この疫学研究は、携帯電話使用またはそれ以外の日常環境中の無線周波電磁界(RF-EMF)により睡眠の質が影響を受けるか否かを調べた。縦断調査の参加者955名(30-60歳)は、2008年5月(ベースライン)と2009年5月(フォローアップ)の2回、標準的質問紙に回答した。質問紙で、睡眠の質と昼間の眠気、携帯電話とコードレス電話の使用について質問したほか、本人の承諾を得て、携帯電話オペレータから携帯電話の接続データを得た。参加者のRF-EMF環境ばく露は、以前に開発した検証済の予測モデルにより算出した(全発生源による日常生活ばく露と夜間の寝室でのばく露、固定送信機による寝室でのばく露)。またコホート内睡眠研究として、参加者119名について、個人ばく露計によるこの3つのばく露データ、およびアクティグラフィによる2週間の睡眠行動データを取得した。縦断調査を分析した結果では、オペレータ記録または自己申告の携帯電話使用データのどちらも睡眠障害または昼間の眠気と関連しなかった;RF-EMF環境ばく露は自己申告の睡眠の質に影響しなかった、と報告している。またこれらの結果は、客観的記録を用いたコホート内睡眠研究でも確認されたと、報告している。
睡眠の質が携帯電話使用またはその他の日常環境における無線周波電磁界発生源に影響されるかどうかを調査するため、スイスにおいて前向きコホート研究を実施した。更に、ばく露及び睡眠行動の測定データを用いたコホート内睡眠調査で結果の一貫性をチェックした。
2007年のスイス健康調査からの標準化した4つの質問(入眠困難、断続的睡眠、夜間の覚醒、朝の早過ぎる覚醒)、及びEpworth眠気尺度で睡眠障害を判定した。
119人の参加者を含むコホート内睡眠調査では、二週間にわたって無線周波電磁界へのばく露を寝室で測定し、睡眠行動についてのデータをアクティグラフィー(睡眠‐覚醒周期のモニタリング)で収集した。
QUALIFEX研究の更なる結果は、Röösli他(2010)、Mohler他(2010) 及び Frei他(2012) で発表している。
グループ | 説明 |
---|---|
参照集団 1 | 日常生活のばく露の合計: < 中央値 |
集団 2 | 日常生活のばく露の合計: 50-90パーセンタイル |
集団 3 | 日常生活のばく露の合計: > 90パーセンタイル |
参照集団 4 | 夜間ばく露: < 中央値 |
集団 5 | 夜間ばく露: 50-90パーセンタイル |
集団 6 | 夜間ばく露: > 90パーセンタイル |
参照集団 7 | 固定送信装置への居住環境ばく露: < 中央値 |
集団 8 | 固定送信装置への居住環境ばく露: 50-90パーセンタイル |
集団 9 | 固定送信装置への居住環境ばく露: > 90パーセンタイル |
参照集団 10 | 携帯電話使用: < 中央値 |
集団 11 | 携帯電話使用: 50-90パーセンタイル |
集団 12 | 携帯電話使用: > 90パーセンタイル |
参照集団 13 | 事業者データに基づく携帯電話使用: < 中央値 |
集団 14 | 事業者データに基づく携帯電話使用: 50-90パーセンタイル |
集団 15 | 事業者データに基づく携帯電話使用: > 90パーセンタイル |
参照集団 16 | コードレス電話使用: < 中央値 |
集団 17 | コードレス電話使用: 50-90パーセンタイル |
集団 18 | コードレス電話使用: > 90パーセンタイル |
タイプ | 値 |
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適格者 | 3,763 |
参加者 | 1,375 |
評価可能 | 955 |
1年間のばく露期間中に、日常環境中の無線周波電磁界へのばく露と自己申告の睡眠障害または過剰な日中の眠気との関連は認められなかった。これらの結果は、客観的に記録されたばく露と測定された睡眠行動データのあるコホート内睡眠調査で確認された。
著者らは、日常環境中の無線周波電磁界ばく露からの睡眠の質への悪影響についての証拠は認められなかった、と結論付けた。
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