【目的】母親が妊娠中に高いレベルの磁界(MFs)にばく露したことが、子供の喘息のリスクと関連するか否かを明らかにすること。【方法】サンフランシスコ地域の、Kaiser Permanente Northern California(KPNC)医療施設の受診者である妊婦群を対象とした前向きコホート研究。母親コホートから産まれた626人の子供を13年間追跡し、その中で診断された喘息を影響評価項目とした。全ての母親は妊娠中に、磁界ばく露計によるばく露測定を行った。【結果】交絡因子を調整した後、母親の妊娠中の1日の磁界ばく露の中央値の上昇と子供の喘息のリスク上昇との間に、統計学的に有意な量反応関係が観察された。1mG毎の上昇に対して喘息のリスクは15%上昇した(調整済みハザード比[aHR] 1.15; 95% 信頼区間1.04-1.27)。磁界レベルをカテゴリー化した結果、同様の量反応関係が示された:低レベル(24時間磁界レベル中央値が≦0.3mG)の母親の子供に比較した高レベル(同>2mG)の母親の子供での喘息の発症率は3.5倍以上大きく(aHR=3.52; 95% 信頼区間1.68-7.35)、中レベル(同0.3-2mG)の母親の子供では74%の増加であった(aHR=1.74; 95%信頼区間0.93-3.25)。磁界の影響には、母親の喘息の病歴および出生順位(第一子)との統計的に有意な相乗関係が見られた。【結論】妊娠中の磁界レベルが高いと分類された母親において、その子供の喘息のリスクは上昇するかも知れないという、新しい疫学的証拠を今回の知見は提出している。
本研究は、1996-1999年に採用された、カイザー・パーマネント北カリフォルニア地区の会員である妊婦における、流産のリスクに対する電磁界へのばく露の影響を調査するために実施した前向きコホート研究に基づく(Li他(2002))。子どもの誕生後、ぜんそくの診断について13歳までフォローアップした。フォローアップ期間の1年間に少なくとも2回、ぜんそくの臨床診断を受けなければならなかった子どもを、ぜんそくの症例と見なした。
グループ | 説明 |
---|---|
参照集団 1 | 磁界への母親のばく露、24時間測定:低、 ≤ 0.03µT |
集団 2 | 磁界への母親のばく露、24時間測定:中、 > 0.03 - 0.2µT |
集団 3 | 磁界への母親のばく露、24時間測定:高、 > 0.2µT |
タイプ | 値 |
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合計 | 829 |
評価可能 | 626 |
妊娠中の母親の日常の磁界ばく露レベルの中央値と、子のぜんそくのリスク上昇との間に、統計的に有意な線形の量‐反応関係が認められた。妊娠中の母親の磁界レベルの0.1µTの上昇は、子のぜんそくの発生率の15%上昇と関連していた(調整後のハザード比:1.15;CI 1.04- 1.27)。カテゴリー分けした磁界レベルを用いた場合、結果は同様の量‐反応関係を示した:妊娠中の母親の磁界レベルが低かった(< 0.03µT)子どもと比較して、母親の磁界レベルが高かった(> 0.2µT)子どもでは、喘息の発生率が3.5倍高く、母親の磁界レベルが中程度(> 0.03-0.2µT)の子どもはぜんそくの発生率が74%高かった。磁界の影響と母親のぜんそくの病歴及び出生順(第一子)との間に、統計的に有意な相乗効果が認められた。
著者らは、これらの知見は、妊娠中の母親の高い磁界レベルはこのぜんそくのリスクを高めるかも知れないという新たな疫学的証拠を提示するものである、と結論付けている。
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