研究のタイプ: 医学/生物学の研究 (experimental study)

[超低周波電磁界はヒトケラチノサイト細胞株HaCaTにおける誘導型一酸化窒素合成酵素、内皮性一酸化窒素合成酵素及びシクロオキシゲナーゼ-2の発現を変調させる:創傷治癒における潜在的治療効果] med./bio.

Extremely low frequency electromagnetic fields modulate expression of inducible nitric oxide synthase, endothelial nitric oxide synthase and cyclooxygenase-2 in the human keratinocyte cell line HaCat: potential therapeutic effects in wound healing

掲載誌: Br J Dermatol 2010; 162 (2): 258-266

この研究は、骨折や皮膚の傷の治癒に対する超低周波(ELF)電磁界EMF)の作用機序を評価する目的で、ヒトケラチノサイト細胞株における炎症分子の調節へのELF-EMFの影響を分析した。いくつかの研究は、一酸化窒素シンターゼ(NOS)とシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)の発現と調節が創傷治癒に不可欠なことを示している。そこで、異なるばく露時間を用いたばく露群および対照群において、誘導性NOS(iNOS)、内皮NOS(eNOS)、およびCOX-2の発現をウエスタンブロット分析により評価した。また、iNOSとeNOSの変化を、NOS活性、NOとO2- の産生、および活性化タンパク質1(AP-1)の発現によってモニターした。さらに、カタラーゼ活性およびプロスタグランジン(PG)E(2)産生を測定した。また、細胞増殖および生存率モニターした。その結果、ELF-EMばく露を受けたHaCaT細胞でiNOSおよびeNOSの発現レベルが上昇した;このようなELF-EMF依存性の発現レベル上昇と並行して、NOS活性の増加、NO産生の増加がみられた;さらに、AP-1発現レベルおよび細胞増殖率の上昇傾向がELF-EMFばく露と関連していた;対照的に、ELF-EMFは、COX-2発現、PGE(2)産生、カタラーゼ活性、およびO2-の産生を低下させた;以上の知見は、創傷治癒過程におけるELF-EMFの治療的役割の可能性を示唆する、と報告している。

研究目的(著者による)

超低周波電磁界の作用機序を評価し、創傷治癒における治療応用への更なる支持を提示するため、ヒトケラチノサイト細胞株HaCaTに対する超低周波電磁界の影響を調べること。

詳細情報

一酸化窒素合成酵素及びシクロオキシゲナーゼ-2の発現と制御は創傷治癒に対して極めて重要であることが知られているが、ヒトケラチノサイトでのこれらの炎症分子変調における超低周波電磁界の直接的な作用を証明した報告はない。

炎症刺激に対する細胞応答の変調に対する電磁界の影響を評価するため、HaCaT細胞リポ多糖類で部分的に処理した。

影響評価項目

ばく露

ばく露 パラメータ
ばく露1: 50 Hz
ばく露時間: continuous for 3 hr, 18 hr or 48 hr

ばく露1

主たる特性
周波数 50 Hz
タイプ
  • magnetic field
波形
  • sinusoidal
ばく露時間 continuous for 3 hr, 18 hr or 48 hr
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
ばく露装置の詳細 22 cm long solenoid with 6 cm radius and 160 turns of 1.25 x 10-5 cm copper wire placed inside an incubator with constant temperature; cell cultures positioned in the center of the solenoid where the field was highly homogeneous (98%)
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
磁束密度 1 mT effective value 測定値 - -

Reference articles

  • Vianale G et al. (2008): [超低周波電磁界はヒトケラチノサイト細胞の増殖促進および炎症促進性ケモカイン産生減少を引き起こす]

ばく露を受けた生物:

方法 影響評価項目/測定パラメータ/方法

研究対象とした生物試料:
調査の時期:
  • ばく露後

研究の主なアウトカム(著者による)

超低周波電磁界に対するHaCaT細胞のばく露は、iNOS(LPSで刺激した細胞、3時間ばく露)及びeNOS(LPSで刺激した細胞、全てのばく露)の発現レベルを上昇させた。これらのばく露依存性のタンパク質発現の上昇には、一酸化窒素合成酵素酵素活性の上昇が平行した(LPS刺激あり/なし、全てのばく露期間)。即ち、一酸化窒素の産出が増加した。加えて、より高いレベルの活性化タンパク質-1の発現(LPS刺激あり/なし)ならびに、より高い細胞増殖率が、電磁界ばく露と関連していた。対照的に、ばく露はCOX-2の発現(LPSで刺激した細胞、3時間ばく露)、プロスタグランジン-E2の産出(LPSで刺激した細胞)、ならびにカタラーゼ酵素活性及びO2-スーパーオキシド)産出(LPS刺激あり/なしの両方)を低下させた。

著者らは、活性窒素のような活性化炎症の仲介因子、プロスタグランジン-E2及びケラチノサイト細胞の増殖が、組織再生プロセスに極めて重要である、と結論付けている。一酸化窒素合成酵素酵素活性、即ち窒素中間体、ならびに細胞増殖上方制御し、COX-2発現と下流の中間体プロスタグランジン-2を下方制御する超低周波電磁界の能力は、創傷治癒プロセスにおけるその潜在的な役割を強調するものである。

研究の種別:

研究助成

関連論文