この研究は、正弦波50 Hz磁界(MF)および非コヒーレント(ノイズ)MFへのばく露がヒトの第1トリメスター絨毛栄養膜でのホルモン分泌に及ぼす影響を調べた。栄養膜は、妊娠8 - 10週の妊娠初期のヒト絨毛膜絨毛から単離された(30例以上)。それらは培養され、異なるばく露期間のMFばく露を受けた。培養中のヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)とプロゲステロンの濃度は、電気化学発光免疫測定法によって測定された。その結果、絨毛性栄養膜を0.4 mTの50 Hz MFに72時間ばく露した場合、hCGとプロゲステロンの分泌が有意に阻害された;同じ条件で非コヒーレントMF(周波数範囲30 - 90 Hz)にばく露した場合、有意な影響は生じなかった;しかし、非コヒーレントMFを50 Hz MFに重ね合わせ、細胞が両方のMFに同時にばく露した場合、ホルモン分泌に有意な変化は観察されなかった、と報告している。
超低周波によって生じるかも知れない負の妊娠結果に関するメカニズムを調べるため、イン・ビトロで培養したヒト妊娠初期絨毛栄養膜におけるヒト絨毛性性腺刺激ホルモン及びプロゲステロンの分泌に対する50Hz磁界ばく露の影響を調査した。加えて、インコヒーレントな磁界が50Hz磁界の影響に干渉し得るかどうかも調査した。
栄養膜は胎盤の主な構成要素の一つで、正常な妊娠において極めて重要な役割を担っている。栄養膜はホルモンのヒト絨毛性性腺刺激ホルモン及びプロゲステロンを分泌する。栄養膜の機能傷害は通常、自然流産につながる。
妊娠8-10週目に妊娠中絶を選択した健康な非喫煙者の女性から人工流産の直後に胎盤を取得した。
細胞を50Hz正弦波磁界に、インコヒーレントな磁界(「ノイズ」磁界)または複合磁界(「ノイズ」と50Hz正弦波磁界の重ね合わせ)に、6、12、24、48または72時間ばく露した。
周波数 | 50 Hz |
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タイプ |
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波形 |
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ばく露時間 | continuous for 6 h, 12 h, 24 h, 48 h or 72 h |
ばく露の発生源/構造 | |
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ばく露装置の詳細 | three groups of 36 cm x 36 cm square copper coils placed in a metal iron container inside an incubator; upper and lower coils consisting of 168 turns, middle coil with 60 turns; coils connected in series and positioned 8 cm apart from each other; culture dishes placed in a 10 cm x 10 cm x 10 cm exposure area inside the coil system where the magnetic field was uniform |
Sham exposure | A sham exposure was conducted. |
測定量 | 値 | 種別 | Method | Mass | 備考 |
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磁束密度 | 0.4 mT | effective value | 測定値 | - | - |
周波数 | 30–90 Hz |
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タイプ |
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波形 |
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ばく露時間 | continuous for 6 h, 12 h, 24 h, 48 h or 72 h |
ばく露の発生源/構造 | |
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ばく露装置の詳細 | three groups of 36 cm x 36 cm square copper coils which were double wrapped in two lines of copper wire placed inside an incubator; only one coil used in this experiment |
Sham exposure | A sham exposure was conducted. |
測定量 | 値 | 種別 | Method | Mass | 備考 |
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磁束密度 | 0.4 mT | effective value | 測定値 | - | - |
ばく露の発生源/構造 | |
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ばく露装置の詳細 | three groups of 36 cm x 36 cm square copper coils which were double wrapped in two lines of copper wire placed inside an incubator; one coil used for the incoherent voltage input, the other for the sinusoidal power input |
Sham exposure | A sham exposure was conducted. |
測定量 | 値 | 種別 | Method | Mass | 備考 |
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磁束密度 | 0.4 mT | effective value | 測定値 | - | - |
このデータは、0.4mTの50Hz磁界への絨毛栄養膜の72時間ばく露は、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン及びプロゲステロンの分泌を有意に抑制し得る(48時間迄は有意な影響はなかった)が、インコヒーレントな磁界(30-90Hz)へのばく露は分泌に有意に影響を及ぼさないことを示した。但し、50Hz磁界にインコヒーレントな磁界を重ね合わせて、細胞を両者に同時にばく露した場合、ホルモン分泌に有意な変化は認められなかった。
著者らはこれらの結果に基づき、72時間の50Hz磁界ばく露は栄養膜のホルモン分泌を抑制することができ、また、同じ強度のインコヒーレントな磁界は50Hz磁界によって生じた影響を完全に除去することができた、と結論付けた。詳細なメカニズムは更に調査する必要があるが、このデータは「時間的・空間的コヒーレンス仮説」(熱的ノイズ界は時間的・空間的にインコヒーレントであるが、外部電磁界はコヒーレントなので、生きている細胞は熱的ノイズ界と外部の電磁界を区別する、というもの)を支持している。この仮説は、超低周波電磁界ばく露によって生じるかも知れない悪影響を防止するための新たなアプローチを提示するかも知れない。
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