この研究は、骨折や皮膚の傷の治癒に対する超低周波(ELF)電磁界(EMF)の作用機序を評価する目的で、ヒトケラチノサイト細胞株における炎症性分子の調節へのELF-EMFの影響を分析した。いくつかの研究は、一酸化窒素シンターゼ(NOS)とシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)の発現と調節が創傷治癒に不可欠なことを示している。そこで、異なるばく露時間を用いたばく露群および対照群において、誘導性NOS(iNOS)、内皮NOS(eNOS)、およびCOX-2の発現をウエスタンブロット分析により評価した。また、iNOSとeNOSの変化を、NOS活性、NOとO2- の産生、および活性化タンパク質1(AP-1)の発現によってモニターした。さらに、カタラーゼ活性およびプロスタグランジン(PG)E(2)産生を測定した。また、細胞増殖および生存率をモニターした。その結果、ELF-EMばく露を受けたHaCaT細胞でiNOSおよびeNOSの発現レベルが上昇した;このようなELF-EMF依存性の発現レベル上昇と並行して、NOS活性の増加、NO産生の増加がみられた;さらに、AP-1発現レベルおよび細胞増殖率の上昇傾向がELF-EMFばく露と関連していた;対照的に、ELF-EMFは、COX-2発現、PGE(2)産生、カタラーゼ活性、およびO2-の産生を低下させた;以上の知見は、創傷治癒過程におけるELF-EMFの治療的役割の可能性を示唆する、と報告している。
一酸化窒素合成酵素及びシクロオキシゲナーゼ-2の発現と制御は創傷治癒に対して極めて重要であることが知られているが、ヒトケラチノサイトでのこれらの炎症性分子の変調における超低周波電磁界の直接的な作用を証明した報告はない。
周波数 | 50 Hz |
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タイプ |
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波形 |
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ばく露時間 | continuous for 3 hr, 18 hr or 48 hr |
ばく露の発生源/構造 | |
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ばく露装置の詳細 | 22 cm long solenoid with 6 cm radius and 160 turns of 1.25 x 10-5 cm copper wire placed inside an incubator with constant temperature; cell cultures positioned in the center of the solenoid where the field was highly homogeneous (98%) |
測定量 | 値 | 種別 | Method | Mass | 備考 |
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磁束密度 | 1 mT | effective value | 測定値 | - | - |
超低周波電磁界に対するHaCaT細胞のばく露は、iNOS(LPSで刺激した細胞、3時間ばく露)及びeNOS(LPSで刺激した細胞、全てのばく露)の発現レベルを上昇させた。これらのばく露依存性のタンパク質発現の上昇には、一酸化窒素合成酵素の酵素活性の上昇が平行した(LPS刺激あり/なし、全てのばく露期間)。即ち、一酸化窒素の産出が増加した。加えて、より高いレベルの活性化タンパク質-1の発現(LPS刺激あり/なし)ならびに、より高い細胞増殖率が、電磁界ばく露と関連していた。対照的に、ばく露はCOX-2の発現(LPSで刺激した細胞、3時間ばく露)、プロスタグランジン-E2の産出(LPSで刺激した細胞)、ならびにカタラーゼの酵素活性及びO2-(スーパーオキシド)産出(LPS刺激あり/なしの両方)を低下させた。
著者らは、活性窒素のような活性化炎症の仲介因子、プロスタグランジン-E2及びケラチノサイト細胞の増殖が、組織の再生プロセスに極めて重要である、と結論付けている。一酸化窒素合成酵素の酵素活性、即ち窒素中間体、ならびに細胞増殖を上方制御し、COX-2発現と下流の中間体プロスタグランジン-2を下方制御する超低周波電磁界の能力は、創傷治癒プロセスにおけるその潜在的な役割を強調するものである。
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