この論文は、台湾の小児がん(15歳以下で、2003-2007年に登録された全ての悪性新生物(ICD-9-CM: 140-239))の症例2606人(白血病939、脳腫瘍394を含む)と、症例に対し1:30で、生年をマッチさせ無作為抽出した対照78,180人(白血病症例の対照28,170、脳腫瘍症例の対照11,820を含む)を対象に携帯電話基地局(MPBS)ばく露との関連を分析した。RFばく露レベルに関してはV/m またはW/m2で表記される情報は持たないため、新しいばく露指標を開発した。1998年から2007年に稼働した71185台のMPBSそれぞれの年間総出力(ASP[W・年])と367の都市の年間電力密度(ADP[W・年/ km2]:その都市の全てのMPBSのASP合計値を都市面積で割ったもの)である。小児がんの誘導期間を考慮して、各症例と対照が居住する都市の診断前5年間の平均ADPをばく露指標とした。条件無しロジスティック回帰モデルにより共変数調整済みオッズ比(AOR)を計算した結果、平均APDの中央値(168 WYs/km2)をカットオフ値として、それ未満群に対するそれ以上群のAORは、全がん1.13(95%信頼区間1.01-1.28)、白血病1.23(同0.99-1.52)、脳腫瘍1.14(同0.83-1.55)であったと報告している。全がんで有意なリスク上昇が見られたものの、この結果はいくつかの方法論的限界によって生じたものかも知れないと結論している。
各々の携帯電話基地局について、運転期間(年)と実際の放射電力(ワット)の積から、1998-2007年の毎年の要約電力(ワット‐年(WY))を計算した。台湾の367の町について、ある町における全ての基地局からの毎年の要約電力の合計と、その町の面積の比率として、年間の電力密度(WY/km²)を計算した。各々の子どもについて、診断時にその子どもが住んでいた町における新生物の診断前の5年間(誘導期間)の毎年の電力密度の平均から、ばく露尺度を推定した。
グループ | 説明 |
---|---|
参照集団 1 | ばく露密度 < 中央値: < 167.02 WYs/km² |
集団 2 | ばく露密度 ≥ 中央値: ≥ 167.02 WYs/km² |
参照集団 3 | ばく露密度 < 第1三分位値: 91.65 WYs/km² |
集団 4 | ばく露密度 ≥ 第1三分位値- < 第2三分位値: 91.65 - 392.86 WYs/km² |
集団 5 | ばく露密度 ≥ 第2三分位値: ≥ 392.86 WYs/km² |
症例 | 対照 | |
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適格者 | 2,606 | 118,170 |
中央値より高い毎年の電力密度の平均(約168WY/km²)は、全ての新生物についての調整後のオッズ比の上昇と有意に関連していた(OR 1.13;CI 1.01-1.28)が、白血病(OR 1.23;CI 0.99-1.52)または脳腫瘍(OR 1.14;CI 0.83-1.55)についてはそうではなかった。
著者らは、本研究は人々が日常環境で一般的に遭遇するレベルの携帯電話基地局へのばく露と、子どもの脳腫瘍及び白血病のリスクとの有意な関連を示していない、と結論付けている。中央値より高い無線周波にばく露された子どもの新生物全体のリスクは上昇したが、リスク推定値の程度は小さかった。これらの結果は、複数の手法上の制約によって生じたかも知れない。
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