この研究は、著者らの先行のインビトロ研究での知見(超低周波電界(ELF EF)がCa(v)1チャネル活性を増加させることで神経幹細胞の神経分化を促進した)を受けて、インビボにおいても1 mT、50 HzのELF EF刺激が成獣マウス海馬の神経新生に影響を与えるか否かを調べた。また、影響が確認された場合には、そのような作用の根底にある分子メカニズムおよびシナプス可塑性への影響についても探索した。結果として、ELF EFばく露(1 - 7時間/日で7日間)は、5-ブロモデオキシウリジン(BrdU)とダブルコルチンで二重標識された細胞の数を増加させたことが確認され、それにより、成獣マウスの歯状回(DG)の神経新生が有意に増強されたことが示された;海馬抽出物の定量的RT-PCR分析では、前ニューロン遺伝子(Mash1、NeuroD2、Hes1)およびCa(v)1.2チャネルアルファ(1C)サブユニットのエンコード遺伝子の転写がELF EFばく露により有意に増加することが示された;ELF EF刺激の30日後に実施した免疫蛍光実験では、新生の未成熟ニューロンの約半分が生き残り、成熟歯状回顆粒細胞になり(BrdUおよびNeuNに対する免疫反応によって示された)、DGの顆粒細胞層に組み込まれたことが示された、と報告している。
50Hz超低周波電磁界ばく露がイン・ビボで成獣の海馬における神経新生に影響を及ぼすかどうかを調べること、また、その場合、作用の根底にある分子メカニズムと、それがシナプスの可塑性に及ぼす機能的インパクトを同定すること。
著者らは先行研究(Piacentini他、2008)で、イン・ビトロでの超低周波電磁界ばく露は皮質の神経幹細胞の神経分化を有意に強め、この影響にはCav1-カルシウムチャネルの発現及び活動の上方制御が介在することを証明した。
マウス71匹をばく露群(n=38)及び偽ばく露群(n=33)に分けた:4日目にばく露群の3匹をRT-PCRに、3匹をウェスタンブロット分析に用いた(4日目の理由は転写因子の遺伝子発現を分化プロセスに進めるため)。ばく露群の14匹を7日目(最後のばく露セッションの24時間後)、5匹を37日目(ばく露の30日後、生存率及び新生ニューロンの統合を調べるため)に免疫蛍光分析に用いた。加えて、ばく露群の13匹を37日目に長期増強実験に用いた。
ばく露 | パラメータ |
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ばく露1:
50 Hz
ばく露時間:
continuous for 7 h/day on 4 days
expression of specific genes and proteins
|
|
ばく露2:
50 Hz
ばく露時間:
continuous for 1 h/day (n=3 mice), 3 h/day (n=3) or 7 h/day (n=13) on 7 days
neuronal differentiation (immune reactivity)
|
|
ばく露3:
50 Hz
ばく露時間:
continuous for 7 h/day on 7 days
synaptic plasticity and immune reactivity
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周波数 | 50 Hz |
---|---|
タイプ |
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ばく露時間 | continuous for 7 h/day on 4 days |
Additional information | expression of specific genes and proteins |
ばく露の発生源/構造 | |
---|---|
ばく露装置の詳細 | mouse placed in a plastic cage inside a Plexiglas cylinder with a diameter of 20 cm that was positioned inside a solenoid |
Sham exposure | A sham exposure was conducted. |
測定量 | 値 | 種別 | Method | Mass | 備考 |
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磁束密度 | 1 mT | - | 測定値 | - | - |
周波数 | 50 Hz |
---|---|
タイプ |
|
ばく露時間 | continuous for 1 h/day (n=3 mice), 3 h/day (n=3) or 7 h/day (n=13) on 7 days |
Additional information | neuronal differentiation (immune reactivity) |
ばく露の発生源/構造 |
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---|---|
Sham exposure | A sham exposure was conducted. |
Additional information | injection of 5-bromodeoxyuridine before exposure |
測定量 | 値 | 種別 | Method | Mass | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
磁束密度 | 1 mT | - | 測定値 | - | - |
周波数 | 50 Hz |
---|---|
タイプ |
|
ばく露時間 | continuous for 7 h/day on 7 days |
Additional information | synaptic plasticity and immune reactivity |
ばく露の発生源/構造 |
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---|---|
Sham exposure | A sham exposure was conducted. |
Additional information | injection of 5-bromo-deoxyuridine before exposure |
測定量 | 値 | 種別 | Method | Mass | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
磁束密度 | 1 mT | - | 測定値 | - | - |
7日間の超低周波電磁界ばく露は、成獣マウスの歯状回での神経新生を有意に強めた。これはBrdU及びダブルコルチン(未成熟なニューロンのマーカー)について二重標識した(免疫反応性の)細胞の数の増加として示された。
海馬抽出液の定量的RT-PCR分析では、ばく露によるプロニューロナル遺伝子(Mash1, NeuroD2, Hes1)及びCav1.2カルシウムチャネルアルファ1Cサブユニットをエンコードする遺伝子の発現の有意な増加が明らかになった。NeuroD1、NeuroD2及びCav1チャネルのタンパク質発現の増加も、ウェスタンブロット分析によって示された。
免疫蛍光実験では、ばく露の30日後に、新生の未成熟なニューロンの約半分が生存し、成熟した歯状回顆粒細胞になり(分化したニューロンのマーカーである、BrdU及びNeuNの両方に対する免疫反応性によって示された)、歯状回の顆粒細胞層に統合されたことが示された。
電気生理学的実験では、新たな成熟ニューロンは、長期増強の増加に反映されたように、海馬のシナプス可塑性に影響力を及ぼしたことが証明された。
このデータは、超低周波電磁界ばく露はイン・ビボでの神経新生の増加のための有効なツールとなり得ること、及び、それが再生医療における新たな治療アプローチの開発につながり得ることを示している。
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