この研究は、弱い電磁界(EMF)の、誘発電位のオンセットおよびオフセットのトリガーとなる能力、また脳電図(EEG)に定常状態の変化をもたらす能力についての生物物理学的根拠を検討した。ラットに2.5 G、60 Hzの磁界ばく露を与え、EEGに対する磁界の影響に関連する神経解剖学的領域でのグルコース活性化を、フルオロデオキシグルコース(FDG)を用いたポジトロンエミッション断層撮影(PET)によって特定した。同じ動物での磁界ばく露ありとなしの場合のペアエミッションスキャンの差分を平均し、プールされた標準偏差を用いて算出された脳ボクセルのt値を、臨界t値の計算値と比較することで、磁界により活性化されたボクセルを特定した。その結果、磁界を矢状面に直交して与えた場合、後脳ボクセルでグルコース利用の増加が生じた;磁界と矢状面との角度をランダムに変化させた場合、そのようなことは見られなかった;明確なFDG活性化作用が、過渡的(オンセットとオフセットの両方で)および定常的な磁界の刺激に応答して観察された;以上の知見から、シグナル伝達が磁気力検出にて媒介されること、このプロセスおよび/または伝達後の初期処理が後脳で生じることが示唆された、と報告している。
著者らは先行研究の結果を拡張し、電磁界の変換が電磁界の向きに依存するかどうか、また、先行研究(Frilot 2nd他、2009参照)で報告されたフルオロデオキシグルコース(FDG)の取り込みに対する電磁界の影響が、実際にその電磁界の影響に関連していたかどうかを研究することを求めた。
ラット20匹を2つの実験用に2群に分けた(各実験用にn=10):第1の実験では、ラットを拘束して電磁界を矢状面に直交して冠状に適用した。第2の実験では、各ラットをばく露時にケージ内を自由に動き回れるようにし、電磁界とラットの長軸とのベクトル関係を無作為にした。
第1の実験では、各ラットに(18Fで標識化したFDGを)注射し、3回スキャンした:デューティ比100%を用いた電磁界(電磁界1)ばく露後に1回、デューティ比50%を用いた電磁界(電磁界2)ばく露後に1回、偽ばく露後に1回。第2の実験では、ラットに注射し、2回スキャンした:デューティ比50%を用いた電磁界(電磁界3)に45分間ばく露後に1回、偽ばく露後に1回。注射の最小間隔は2日間であった。
ばく露 | パラメータ |
---|---|
ばく露1:
60 Hz
Modulation type:
pulsed
ばく露時間:
continuous for 45 min
rats immobilized
|
|
ばく露2:
60 Hz
Modulation type:
pulsed
ばく露時間:
2 s on - 2 s off - for 45 min
rats immobilized
|
|
ばく露3:
60 Hz
Modulation type:
pulsed
ばく露時間:
2 s on - 2 s off - for 45 min
rats free to roam in the cage
|
|
all rats were injected with 11 MBq of 18F-labeled FDG before exposure or sham exposure
周波数 | 60 Hz |
---|---|
タイプ |
|
ばく露時間 | continuous for 45 min |
Additional information | rats immobilized |
Modulation type | pulsed |
---|---|
Rise time | 10 ms |
Fall time | 10 ms |
Duty cycle | 100 % |
ばく露の発生源/構造 | |
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チャンバの詳細 | square coil; field uniform within 10 % in the exposure area; rats placed in a restrainer; exposure coronally, orthogonal to the sagittal plane |
Sham exposure | A sham exposure was conducted. |
測定量 | 値 | 種別 | Method | Mass | 備考 |
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磁束密度 | 25 mT | effective value | - | - | - |
周波数 | 60 Hz |
---|---|
タイプ |
|
ばく露時間 | 2 s on - 2 s off - for 45 min |
Additional information | rats immobilized |
Modulation type | pulsed |
---|---|
Rise time | 10 ms |
Fall time | 10 ms |
Duty cycle | 50 % |
ばく露の発生源/構造 |
|
---|---|
チャンバの詳細 | rats placed in a restrainer |
Sham exposure | A sham exposure was conducted. |
測定量 | 値 | 種別 | Method | Mass | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
磁束密度 | 25 mT | effective value | - | - | - |
周波数 | 60 Hz |
---|---|
タイプ |
|
ばく露時間 | 2 s on - 2 s off - for 45 min |
Additional information | rats free to roam in the cage |
Modulation type | pulsed |
---|---|
Rise time | 10 ms |
Fall time | 10 ms |
Duty cycle | 50 % |
ばく露の発生源/構造 |
|
---|---|
チャンバの詳細 | rats free to raom in the cage |
Sham exposure | A sham exposure was conducted. |
測定量 | 値 | 種別 | Method | Mass | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
磁束密度 | 25 mT | effective value | - | - | - |
電磁界を矢状面に直交して適用した場合(デューティ比50%及び100%)、後脳のボクセルでのグルコース利用の増加が生じたが、電磁界と矢状面との角度が無作為に変化する場合(電磁界3)には生じなかった。過渡的な(すなわちデューティ比50%)及び定常状態の(すなわちデューティ比100%)磁気刺激に対するFDG活性化の明確な影響が認められた。
磁気刺激(磁界は体内に電界を誘導する)によるグルコース利用の増加の観察、及び電磁界の向きへの依存性は、シグナル変換には力検出器が介在していること(電界はイオンチャネルゲートに結合した負に帯電したオリゴ糖側鎖に力を加え、これによってゲートを機械的に開く)、また、このプロセス及び/または早期の変換後処理が後脳で生じていることを示唆している。
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