この研究は、脳由来神経栄養因子(Bdnf)mRNA発現に対するパルス電磁界(PEMF)の影響および細胞内遊離カルシウム濃度とBdnf mRNA発現の相関関係を脊髄後根神経節ニューロン(DRGNs)培養細胞で実験した。その結果、PEMF(50 Hz、1 mT)の2時間ばく露により、細胞内遊離カルシウム濃度とBdnf mRNA発現が増加した;Bdnf mRNA発現増加にはL型電位依存性カルシウムチャネルからのカルシウムイオンの流入による細胞内遊離カルシウム増加という経路が介在していた、などを報告している。
50 Hzパルス電磁界ばく露による脊髄後根神経節ニューロンでの脳由来神経栄養因子(BDNF)の遺伝子発現における Ca2+の役割を調べ、神経分化に対するパルス電磁界の促進的メカニズムの基礎となる作用メカニズムを探索すること。
基礎となるカルシウム関連の作用メカニズムを調べるため、磁界と下記の物質を用いた幾通りかの共ばく露実験を実施した:カルシウムチャネル遮断剤としてのニモジピン、ω-コノトキシンGVIA、ω-アガトキシンIVA、ミベフラジル、カルシウム貯蔵阻害剤としてのタプシガルジンおよびダントロレン、細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)阻害剤としてのPD098059、ホスホリパーゼC阻害剤としてのU73122およびU73343、カルシウムキレート剤としてのBAPTA-ΑMおよびEGTA、カルシウム貯蔵放出剤としてのカフェイン、細胞内カルシウム濃度低下に対するIP3遮断剤としてのネオマイシン、カルシウム流入を刺激するD-AP5およびMK801。ポジティブコントロールとして、電気刺激が用いられた。
細胞は5群に分けられた:1) 0.1 mT磁界へのばく露、2) 1 mT磁界へのばく露、3) 10 mT磁界へのばく露、4) 100 mT磁界へのばく露、5) 擬似ばく露。
それぞれの試験は、別のラットから別の時期に作成された別個の、少なくとも3つの培養細胞で実施された。
ばく露 | パラメータ |
---|---|
ばく露1:
50 Hz
ばく露時間:
continuous for 2 hours/day for 1 or 3 days
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ばく露2:
50 Hz
ばく露時間:
continuous for 2 hours/day for 1 or 3 days
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ばく露3:
50 Hz
ばく露時間:
continuous for 2 hours/day for 1 or 3 days
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ばく露4:
50 Hz
ばく露時間:
continuous for 2 hours/day for 1 or 3 days
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周波数 | 50 Hz |
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タイプ |
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波形 |
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ばく露時間 | continuous for 2 hours/day for 1 or 3 days |
Additional information | sinusoidal |
ばく露の発生源/構造 | |
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ばく露装置の詳細 | solenoid was placed in a cell incubator; temperature was 37 °C |
Sham exposure | A sham exposure was conducted. |
Additional information | sham exposure samples were placed in a cell incubator containing the solenoid, which was "properly energized so as not to generate a pulsed magnetic field but eventually to produce the same heat as the coil used in the exposure condition" |
測定量 | 値 | 種別 | Method | Mass | 備考 |
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磁束密度 | 0.1 mT | - | 測定値 | - | - |
Bdnfの遺伝子発現は、実験群2-4での1日後、実験群1-4での3日後に、擬似ばく露群に比べ、有意に上昇した。
細胞内カルシウム濃度は、実験群2での1日後に、擬似ばく露群に比べ、有意に上昇した。
細胞外カルシウムがEGTAまたはBAPTA-ΑMと結合している場合、またはカルシウム流入がニモピジンにより阻害されている場合、Bdnfの遺伝子発現および細胞内カルシウム濃度が実験群2での3日後に、キレート剤またはカルシウムチャンネル遮断剤を用いない試料に比べ、有意に低下した。さらに、Bdnfの遺伝子発現は、PD098059と共ばく露した実験群2での3日後に、何も添加しない試料に比べ、有意に低下した。
細胞生存率は、磁界ばく露単独、または磁界ばく露とニモピジンや PD098059との共ばく露により有意に影響されなかった。
著者らは、50Hzパルス磁界ばく露が脊髄後根神経節ニューロンでの脳由来神経栄養因子(BDNF)の遺伝子発現を、カルシウム流入およびERK依存性の信号伝達経路の活性化を介して上昇させる可能性がある;パルス電磁界の神経分化に対する促進効果の基礎的な作用メカニズムに関するこのような示唆は、今後の研究でより詳細に研究した方がよい、と結論している。
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