【背景】この研究は、イスラエル北部のDruze Isifya村の住民が、村の発がん率が高いのはラジオ放送や携帯電話の送信機からのこれまでのばく露に関連すると主張したことを調査するために開始された。【目的】RF/MW送信機への過去のばく露とがんリスクの関連を、がんの家族病歴、職業的ばく露、生活スタイルの諸指標を考慮に入れて調べること。【方法】人口ベースの症例対照研究として307人の住民を調査対象とした。その内の47人は1989-2007年にがん(タイプは様々)と診断された人、260人は対照群である。がんの診断に関しては医療記録から情報を得た。対象者の自宅のばく露状況は、地理情報システム(GIS)により算出された自宅とRF/MWアンテナとの距離に基づき決定された。その他のがんのリスク要因(喫煙、職業など)に関するデータは質問紙調査から得た。分析には2値データの多重回帰分析を用い、生活スタイルに関する諸尺度と職業ばく露を調整した。分析は、全ての部位のがん、個別のがん(少なくとも5例の報告があるもの)について行った。【結果】化学物質(殺虫剤など)および電子機器への過去の職業的ばく露はがんのリスク上昇と強い関連を示したが(全ての部位のがんの場合:OR = 2.79; 信頼区間(CI)= 1.14-6.82; P < 0.05)、全般的ながんリスクが過去のRF/MW放射ばく露の発生源への接近度と関連すると認めうる傾向はなかった(n = 47、OR = 1.00; CI = 0.99-1.02; P > 0.4)。大腸がんは、放射強度に関連した調整リスクの無視しうる程度の上昇が見られた(n = 11、OR = 1.03; CI = 1.01-1.05; P < 0.01)。【結論】製造業・農業の化学物質、電子機器(そこではEMFへのばく露があったかも知れない)に関連するがんのリスク上昇を示す証拠があったが、この村で見られた大半のがんのタイプにおいて、電磁界放射に関連したがんのリスク上昇の疑いは確認されなかった。今回の否定的知見は過去のばく露の誤分類によるものと説明することもできる。
イシフィヤ村の最初のラジオ送信装置は1970年代の初めに設置された。携帯電話基地局は1990年代に追加された。2000年(本調査の開始前)、村内の全ての携帯電話基地局及びラジオ送信装置は、電磁界ばく露が各種の健康症状の原因と考える地元住民によって破壊された。
グループ | 説明 |
---|---|
集団 1 | 住居から最も近くの送信装置までの距離: 0 - 50 m |
集団 2 | 住居から最も近くの送信装置までの距離: > 50 - 100 m |
集団 3 | 住居から最も近くの送信装置までの距離: > 100 - 150 m |
集団 4 | 住居から最も近くの送信装置までの距離: > 150 - 200 m |
集団 5 | 住居から最も近くの送信装置までの距離: > 200 - 250 m |
集団 6 | 住居から最も近くの送信装置までの距離: > 250 - 300 m |
集団 7 | 住居から最も近くの送信装置までの距離: > 300 - 350 m |
集団 8 | 住居から最も近くの送信装置までの距離: > 350 - 400 m |
症例 | 対照 | |
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参加者 | 47 | 260 |
携帯電話基地局ならびに放送局への過去のばく露と全体的ながんリスクとの関連は認められず(n=47;OR 1.00;CI 0.99-1.02)、直腸がんのみ電磁界強度に関連した調整後のリスクの無視し得る上昇を示した(n=11;OR 1.03;CI 1.01-1.05)。化学物質(例:農薬)ならびに電子機器への過去の職業ばく露はがんリスク上昇との強い関連が認められた(全ての部位:OR 2.79;CI 1.14-6.82)。
著者らは、本研究は村内のほとんどの種類のがんについて、電磁界へのばく露に関連したがんリスク上昇の疑念を確認しなかった、と結論付けた。化学物質および電子機器に関連したがんのリスク上昇の証拠があったが、そこでは電磁界へのばく露があったかも知れない。
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