるリスクの低下の検定に用いた。また、半径2m以内の円を内部エリアと記述した。2km以内での成人白血病リスクは1.83(95% 信頼区間1.22-2.74)であり、送信機からの距離に伴うリスク有意な低下がみられた(p=0.001)。これらの知見は、期間1974-1980 と1981-1986で一貫しているように見られ、おそらく、本調査以前に報告されていたクラスターとは無関係であった。先のクラスターは主に後半の期間に関したもののようである。国勢調査区域全般での白血病リスクの変動からみると、Sutton Coldfield周辺での知見は通常ではない。皮膚がんと膀胱がんに関しても、距離による有意なリスク低下が見られ、皮膚がんの場合は、住民の社会経済的交絡因子が関連した可能性があった。本研究の結果により広い意味を持たせるために、英国全体のラジオ・TV送信施設の調査が必要である。この種の研究一つからは、いかなる因果関係の示唆も得られない。

研究の目的(著者による)

イングランドのバーミンガムにあるサットン・コールドフィールドの送信装置の近傍で、1974-1986年のがん発生率を調査した。

詳細情報

研究地域は、サットン・コールドフィールドの送信装置を中心とする半径10kmの円として定義し、距離に応じて更に10の地域に分割した。

影響評価項目/リスク推定のタイプ

リスク推定のタイプ:

ばく露

ばく露評価

ばく露集団

グループ 説明
集団 1 送信装置からの距離:0 - 0.5 km
集団 2 送信装置からの距離:0.5 - 1.0 km
集団 3 送信装置からの距離:1.0 - 2.0 km
集団 4 送信装置からの距離:2.0 - 3.0 km
集団 5 送信装置からの距離:3.0 - 4.9 km
集団 6 送信装置からの距離:4.9 - 6.3 km
集団 7 送信装置からの距離:6.3 - 7.4 km
集団 8 送信装置からの距離:7.4 - 8.3 km
集団 9 送信装置からの距離:8.3 - 9.2 km
集団 10 送信装置からの距離:9.2 - 10 km

調査対象集団

調査規模

タイプ
合計 408,000
統計学的分析方法: (調整: )

結論(著者による)

サットン・コールドフィールドの送信装置からの距離が2㎞以内での成人白血病リスク有意な上昇(RR 1.83、CI 1.22-2.74)と、送信装置からの距離に伴うリスク有意な低下が認められた。距離に伴うリスク有意な低下は膀胱がん及び皮膚黒色腫についても認められたが、これは社会経済的交絡因子と関連しているかも知れない。
著者らは、この単一のクラスター調査からは、因果的な含意は導けないと結論付けている。

研究助成

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