研究のタイプ: 疫学研究 (observational study)

[グレートブリテン島におけるラジオ及びTV送信装置の近傍でのがん発生率II:全ての高出力送信装置] epidem.

Cancer incidence near radio and television transmitters in Great Britain. II. All high power transmitters

掲載誌: Am J Epidemiol 1997; 145 (1): 10-17

【目的】Sutton ColdfieldのTVタワー周辺での知見を踏まえ、成人白血病皮膚がん、膀胱がんについて、高出力TVおよびFMラジオ送信機20施設の近隣地域での、1974-1986年のがん発生率の小地域調査をすること。小児白血病脳腫瘍も併せて調査した。20施設の統合、送信特性に基づいた4つのグループ別、各20施設別の分析を行った。【結果】 (1) 成人の全白血病の発生比((観測値)/(全国統計に基づく期待値))は、20施設統合の場合、0-2km地域で0.97、0-10km地域で1.03(有意)。距離によるリスク低下はかろうじて有意となった。距離別では、各距離区域において過剰リスクは見られず、距離による変化にも一貫性はなかった。(2) 小児白血病脳腫瘍成人皮膚がん・膀胱がんではみるべきものは無かった。(3) 3つの送信施設およびあるグループでは距離によるリスク低下が見られたが、外側地域に比べ、タワー中心部地域の症例が少ないためと思われる。【結論】Sutton Coldfieldのようなリスクの大きさおよびパターンは再現されなかった。今回の結果からは、Sutton Coldfieldでの知見の非常に弱い支持以上のものを得られなかった。

研究の目的(著者による)

グレートブリテン島の20の高出力TV及びFMラジオ送信装置の近傍で、1974-1986年のがん発生率を調査した。先行研究 (publication 1930) では、サットン・コールドフィールドの送信施設からの距離と共に、成人白血病皮膚黒色腫、膀胱がん有意なリスク低下が認められた。

詳細情報

分析は、各々の送信装置について個別に、全ての送信装置を組合せて、また4つの送信装置グループ(グループ1:実効放射電力(ERP)が870-1000kWのTV送信装置、グループ2:ERPが500-1000kWのTV送信装置、グループ3:ERPが250kWの全てのFM送信装置、グループ4:ERPが500kW以下のTV及びERPが250kWのFMの全ての送信装置の組合せ)について実施した。

影響評価項目/リスク推定のタイプ

リスク推定のタイプ:

ばく露

ばく露評価

ばく露集団

グループ 説明
集団 1 送信装置からの距離:0 - 0.5 km
集団 2 送信装置からの距離:0.5 - 1.0 km
集団 3 送信装置からの距離:1.0 - 2.0 km
集団 4 送信装置からの距離:2.0 - 3.0 km
集団 5 送信装置からの距離:3.0 - 4.9 km
集団 6 送信装置からの距離:4.9 - 6.3 km
集団 7 送信装置からの距離:6.3 - 7.4 km
集団 8 送信装置からの距離:7.4 - 8.3 km
集団 9 送信装置からの距離:8.3 - 9.2 km
集団 10 送信装置からの距離:9.2 - 10 km

調査対象集団

調査規模

タイプ
合計 3,390,000
統計学的分析方法: (調整: )

結論(著者による)

全ての送信装置から0-10kmの距離に、3305人の成人白血病症例が認められた(観察数/期待値の比1.03;CI 1.00-1.07)。全ての送信装置の組合せについて、成人白血病リスク低下が認められた。
この結果は、送信装置からの距離の増加に伴う、小児白血病及び脳のがん成人皮膚黒色腫及び膀胱がんリスク低下は示さなかった。サットン・コールドフィールドの送信装置の近傍で認められたリスクの大きさとパターン (publication 1930) は再現されなかったようである。著者らは、この結果はせいぜい、先行研究の知見に対して非常に弱い支持を与える程度であると結論付けている。

研究助成

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