研究のタイプ: 疫学研究 (observational study)

[小児の新生物に関連した無線周波ばく露の人口ベースの症例対照研究] epidem.

A population-based case-control study of radiofrequency exposure in relation to childhood neoplasm

掲載誌: Sci Total Environ 2012; 435: 472-478

この論文は、台湾の小児がん(15歳以下で、2003-2007年に登録された全ての悪性新生物(ICD-9-CM: 140-239))の症例2606人(白血病939、脳腫瘍394を含む)と、症例に対し1:30で、生年をマッチさせ無作為抽出した対照78,180人(白血病症例の対照28,170、脳腫瘍症例の対照11,820を含む)を対象に携帯電話基地局(MPBS)ばく露との関連を分析した。RFばく露レベルに関してはV/m またはW/m2で表記される情報は持たないため、新しいばく露指標を開発した。1998年から2007年に稼働した71185台のMPBSそれぞれの年間総出力(ASP[W・年])と367の都市の年間電力密度ADP[W・年/ km2]:その都市の全てのMPBSのASP合計値を都市面積で割ったもの)である。小児がん誘導期間を考慮して、各症例と対照が居住する都市の診断前5年間の平均ADPをばく露指標とした。条件無しロジスティック回帰モデルにより共変数調整済みオッズ比(AOR)を計算した結果、平均APDの中央値(168 WYs/km2)をカットオフ値として、それ未満群に対するそれ以上群のAORは、全がん1.13(95%信頼区間1.01-1.28)、白血病1.23(同0.99-1.52)、脳腫瘍1.14(同0.83-1.55)であったと報告している。全がん有意なリスク上昇が見られたものの、この結果はいくつかの方法論的限界によって生じたものかも知れないと結論している。

研究の目的(著者による)

携帯電話基地局からの無線周波ばく露と、小児の全ての新生物白血病及び脳の新生物リスクとの関連を調査するため、台湾において人口ベース症例対照研究を実施した。

詳細情報

各々の携帯電話基地局について、運転期間(年)と実際の放射電力ワット)の積から、1998-2007年の毎年の要約電力ワット‐年(WY))を計算した。台湾の367の町について、ある町における全ての基地局からの毎年の要約電力の合計と、その町の面積の比率として、年間の電力密度(WY/km²)を計算した。各々の子どもについて、診断時にその子どもが住んでいた町における新生物診断前の5年間(誘導期間)の毎年の電力密度平均から、ばく露尺度を推定した。

影響評価項目/リスク推定のタイプ

リスク推定のタイプ: (オッズ比(OR))

ばく露

ばく露評価

ばく露集団

グループ 説明
参照集団 1 ばく露密度 < 中央値: < 167.02 WYs/km²
集団 2 ばく露密度 ≥ 中央値: ≥ 167.02 WYs/km²
参照集団 3 ばく露密度 < 第1三分位値: 91.65 WYs/km²
集団 4 ばく露密度 ≥ 第1三分位値- < 第2三分位値: 91.65 - 392.86 WYs/km²
集団 5 ばく露密度 ≥ 第2三分位値: ≥ 392.86 WYs/km²

調査対象集団

症例集団

対照集団

調査規模

症例 対照
適格者 2,606 118,170
その他:

白血病の症例939人、脳腫瘍の症例394人、新生物全体、白血病及び脳腫瘍の対照がそれぞれ78180人、28170人、11820人

統計学的分析方法: (調整: )

結論(著者による)

中央値より高い毎年の電力密度平均(約168WY/km²)は、全ての新生物についての調整後のオッズ比の上昇と有意に関連していた(OR 1.13;CI 1.01-1.28)が、白血病OR 1.23;CI 0.99-1.52)または脳腫瘍OR 1.14;CI 0.83-1.55)についてはそうではなかった。
著者らは、本研究は人々が日常環境で一般的に遭遇するレベルの携帯電話基地局へのばく露と、子どもの脳腫瘍及び白血病リスクとの有意な関連を示していない、と結論付けている。中央値より高い無線周波ばく露された子どもの新生物全体のリスクは上昇したが、リスク推定値の程度は小さかった。これらの結果は、複数の手法上の制約によって生じたかも知れない。

研究助成

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