この研究は、MRスキャンで発生する電磁界の一つと同等の磁界が、そのばく露が続く間、ヒトの脳の電気的活動に定常的な変化を引き起こす(誘発電位と区別するために「存在効果」と呼ばれる)という仮説をボランティア実験で検証した。磁界は100 - 200 μT、60 Hzで、2秒間オン/5秒間オフで断続的に560秒間ばく露した。被験者(n = 22)は、順応期間を経て、3セッションから成る試行を実施した。1または3番目のセッションのどちらかで磁界ばく露が行われ、その選択は無作為に行われた。磁界ばく露がないセッションでのデータは陰性対照(擬似ばく露)として分析された。2番目のセッションでは聴覚刺激(424Hz音)が与えられ、陽性対照として分析された。磁界の存在下および非存在下で、標準的頭皮電極位置で測定された脳電図(EEG)を、非線形的手法(再帰的分析)および線形的手法で分析した。その結果、非線形的手法で分析すると、1秒間(考慮された最長間隔)持続する脳活動の変化(これを「存在効果」と称している)が、22人の被験者のうち21人で見いだされた;線形的分析では、「存在効果」は検出されなかった;「存在効果」は可逆的で、磁界が取り除かれると2秒以内に、すべての被験者の脳活動がベースラインレベルに戻った;アーチファクトまたは系統的誤差の可能性については、電気的ファントムを使用した実験および擬似ばく露中に記録されたEEGの分析を行うことで、排除できた;総括すると、実際のMRスキャナ磁界も、脳の動的活動の非線形定常状態摂動を生成すると予想するのは合理的と考える、と報告している。
被験者(n=22、男性9人、女性13人)がそれぞれ自身の対照を務めた。陽性対照として、両耳に424Hzの発信音を提示した。
順応期間後、各被験者は3ブロックの試行を実施した:最初または3つ目のブロックで磁界を適用、被験者ごとに無作為に決定。磁界を適用しなかったブロックからのデータを陰性対照(偽ばく露)として分析した。中間のブロックでは聴覚刺激(陽性対照)を適用した。
周波数 | 60 Hz |
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タイプ |
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ばく露時間 | 2 s on - 5 s off - for 560 s |
ばく露の発生源/構造 | |
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ばく露装置の詳細 | paired set of coils in an isolation chamber; subject's head positioned in the center of the coil system; field uniform (+/- 5 %) in the head region |
Sham exposure | A sham exposure was conducted. |
非線形回帰分析を用いたところ、22人の被験者のうち21人で、1秒間続く脳の活動の変化が見られた。線形分析を用いたところ、「プレゼンス効果」は検出されず、全ての被験者で磁界オフの2秒以内に脳の活動がベースラインのレベルに復帰することが示されたことから、これは可逆的であった。
著者らは、実際のMRI磁界は脳の動的活性の非線形の定常状態の攪乱を生じる、と示唆している。この影響は、幾つかの機能的MRI研究で推論されている、脳の接続性の像に影響力を及ぼすかも知れない。
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